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イケメンじゃない僕がイケメンになれる理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐藤ゆり(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「お! イケメンになったね!」
 
と、言われる。
 
僕は2週間に一回、散髪にいく。
そう言うと、相当お洒落に聞こえるかもしれないが、実はその逆だ。
 
服のセンスもよくないし、似合う色も、ましてや流行りの服なんて全く分からない。
配色だってチグハグだし、袖がぽろぽろとほつれてても、大して気にならない。
いや、正直に言う。全く気にならない。
 
僕は髪が短い。だから手入れが要らない。
これが、伸びるとワックスとか、何か手入れをしてやらないといけなくなる。
結構、面倒だ。
 
2週間に1回の散髪と言うのは、たまたまだった。
ビジネス・サークルで出会った仲間が始めたサービスで、最近流行りのサブスクだ。
1年間通い放題なのだ。これは、本当にラッキーな出合いだった。ツイている。
おかげさまで、外見に頓着のない自分が、髪型だけは保てている。
 
「イケメンになったね」と言ってくれるのは、僕の彼女だ。
散髪の後に会うと、必ずそう言う。
 
髪型にも頓着ない自分からすると、毎回気づく彼女は凄いと思った。
都度、型を押したように言うのだ「イケメンになったね!」と。それも嬉しそうに。
 
「え? 僕がイケメン?!」
 
これまた彼女は、ニコニコして、
「うん。散髪してイケメンになったよ」と返答するのだ。
 
残念なお知らせがある。僕はイケメンじゃない。
どう転んでもイケメンじゃないのだ。
 
だから「う〜ん、馬鹿にしてるのか?」と心の中で思う。
どう見てもイケメンじゃないのに、僕をからかっているのだろうか……。
 
彼女は、僕と真逆でお洒落にとても気を使うタチだ。
最近流行りの服、自分に似合う色や形、TPOに合わせてバッグや靴を変える。
ピアスも洋服に合わせたり、メイクを変えたり、口紅の色も変えてるらしい。
「らしい」と言うのは、僕は全く気がつかないから、彼女の話の受け売りだ。
 
彼女は、色々と説明してくれる。
僕の反応はいつも「ふーん。偉いね。」くらいしか言えない。
「お洒落だね。」ではないのだ。
何が偉いかと言うと、そんなに色々と気を使っていることが、とても偉いと思うのだった。
 
本当のところ、彼女は気付いて褒めて欲しいのだろうが、僕には出来ない。
興味がないから、気付けないのだ。
だから、髪型を変えても、全く気が付かない。
 
昔付き合った彼女らは、「ねぇ、なんか気付かない?」と質問してくるのだ。
大抵は、髪型が変わったことを言っているのだが、その頃の僕は全く分からない。
そのうち彼女らは不機嫌になり出す。
「だから、僕はそう言うのに気付かないタチなんだって……」
 
2ヶ月に一度くらいは繰り広げられるこの会話。
流石に僕も定型文を覚えればいいんだが、そもそも興味がないから、いつまで経っても彼女等の機嫌を上手く取れなかった。
 
そのうち、付き合う時は先手を打つようになった。
 
「僕は、君が髪型を変えても、多分気づかないよ」
 
「うん。そうかもね」
 
それが、彼女の答えだった。
お洒落な彼女のことだ、早々に気付いて居たんだろう。
 
「ね、ね、今日ね、美容院に行って髪型変えちゃったの! ここがこうでね……」
と話してくれる彼女。
だから僕は褒められる。彼女の言葉通りに褒められる。
髪型で不機嫌になられなくて、助かる。
 
さて、この彼女、自慢じゃないが、美人なのだ。
僕に近い年なので、いい年なのだが、アンチなんちゃらとかで若く見える。
なにより、とてもモテる。
毎週末、誰かに食事に誘われている。
結婚してようが、僕とデートしてようが、ナンパされる。
外国人なんてのは、平気で僕の目の前でナンパをするんだから、タチが悪い。
いや、本心では男子として、そこは見習いたいところだと思う。
 
結局、自慢になってしまった。
本当は自慢したかったんだ。
ごめんなさい。
 
彼女はいつものように、イケメンの造形ではない僕を「イケメン」と言う。
普通に考えたら、馬鹿にしていると思ってもしょうがないと思う。
もしかして、僕の心が卑屈なのか?!
 
僕はと言うと、母はシングルマザーで、6つ上の父親がわりの厳しい兄に躾けられた。
たった6つしか違わないが、子供の時分の6才差は非情だ。
毎日毎日、箸の上げ下ろしから寝るまで、布団に入っても微に入り細に入り、僕を躾けと称して攻撃してきた。今思うと、兄貴の精神的サンドバックにされてた。兄貴もストレスが多かったのだろう。だが、しかしだ。
 
母親は、僕ら子供の生活費を稼ぐために、朝から晩まで働いていて殆ど会えない。
僕は逃げ場がなかった。
 
そんな僕も思春期を越え、大人になった。
すっかり自信のない大人になっていた。
ただ、これも自慢だが、女性には何故かモテた。
僕は女性に救われてる人生だと思う。
 
さてこの彼女、パーフェクトかと言うと、全くそうではない。
まず遅刻の常習犯。イエローカードより、レッドカードの方が確実に多い。
物忘れも激しい。良いのか、悪いのか、すぐに忘れる。
ときたま、急に怒りだしたりする。口を滑らせて、元カノの話をしようものなら、めちゃめちゃ不機嫌になったりする。忘れた頃に言葉の端を引っ張り出して、夜中に延々と文句のメールを送って来たりする。これはこれで厄介だ。
 
彼女がご機嫌なある時、僕は勇気を出して聞いてみた。
 
「ね、僕はイケメンじゃないよね?」
 
「うん、イケメンじゃないね」
 
え?! 今までイケメンって言ってくれたよね?!
やっぱり馬鹿にしてたのか?!
 
淡い期待が、砕け落ちた。
分かってはいたが、少なからずショックを受けた。
彼女は悪気があるわけではない、はず……。
では、どう言う意味だろ?
 
気を取り直して、聞いてみた。
「じゃあ、どうしてイケメン。って言うの?」
 
「うん、だってイケメンになって来たから」
 
はあ??
意味がわからない。
 
「どう言うこと? 髪を切るとイケメンなの?」
 
「うん、髪型って顔の次に目に付くでしょ?
それをちゃんと手入れしてるのってとっても素敵だと思うの。
ちゃんと手入れしてスッキリしてる男性は、それだけで好感が持てるよね。」
と彼女。
 
「それとイケメンは違うんじゃない?」
と突っ込む、僕。
 
「うーん、それも含めてイケメンなんじゃないの?
イケメンて造形だけじゃないと思うんだよね」
 
なるほど。
 
さらに、彼女は
「それにさ、イケメンだね。って言われて気分悪くなる男性っていないと思うんだよね。
一緒にいる人が気分良くなったら、こっちも気分いいし。二人の間のことって、結局は自分に返ってくることじゃない?」
 
なるほど〜、確かに。
 
僕は、彼女の身なりを少し気にするようになった。
スカートか、ズボンか。スニーカーか、ヒールか。ぐらいだが、進歩した。
 
5回に一回くらいは、髪型の変化にも気付くようになった。
彼女はその都度、嬉しそうに反応してくれる。こちらも気分が良くなる。
 
そして僕は相変わらず、2週間に一度「イケメン」になっている。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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