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天才に戻りたい


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天才に戻りたい
記事:椎名碧凛(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
今年も誕生日が来て、また一つ歳を重ねた。もう私が20代中盤になってしまったなんていまだに信じられずにいる。私が10代のころに思い描いていたこの年代の私は、もっとキラキラしていて、かっこよくてお金もあって、自信に満ち溢れていたはずだった。過去の理想と比べた現状に落ち込まずにはいられない。
 
周りの人たちと比べると、比較的私は自由に生きてきた。学生だった頃は、親に勉強や進路のことに口出しをされたことはなかったし、何かを強制されたこともない。一応、安定しているからという理由で教師、公務員になってほしいと思っていたらしいが、その道を選ばなかったからと何を言われることもなかった。家柄のいいしっかりとした家系でもないため、将来は地元に帰ってこいともいわれない。罪を犯さず、金銭面での迷惑をかけなければ、私がどこで何をやろうとこれからも余計な干渉をされることはない。私はずっと自由を与えられてきたと思う。
 
無数にある道の中から好きなものを選ぶことができた。自己責任で。だから私は県外の大学に進んだ。地元の田舎にとどまるのは嫌で、もっと広い世界を見てみたかった。しかし初めての一人暮らしはうまくいかず、意欲もなくして中退。入りなおした専門学校も、去年辞めてしまった。
 
気が付けばこの年齢である。歳だけは一丁前に食って、私の手元には何も残っていない。学歴はなければ、スキルもない、経験もない。ないないづくしの凡人、いっちょあがり。もはや凡人にすらなれていない気がする。大人になればたくさんのものを手に入れていると思っていたのに、なくしてしまったもののほうが多いのではないか。卒業していないのに膨大な額の奨学金という借金と、失敗を続け何も成し遂げられなくなった自分だけが残った。
 
もうどうしたらいいのかわからなくなってしまった。自由に、自分で何でも選べることは素晴らしいことだと思っていたのに。もう疲れてしまった。「あなたはこうすべきです」「あなたに合ったルートはこちらです」 と誰かがわたしをレールの上にのせてくれればいいのに。私から選択する自由を奪ってくれていいから。私にとって最適な道を誰か代わりに導いてくれないだろうか。「あなたの能力を活かす最適な職業はこちらです」 と分析してくれるプログラムはないのだろうか。自分でこれからのルートを選んでも、またうまくいかないかもしれない。二度あることは三度ある。もう自信がない。
 
私の中で自由は不自由に、不自由は自由に変わった。
 
20代も半ばになると、これからの将来の選択肢は狭まってくる。今からピアニストにはなれないし、画家にもなれないし、歌手にも医者にも研究者にもなれない。なろうと思えばなれるものもあるかもしれないけど、どれも本気でなりたいと思っているわけじゃない。今から真面目にそれを目指すだけの情熱を持つことはできない。一体私は何になれるのだろう。私はどこへ向かって歩いて行けばいいのだろうか。
 
そんな中、Youtubeでとある曲を聞いた。私が以前からちょくちょく聴いていたhiphopアーティストの新曲である。
 
小さな頃は誰だってみんなが天才で、怖いもの知らずで、なろうと思えばなんにだってなれる無限の可能性を秘めていた。大人になった今では平凡になり下がってしまって、不安や迷いばかりで自分の可能性に蓋をしてしまっている。だけれど、まだ終わってはいない。先はどれを選んでもいばらの道で恐怖心など持たずに突っ走ることはできないけれど、まだやれる。あの無鉄砲で無敵で最強で最高だったころを思い出して、ゆっくりでも、迷って悩みながらでもいいから前へ進んで、いつかぶちかましてやろう。
 
そんなふうに、私はその曲を解釈した。
 
ああ、今の自分に刺さるな。そう感じた。毎日1回はその曲を聴くようになった。
 
確かに私も小学校のころまでは天才だったのだ。神童だった。塾なんて行かなくても成績は良かったし、周囲のあらゆることに気が付き、気を配ることができた。自分は特別な存在だと思っていたし、やろうと思えばなんだってできるような気がしていた。大人になったらきっと他の人ができないようなでっかいことをやってやる。そう思っていた気がする。それから、沢山の失敗を重ねあらゆるものが怖くなった。もううまく歩けない。特別だと思っていたはずの私は、平均以下の人間だと気づいてしまった。
 
それでも、そんな人間でもやっぱり輝きたい。情熱を燃やして生きていきたい。今からだって、まだなんにでもなれる。道は狭く厳しくなってしまったけれど、進み続けたい。曲を聞くたびにそう思わせてくれる。
 
自分はまだ終わってないと少しだけ信じることができたから、視野が広がった。何となくだけどやりたいことができた。現実との折り合いをつけていかないといけないから、今の仕事を続けながら少しずつ勉強してその場所を目指していくことになると思う。30歳までにそこへたどり着けるように頑張りたい。
 
数ある道の中から一つを選ぶということは、その他にあり得たかもしれない道をすべて捨てるということである。そのことは怖いようだけれど、すべてを手に入れることは不可能である。だから自分の選択した道が正しかったと証明できるように努力して結果を出さないといけない。
 
できるのだろうか。いやできるはずだ。自分を自分が信じてあげなくてどうする。いばらの道でも笑顔で歩いて行ってやろう。
 
私を勇気づけてくれたのはcreepy nutsの「かつて天才だった俺たちへ」という曲。Youtubeで聴いてみてほしい。あらゆる人の心に刺さって、背中を押してくれる曲だと思うから。
 
 
 
 
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2020-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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