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メディアグランプリ

殺風景な部屋で感じた本能


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:濱田 英樹(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「東京都は昨日、新型コロナウイルスの感染者が新たに1070人報告されたと発表しました。1日の感染者が1000人を超えるのは11日連続です」
 
朝起きてテレビをつければ、最近は毎日このニュースです。
海外のニュースも報道されますが、やっぱりコロナ関連ばかり。
あとは数分間のスポーツと天気予報でおしまいです。
一体、1日に何回コロナというワードを聞いているのだろう?
とふと数えてみようかという興味も湧きましたが、実に不毛な労力と思いとどまりました。
 
私は朝食を済ませて食器を片付け、テレビを消して隣の部屋に向かいました。
デスクの上に置いてあるノートパソコンを起動し、体温計で温度を測り、メールを1通送ります。
時刻は8:30。本日の業務開始です。
 
緊急事態宣言が発出されて、政府のガイドラインに沿って、テレワークを行ってから、そろそろ2週間が経過した1月下旬頃、まだ感染者は私が期待したほどは減っていませんでした。
私は2週間、ほとんど家にこもりっきりという状況に閉塞感というか、息が詰まる感覚を覚え始めました。それまでは週末には家にずっといたって全く快適だったというのにです。
時間や曜日の間隔が少しおかしくなり、今までは明確だった仕事と休日の境目が薄くなってきているのを感じました。まるで昼も夜もずっと電気の照明がついているような感覚です。テレワークをしたらさぼるとか、楽だとか、そんな声もありますが、少なくとも私にはそうは思えませんでした。スイッチがオフならそうなるのかもしれませんが、実際にはずっと微妙にオンなのです。
 
必要な業務を終え、時計を見ると20:00を過ぎたあたりでした。私はパソコンを閉じ、この状況を打破しようと考えました。椅子に座ったまま、頭の後ろに手を組み、自分の部屋を見渡しました。
そこから見えるものは、白い壁と茶色のカーテン、その隙間から見える黒い窓越しに見えるわずかな街灯の光、デスクと本棚とクローゼットの扉……。
ずいぶん殺風景な部屋だな。と思いました。無機質で、この中にいて一日中パソコンを打っていると、まるで自分が生きているという事を忘れてしまうのではないかという虚無感に襲われる様な感覚でした。
私は何か、自分の生に対して同調できる何かが欲しいと思いはじめました。
犬や猫、ハムスターなどの小動物……いや世話が大変で私には難しすぎる。
メダカなどの観賞魚……いやいや、それもまた世話が大変だ、私にはきっと難しい。
観葉植物……ん? これは……いいかもしれない!
翌日は休日だったこともあり、私は園芸店へ行くことにしました。
 
週末の外出と言えば、スーパーへの買い出しくらいのものでしたが、緊急事態宣言後に初めて食以外の目的で外出しました。車に乗り、自然の残る郊外へ走っていくと、少し気分も明くなりました。
園芸店へ着くと、駐車場は車でおおよそ埋まっていました。空いている場所を探して車を停め、店内へ入りました。店頭にあった案内板を見て奥にある観葉植物の売り場へ向かうと、そこはたくさんのお客さんで賑わっていました。
皆マスクをつけていましたが、若い人では大学生くらいの男女から、比較的年配の夫婦まで、様々な人が楽しそうに観葉植物を選んでいました。店舗のスタッフは、熱心に質問するお客さんの対応に追われていました。
なるほど、この時私は気が付きました。
みんな、私と同じ感覚だったんだなと。
家から一歩外に出れば、都心でも街路樹など少ないながらにも植物や自然を目にすることはあります。しかし、家や室内にいる場合、自分が意識しない限り、自然は無いのです。
それがこのような状況下で、私も含め植物が必要だと気付かされたのです。
この場合、癒しというよりは、心の渇きであり、趣味嗜好というよりは本能といった方が正しいかもしれません。
きっと日々の生活の中に自然を求める事は人にとって自然なものなのでしょう。
 
私は接客しているスタッフへ声を掛けるのをあきらめ、店内に貼られたPOPの中から管理が簡単そうな植物を選びました。土に刺さっていたラベルには、ポトスと書かれていました。
家に帰った私は、早速デスクの上にその植物を置きくと、気持ちがふっと和らぐとともに、自分が生きていることを実感しました。
少し大袈裟かもしれませんが、このような状況が余計にそう思わせるのでしょう。
 
一息ついた後、コーヒーを淹れようとキッチンに向かった時、大事な事に気が付きました。
植物に水をやる、水差しが無いのです。
さしあたり、手元にあった空のペットボトルで水をあげるものの、入れづらくデスクにぽたぽたとこぼれてしまいました。
水を拭いた後、コーヒーを飲みながら私は、また来週あのお店に行こうと思いました。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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