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高校時代、野球部の寮で三年間過ごすと恐ろしいことが起きる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田村将太郎(ライティング・ゼミ)

 

高校時代、私は野球部の寮に入っていました。私のいた野球部は、3学年で150人くらいの部員がいたのですが、そのうちの40人くらいの部員が寮に入っていました。
これからお子さん、あるいはあなた自身、もしくはご友人が「高校野球の寮に入る」ことがあったら是非最後までお読みください。最後までお読みになられると高校野球の寮がいかに恐ろしいところかというのが、お分かりになると思います。「下手したらこれって憲法に抵触しているんじゃ……」ということや、非常にショッキングな内容も含まれますので我が子がこんな目にあうことを想像しただけで夜も眠れないわ! という方はご注意ください。高校野球の寮に入る予定もなにも関係ない人もご注意ください。

それでは高校野球部の寮の実態をご紹介します。

まず、ご飯が美味しくないです。ごく稀にご飯が美味しい寮もありますが、私が聞く限りでは99%美味しくないです。なにを贅沢なことを、とおっしゃる方もいらっしゃると思いますが、皆さんの想像している「美味しくない」とはまるで次元が違います。
基本的に白米はべちゃべちゃの場合がほとんどです。見た目にも米の粒と粒の境目がなくなっているほどでした。たまに米の粒が確認できるとき、その時は芯が残っています。
また、おかずには火が通ってないことが多かったです。おでんの大根はシャキシャキ、唐揚げの中は真っ赤っかです。もし、私の将来の奥さんが同じものを出してきたら、笑顔で「今度からは、俺が作るね」というレベルです。一度に40人分を作らなくてはいけない寮母さんの苦労は察しますが、それにしても……っていう感じでした。
高校の時に一番好きだったのは、瓶に入った「なめたけ」でした。これが一番のご馳走でした。

そんな三年間を過ごしたせいか、完全に舌が「幸せな舌」になってしまいました。何を食べても、めちゃくちゃ美味しいのです。高校時代もコンビニの「唐揚げ棒」を食べるだけで、こんな美味い食べ物があるのかと悶絶していましたし、今でも友人からはよく「お前って本当に幸せそうに食べるよな」「こっちまで美味しく感じるよ」と言われます。

次に、異性と接する機会が激減します。自宅から通っている高校球児は通学途中にいくらでも女子高生、女子大生、OLと実に多種多様な女性を目にしながら登校してくるわけですが、私の場合は学校を道路一本挟んだところにグラウンドと寮がありましたから、その敷地内の女性にしか会わないわけです。同じ学校の女子、女性の先生、寮母さんくらいです。しかし、学校の授業があるうちはまだいいですが、夏休みなどの長期休暇になると接する女性が「寮母さん」一択になります。昼間は部活動で男同士、汗を汗で流すような練習をし、寮母さんにしか会わない生活を一ヶ月間。思春期の男子にとってそれは「断食」に等しい行為。夏休み明け、つまり9月1日に学校に放たれた寮生は、水しか与えずに閉じ込めておいた猛犬のよう。よだれダラダラです。
久しぶりの女子高生を目の前にして、1学期は可愛いともなんとも思わなかった女子も可愛く見えてしまいます。いや、その子が可愛くなったのではなく、寮生の目にはもう女の子のいいところしか見えません。なんといったって比較対象が寮母さんですから。一ヶ月間「水」しか与えられていないのですから、「食べ物」だったらなんでも美味しいんです。
高一の時にこの魔法にかかってしまった私は、今でもみんな可愛いです。あの時の寮母さんより「新鮮」だったらみんな可愛いと思ってしまいます。上から目線で申し訳ありませんが、私の女性に対するアリかナシかの、いわゆる「ストライクゾーン」はめちゃくちゃ広いです。女の子みんな可愛い! 目線になってしまいました。

最後に、これが現代の若者には一番辛いかもしれませんが、携帯の所持が禁じられていました。外部との連絡手段は10円を入れて使える公衆電話のみでした。
もし、気になる女の子の番号をゲットしたとしても、身銭を切らなくてはいけません。無料通話アプリは寮生にとっては、ドラえもんのひみつ道具のようなものでした。
通常は、メールアドレスを交換し何日間もかけて文章を交換し徐々に親密度を上げ、そうして初めて電話をするというのが女性との距離を近づける上でのセオリーでしょう。しかし寮生はいきなり女性にお電話をお申し込みしなくてはなりません。メールなら、何気ない感じでこちらの意図をあまり感じさせずにだんだんと……というふうにできますが、電話だともうモロバレです。事実上の告白のようなものです。急に「電話番号教えて、君と電話がしたい」なんて。そんなの夏目漱石のいう「月が綺麗ですね」と同じようなものですよ! そういうの素敵! と言う女性もいらっしゃると思いますが、※ただしイケメンに限る だと思います。
しかも相手の家の固定電話にかけることはまずありません。親が出てしまった場合気まずさでショック死する恐れがあるためです。そうなると、相手の女子の携帯にかけるわけですがそれがまたお金のかかること。十円玉が数十秒に一回のペースで落ちていきます。曖昧な記憶ですが、一回の電話に千円二千円使うこともありました。当時私の月のお小遣いが五千円でしたから、それはもう中途半端な気持ちで電話はかけられません。一回一回が全力で、多分その全力さは相手からしたら少し気味が悪かったと思います。
そんなデジタル社会から取り残されていた高校時代の私。中学の同級生とも全く連絡が取れなかった私は、中学の頃から大晦日に毎年行っていた、仲良しグループでの鍋パーティーの開催は諦めていました。
そんな中、11月の中旬頃でしょうか、寮にいた私に一通の手紙が届きました。それは鍋パーティーへの招待状でした。差出人は仲良しグループの一人です。そこには鍋パーティーの日時と、その友達がこしらえた、つまらない冗談がたくさん書かれていました。冗談はスベっていましたが、鍋パーティーを企画してくれたことと、手紙まで送ってくれたことに感動しました。ちなみに寮の住所はその友達に教えたわけではありません。結局、本当の友達ならば、どんな形にせよ繋がっていられるんだなと実感しました。携帯なんてなくても。

 

こんな世間一般とはかけ離れた三年間を送った、私の高校時代。この三年間のせいで、私の持っている感覚の「定規」と、同世代の持っている「定規」との目もりがだいぶズレてしまったのかもしれません。あの三年間は定規の目もりに紙やすりを擦り付けるような三年間でしたから。徹底的に価値観を壊されました。

食べ物もなんでも美味しいし、女の子はみんな可愛い。携帯で誰かと繋がってないとか気にならない。

しかし世の中はこうみたいです。
誰かのミスを粗探しする時代。お客様が神様の時代。若い客が年配の店員に横柄な態度を取る時代。連絡が返ってくるのが当たり前の時代。常に誰かと繋がっている時代。
あって当たり前。してくれて当たり前。美味しくて当たり前。尽くしてくれて当たり前。

私の定規が壊れているせいなのか、違和感を感じずには入られません。
お店に行けば美味しい食べ物を店員さんが運んでくれ、連絡をすれば返事が返ってくる。すべてが奇跡にしか思えないんです。「無い」ものではなく「有る」ものにしか目がいかないんです。

 

いかがでしたでしょうか。高校野球で寮生活を三年間過ごすと、こんな「ズレた」若者が出来上がってしまいます。大変恐ろしいと感じたでしょう。
皆さんも自分自身、またはお子さん、友人の方が寮生活を検討するときは、どっちの定規を身につけてほしいかよく考えてほしいです。

 

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この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 
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2016-02-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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