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母へ、娘より


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記事:あんちゃん(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「今年で最後にしますから。終わったら捨てます」
 
急に母から家族のグループLINEにこんな連絡が来た。
主語は“雛人形”であった。
 
我が家は、私と妹の姉妹だった為、豪勢な雛人形があり、
小さい頃は、七段ある雛人形をリビングに全て飾ってくれていた。
 
私が、どこかの段の人形の首を引っこ抜いてしまったという騒動は未だに家族が集まるとよく聞く思い出話の1つになっている。
 
そんな思い出の雛人形をすべて処分するという突然の連絡は、相談という雰囲気はなく、決定事項として伝えられた。
 
そういえば、母は毎年3月3日に欠かさず飾ってくれていた。
そんな行事もなくなるのかと思い、少し寂しくなったので、雛人形の最後の姿を見に、久々に実家に帰ることにした。
 
私が2歳の頃から住み始めた実家は、昔とあまり変わっていない。
一番奥の部屋に佇んでいる雛人形は久々に見ると、迫力があった。
ふと、目を落とすと近くに組み立ての説明書があった。
 
「毎年、これを見ながら一人で飾ってくれていたのか」
 
説明書の黄ばみ具合を見るとその歴史を感じる。
30年以上続けていたと思うと、素直に凄いなと感心してしまった。
 
私は、母のことが嫌いだった。
母はせっかちで、お節介である。
とにかく、私が行動する3秒前に指示を出してきて、「今やろうと思っていたのに」と思ったことは何万回もある。
 
「私は、母親になったら絶対にお母さんみたいにはならない」
 
中学時代のある朝、朝練に行く前に母と言い争いになり、勢いで行ってしまった一言である。
 
涙ぐむ母の顔を見て、驚きながらも、そのまま家を飛び出し学校へ向かったことを今でも覚えている。
 
私は、母のようにはなりたくない。
 
 
両親は共働きだった為、母は定時に仕事を終わらせると、急いで保育園へお迎えに行き、帰宅後すぐに夕飯を作り、寝るまで家事をしている。
小学校の時は、家に帰ってもおやつはなかった。
「友達がおやつにケーキを食べているから私もおやつを食べたい」とせがむと
次の日に渋いおせんべいが3つ置かれていて、がっかりした。
それは、まるで忙しなく生きている母を映しているようだった。
 
「なんでうちのお母さんはいつも大変そうなのだろう」
ずっとそう思っていた。
 
母は、何が楽しいのだろうか、何の為に生きているのだろうか。
私は楽しい人生を送りたい。
自分の為に人生を使いたい。
 
 
ある時、母から私の子供の頃のエピソードを聞いた。
保育園に迎えに行った時、私が帰りたくないと駄々を捏ねたので、
母は、私が友達と外を駆けずり回って遊んでいるのを眺めながら待ってくれていたそうだ。
1時間ほど、毎回待っていたという。
仕事を早く終わらせ迎えに来て、1時間待ち、私の気が済んだ時に帰路につき、そこから家事が始まる。
それを聞いて私は思った。
 
“私は母のようにはなれない”
 
30余年経った私は、結婚をし、子供はいないが共働きで生活をしているだけで、こんなにも毎日が必至なのに、母のように子供の気持ちと自由を尊重し、愛情たっぷりに育てることなど、ひっくり返っても出来ないと思う。
 
雛人形のように、昔のものを1つ1つ整理する度に親からの愛情が伝わる。
 
その時は、気づかず、疎ましく思うこともある親の言動は、30余年という歴史として振り返ってみると、超人的な努力と、計り知れない深い愛情の連鎖であった。
 
最後の雛人形を眺めていると、今までの母との思い出が蘇ってくる。
折角だからと思い、母親とその最後の雛人形を1つ1つ片付けていると、なんとなく母が“母親としての役目”を1つ終わらしているような気がした。
 
これからは、お母さんの時間はお母さんの為に使ってほしい。
 
そういえば、1週間後はお母さんの誕生日だった。
ご時世を考えると派手なことは出来ないけど近場のゆっくりできる旅館にでも連れて行って、お母さんの好きなように、自由にゆっくり楽しんでもらおうかな。
 
もしかしたら、来年、私は母になっているかもしれない。
 
そうなったとき、今の私にどれだけのことが出来るかは分からないが
まだ見ぬ我が子には、私が親から受けた愛情と同じように愛してあげたい。
私は、“母のようになりたいな”と思った。
 
 
 
 
***
 
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2021-03-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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