「ネタ」はおいしくいただこう! 人生はきっと〇〇くなる
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:こやまともこ(ライティング・ゼミ スピード通信コース)
ゴンッ
鈍い音とともに、軽い衝撃を感じた。
数年前
車で10分ほどのところにある、家電量販店へ行ったときのこと。
駐車場に車を停めようとして、石柱にリアバンパーをぶつけた。
夫が。
「あっ!」
焦った彼はギアをドライブに入れ、一旦前進。
次に、ギアをバックに入れると、再度アクセルを踏んだ。
なぜか、車は同じ軌道を描き、
スローモーションのように、再度、柱にぶつかった。
私の頭に疑問が湧く。
「え、なんで? なんで二回行った???」
夫は頭を抱えていた。
時間を戻すことができれば……。
人生は、いろいろなことが起きる。
なぜ自分がこんな目に、と思うことだってある。
この時の夫はそういう気分だったろう。
しかし、一方の私は、笑いをこらえるのに必死だった。
「自分に起きるのは、不幸な出来事だけ」
ある時期の私は、本気でそう信じていた。
母が怪我をしたことがあった。
手術のための入院中、夫の母が脳出血で緊急搬送された。
義母は一命をとりとめたが、予断を許さない状況となる。
母の手術当日、介護施設にいた祖母の容体が思わしくない、と連絡が入った。
実母の手術が始まると、今度は義母の容体が急変したと連絡が入る。
すべての不幸の中心に、自分がいるような気がした。
もしかして、自分が周りを不幸にしているのではないか。
そう考えたりもした。
そんなとき、ある考え方を知る。
自分の人生の主導権は自分で握るもの。
責任を他人に委ねてはいけない、と。
自分が幸せかどうかは、自分で決めてよいのだ、という。
2人の母が入院し、祖母まで容体が悪いという。
その時の私はこう思っていた。
なぜ、私ばかりがこんな目に遭うのだろう
辛いことばかり起こる、私は不幸なのだ
しかし、そう思ったことで、はたと気がついた。
「うわっ! コレが噂の、『悲劇のヒロインぶりっこ』やー!」
私は、「悲劇のヒロインぶる」ことで、逃げていた。
「自分で自分を幸せにする」ことから。
「カクテルパーティ効果」という言葉がある。
自分が信じていること、意識していることが
鮮明に聞こえたり、印象に残ったりするのかもしれない。
楽しいことも嬉しいことも起きている。
なのに、「不幸な出来事」だけが記憶に鮮明に残っていたのだろう。
だから、無理やりにでもこう考えることにした。
「自分に起きることは、全部ラッキーなことだ」
こうして、ネガティブのループから少しずつ抜けだすことができた。
何が起きても、大丈夫だ! 楽しもう!
そんな風に考えられるようになってきた。
夫と一泊二日の旅に出たときのこと。
宿から、食品アレルギーの確認があった。
宿泊予約確認の際、当日のチェックイン時、夕飯時、と全部で三度。
私は、食品のアレルギーはないのだが、メロンが苦手。
当地の名産で、ちょうど旬の時期だ。
デザートに出るだろうなぁと思った。
可能だというので、違うものを出してもらえるよう、頼んでいた。
食事がひと通り済んだ頃。
「デザートお持ちしますね」
出された皿に乗っていたのは、そうだ。
メロン。
「えっ……と」そういった瞬間。
「あっ! 失礼いたしました。別のものをお持ちしますね」と、下げられた。
実は、こんな風に考えていた。
何度も確認されて、「メロン」が出てきたら……
絶対におもろいやん!
ひそかに「メロン来い!」とすら思っていた。
ちなみに、「スイカは大丈夫でしたか?」とも聞かれていた。
だから、当然「スイカ」が来るものと思っていた。
ところが、出されたのは「イチジク」。
ちょっ待って、イチジクもあんまり得意じゃない(涙)
ってか、スイカはどこ行ったぁーーーーーー!!!
という三段オチ。
見事な攻撃だ。
イチジクの皿をそっと夫の方に滑らせる。
「おれ、メロンの方がよかったわ」と夫。
「ですよねー」と、笑ってしまった。
旅館に文句を言うこともできたろう。
でも、それでは何にも面白くない。
あんだけ確認したやん。で、メロン出てくる?
あれだけ「スイカは大丈夫ですか」いうてたやん。
なんで「イチジク」来た?
事実は小説より奇なり、である。
人生は楽しもうと思えば、どこまでも面白い。
こんな面白いネタをご馳走様! である。
おそらく……だけど、旅館のスタッフさんは、
「このお客様にはメロンをお出ししてはダメ」と念じていたのだろう。
「脳は否定形を認識しない」と聞いたことがある。
そのため、「このお客様にメロンをお出し」してしまった、のかもしれない。
そんなことを考察するのも楽しい。
「なんべんも、メロンはダメっていったんですけど、キーーーーー」
などと怒ってみても一銭の得にもならないし、つまらない。
「おいしい『ネタ』いただき! ラッキー」
そう思う方がよほど楽しいじゃないか。
量販店の駐車場。
ブルーレイプレイヤーを買おうとしていたけど、今日は無理かな。
頭を抱えていた夫に、
「(もっと安い)普通のDVDプレイヤーにしよう」と言った私は
実は笑いをこらえるのに必死だった。
「何で二度行った? 何でもう一回同じトコ行った?」
しかも、そうっと。
そう考えたらおかしくて仕方がない。
ニヤニヤしている私に、夫は「笑いごとじゃない」と不機嫌だ。
しかし、幸い柱に傷はつけなかったし、バンパーはへこんだけど、誰も怪我をしていない。
おいしいネタをゲットできて、私はラッキー。
そして、妻にどやされもせず、笑ってすまされた夫もラッキーじゃないか。
人生には、おいしいネタがごろごろ転がっている。
文句を言おうと思えば、いくらだって言える。
でも、せっかく見つけた「ネタ」はおいしくいただこう!
その方がきっと人生がより楽しくなる。
その方が、きっと幸せなはずだ。
***
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