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メディアグランプリ

猫の魔力


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記事:よよよ(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
猫は夜になると活動する。
だいたい我が家の猫の場合は22時から23時。
すごい音で廊下やリビングを駆け回り1人 ?じゃない 1匹 ?大運動会が始まる。
外に出ることはほぼなく、我が家のリビングでぬくぬく育った スコティッシュフォールドの「こむぎ」は 生後11ヶ月で我が家に来た。
動物はセキセイインコやメダカ、 金魚の類しか飼ったことのない私が、猫に手を出そうと思ったのは 娘が原因である。
娘は1人っ子のせいか、保育園時代から犬猫を飼いたいと言って聞かなかった。
第一次ブームは彼女が保育園の最終年度の時、いわゆる「わんこ特集」を朝のテレビ番組でやっているのを毎日見て急に犬を飼いたいと言い始めた。住んでいるマンションはペット飼育可のマンションで、よくエレベーターに乗る時に犬の散歩帰りの親子と遭遇した。 散歩終えた老夫婦、若いお母さん、朝の散歩代わりかすがすがしい顔をしてダックスフンド抱えてマンション敷地を歩く男性、皆さわやかを絵に描いたような顔をしていた。
振り返って我が家は、共働き、長時間労働、両親は近所にいない。
ただでさえ自転車操業している毎日の中に、犬が入り込む隙間はなかった。
それに朝早くからワンワン吠えられ起こされても、そしてワンワン吠えているのに気を使うのも嫌ではないか。
何度も「ママ真面目に聞いているの?」と娘に叱られながらも、「また今度ね」を繰り返す日々が続いた。そしていつしか、娘の「小さいかわいい動物を飼いたい」という熱は冷めたように思われた。しかし、毎週末の唯一の家族団らんらしい夕食時、家のテレビには「志村どうぶつえん」が流れていた。特段、それについて誰も何も言わぬまま。
 
そのスコティッシュフォールドは、ガラス張りのペットショップの展示スペースでほとんどに微動だにしない様子で座っていた。
他の猫たちが「私は可愛い」「私を連れて行って」と愛くるしい表情で通りがかりの人に訴えかけていると思ったら、素早い動作でタワー駆け上がり、一番の動きをみせてくれるのとは対照的に、何かもう全てを諦めているかのようにただそこに構えていた。
いわゆる、「どんくさい猫」なのかそれともおとなしい猫なのか……
それに、ほとんどの猫が生後3ヶ月くらいのいわゆる子猫なのに、彼女は生後10ヶ月以上経過していた。何かあったのか。彼女の毛並みはキツネを連想させる茶色でツヤツヤと輝いていた。知らず知らずのうちに 視線が彼女に止まる。
「誰かお気に入りの子、いましたか」他のお客の相手をしていた店員が私たちの近くに寄ってきた。
「その茶色の猫、触らせてもらえませんか」
実は猫を触ること自体、記憶を遡れるだけ遡っても思い出せないくらい久しぶりのことだった。
恐る恐る、艶のある背中を撫ででみる。「いけるではないか」
猫は、まんまるの目で私を見つめてきた。
決して媚びることなく。
1週間の思案を経て、猫は我が家にやってきた。ペットショップでは、「シャー子」という名前で呼ばれていたらしいが、「こむぎ」という名前にした。
こむぎ、今日から一緒だよ。
 
こむぎは、伊達に長くペットショップにいたわけでなく、きちんとトイレトレーニングができており、飼育初心者にとっては超優しい猫だった。
毎日、私が帰宅した時は、玄関まで走ってきて出迎えてくれた。
出迎え? と思ったら、クルッと180°向きを変え、リビングに走っていく。
その姿も愛くるしい……
愛くるしい、なんて愛くるしい目なのだろう。こんな目は、思春期の入口に立っている娘からは当然見ることのできない目だった。
目を見ていると、何もかも忘れてしまいそうだった。
無償の愛とはこのことか……
動物に特段の愛情がなかった私が、むしろ、毎日えさをやること、お世話をすることが苦手だった私がいまや猫に魅せられている。
こむぎは、私のベッドの上に乗っかり、時々、私より先に枕を奪って、枕の上にちょこんと乗っかって寝ている。
それが、とてもかわいいのだ。
普段は、狩猟動物の片鱗を見せ、俊敏な動きで走っていたかと思うと、肌を膝の上や手の甲にすり寄せ、無防備な寝姿をさらしているのがとてもかわいいのだ。
そして、ごろんと腹を上に見せ、さらに無防備な姿をさらす。
腹を見せるのは気を許している証拠、などどいう文章を猫図鑑から見つけ、さらに自分は優越感に浸る。
目をしばしばさせる。目をつぶっている姿が、まぶしい太陽を見た後の顔のようだ。
「何をそんなにまぶしがっているの? 室内なのに?」と質問を投げる。
当然、答えなんて返ってこないのだが、急に目を開け、あたりを見回している姿を見ると
さらに、「な~んでだ」とはぐらかされているようで愛しい。

そう、猫は気まぐれなのだ。犬の従順さや忠誠心はないけれど、その気まぐれさが魅力なのだ。人間の世界では、当然、押し殺してきた気まぐれさを存分に、チャームポイントとして発揮できるのが猫なのだ。
そんな猫がうらやましい。羨ましいからこそ、愛せるのかもしれない。
 
 
 
 
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2020-11-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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