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口下手ダメリーマンが一人前の講師になれた秘密


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山本和輝(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「くそっ! なんでいつもこうなんだ!」
 
反応してくれない人への不満と、思い通りに話ができない自己嫌悪の感情が混ざり合う。
全て自分の未熟さが招いていることだと分かっているのに。
 
私は、人前で話すことが苦手だった。十分に準備をして臨んでも、話しだすと不安になって気持ちが揺らいでくる。
 
特に苦手なのは目上の人、会社の経営陣など難しい顔をして、容赦ない突っ込みを入れてくるお偉方。
そんな人を相手にすると、悪寒のような感覚が体を包み込み、心が小刻みに震え出す。
アイスブレイクのちょっとした世間話すらできないほど緊張してしまうのだった。
 
「おまえの説明はよくわからない」 「結局、言いたいことは何なんだ?」 そんな屈辱的な言葉も投げかけられた。
 
このままでは、劣等感を解消できないだけでなく、やがて周囲にも期待されなくなるに違いない。
私は自分を変えたくて、真剣に考えて行動しては挫折する繰り返しを20年以上も続けていた。
そして「いい歳になって、いまさら何とかしようと思うのもどうだろう?」とあきらめつつもあった。
ほんの数年前までは……
 
私に転機が訪れたのは、サイバーセキュリティの人材育成をしているF氏との出会いだった。
あるセキュリティ団体の小さなプロジェクトで、セキュリティ講師を育てる「指導者育成セミナー」の企画があり、講師をするF氏の講義は素晴らしいという前評判を聞いていたので、即決で参加を決めたのだった。
 
このイベントは1か月に1回、全国6か所を行脚し講義を行うものだった。講師は1日6時間、F氏がぶっ通しでしゃべり続ける。最初に聴いた彼の講義は平易でわかりやすいものの、取り立てて何か強烈なインパクトは感じなかった。前評判で期待していた私は少々落胆した。
しかし2回、3回と回数を重ねると、それは私の思い違いだったことに気づくことになる。
 
彼のトークを毎回つぶさに観察すると、大事な箇所は一語一句同じ順序、同じ言い回しなのだ。そして聴き手も計算されたように同じところで頷く。理解を促すための比喩も、平易で参加者の反応がとても良い。そして、毎回とても喜んで帰っていく。しかも6時間の長時間講習の間、寝てしまう人は全くいないのだ。
 
これは地味にすごい? いや、相当にすごいことだった。
 
私は、俄然興味が湧いてきた。セミナーの中でも講師ノウハウは語られるのだが、もっと詳しく知りたい。そしてF氏に根掘り葉掘り聞きまくった。
 
まず最も重要なことは 「聴き手が誰か」 をしっかり捉えることが大切だという。その特性や知識レベルに合わせた情報の粒度や適切な比喩を用いることで、伝わりやすさは大きく変化する。
 
例えば「安全なパスワード設定」といった説明を例にとるとこんな感じだ。
 
小学生であれば
「誕生日を暗証番号にしている人いませんか? ママのスマホそうなってる? 簡単にわかっちゃうよね」
 
中高学生であれば
「友だちのSNSのパスワードを推測し乗っ取って、いたずら投稿遊びをしている人が居る。これ立派な不正アクセス法違反です」
 
大人には
「パスワードの使いまわしは危険。どこか1か所であなたのパスワードが漏れると、あなたのショッピングサイトのアカウントに不正アクセスできるでしょう?」
 
文字で書いてしまえば「そんなの当たり前じゃないか?」レベルのように思える。
しかし「当たり前」は人によって違う。
聴き手の身の回りで日常的に経験している「当たり前」を使って表現してあげると、伝えたいことが自分ゴトとして頭の中に「ストン!」と音を立てるように入っていくのだ。実際このセミナーでは受講者がメモを取るペンの音が突然カサカサしだすので、その瞬間が手に取るようにわかった。そして、私もこんな講師になってみたいと心底思ったのだった。
 
その他にもノウハウは沢山あった。スライド1枚に盛り込む情報量、1分間にしゃべる文字数、人が連続して集中できる限界時間、無駄な言い回しを極限まで削るほど伝わりやすいなど。さらに話をするときの発声、語尾の発音、姿勢、身振り手ぶりや目線など、聴き手を惹きつける振る舞いも教わった。そしてその教えてくれたすべてを、セミナーを見る私の前で実践してくれていた。
 
なかでも私が一番驚いたのは、トーク原稿は全て文字に起こしていることだった。本番の前日には、必ず同じ時間をかけて通しリハを行うという。
 
「だからいつも同じなんだ! ミュージシャンが人を魅了する歌詞を書くようにトークを書き上げ、それをステージ上で完璧に演じるためにリハーサルをやる。それと同じだ!」
 
私の心の中で声がした。そして、自分がどれだけ手を抜いて準備をしてきたかを思い知らされた。
 
猛省した私は学んだことを試すための場を必死に探した。そして次々と実践していった。
もちろん、最初からうまくいくわけもなく、毎回落ち込むことばかりだった。
それでも約半年、1年、30回、50回と講演回数をこなすにつれ、コツもつかめてきた。
やがて話をしながら会場の様子を観察するほどの余裕も出てきた。
 
今、本格的に講演活動を始めて約2年、この9月には私の講義を受けた人数は1万人を超えた。
今年はリピーターも含め私を講師にと指名いただくことも増えてきた。
そして、いつしか苦手だった経営陣にもビビらなくなっていた。
 
トークスキルはライティング・ゼミで教える内容と共通することがとても多い。違うのはフィジカルな部分だけだ。もし、あなたが私と同じ悩みを持っていてライティング・ゼミを受講しているのなら、もう名プレゼンテーターのスタートラインに立っていると思う。そして諦めず行動し続ければ必ず道は開けると思うのだ。
 
 
 
 
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2019-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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