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満員電車に乗れなくなったわたしが電車に乗れている方法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山本 詢子 (ライティング・ゼミ 超通信コース)
 
 
満員電車が苦手だ。いや、はっきり言おう。大嫌いだ。
いつも窮屈な姿勢を強いられる。混雑で常に電車遅延が頻発。
雨の日は傘からしたたり落ちる水滴が足や服に容赦無くかかる。
暑い日は乗客が汗だくでひっつきたくないのに、問答無用でおしくらまんじゅう。
こんなことも最近はよく見かける。
電車の扉の端から絶対に動かない人。乗り降りがスムーズではないし、ぶつかってしまうとこちらが悪いかのような目を向けられる。
思いやり、お互い様という単語がどんどん遠くなっていく。
まだまだあげればキリがないがそれぐらい満員電車は辛いものである。
大方、この意見に賛同いただけると思う。満員電車が好きという人に出会ったことがない。
もし、好きな人がいたらお知らせ願う。
 
だが、それでも満員電車に毎日乗車している。
コロナだというのに、人が減っている気配はない。
じゃ、なぜそれでも満員電車に乗るのか。
答えは簡単。生活があるからだ。
都会は職もあるし、賃金だって高い。同じ仕事内容でもやっぱり都会に勝るものはないのだ。
自己啓発系の動画や書籍には「通勤は害しかない。職場から近い場所に住むことは絶対だ。無理なら起業すればいい。賃金が高い職場に転職すればいい」
そうは言いますけどね、できるならとうの昔にしている。できない事情が人それぞれあるのだ。
 
私は以前、満員電車のみならず空いている時間帯の電車に乗るのも難しい状態になった。
気を紛らわすためにイヤホンで音楽を聴いたり、本を読んだりスマホを見たり、眠くないのに寝たふりをしたり、とにかく自分の世界に浸れるように心がけていた。
が、抗えない日が徐々に近づいてきた。
最初は乗車中に呼吸が少し苦しいなと感じる程度だった。
けれどそれは日を追うごとにエスカレートしていく。
車内アナウンスが異常に響いて聞いていられない。電車に乗ろうとすると足がすくんで最後の一歩が踏み出せない。乗っても途中で降りての繰り返し、会社に遅刻することが増えた。ひどい時は駅に向かう途中で、帰ってしまうこともあった。
最終的には会社に行くことができなくなって休職、そして退職した。病院にも通ったが根本的な解決には至らなかった。
 
それでも私は現在、毎日満員電車に乗っている。
正直、いまでも乗れなくなった時のことが頭をよぎり、呼吸のリズムが崩れることもある。
また同じ状況を繰り返すかもしれないという不安もある。
では、なぜ乗ることができているのだろうか。
後から気づいたのだが、満員電車の乗り方、簡単に言えば気持ちの切り替えと見方を変えてみたことだと思う。
 
例えば、新聞を広げて読んでいる人。(今はほとんどみかけなくなったが)
以前はなぜこちらの領域まで進出してくるのかと嫌な気持ちばかりだった。
気にしないように寝たふりをしたこともある。けれどふと気づいた。こんなにもはっきりと新聞の内容が目に入っていくるではないか。そう、新聞のタダ読みをすることにした。
ある日は日経新聞、次の日は東スポ、時には繊研新聞というアパレルご用達の業界紙の日もあった。
そして新聞で気になった見出しや用語をスマホで検索し、自身の知識を増やしていった。
スマホでも同じ方法が使える。
「このニュースを読んでいるのか。こちらはバラエティの動画観ているな」
など、その人の興味関心から、情報が増えていく。
これは覗き見ではない、勝手に視界に入ってくるという言い方をしておこう。
 
こういうパターンもある。
座席は満席で立っている乗客があまりいない場合だ。
横一列で8名が座れる座席。端から端を順に見ていくと、一様に同じ姿勢ではないか。同じ首の位置で小さい長方形を真剣に見つめている。
そうスマホだ。
まったく同じ彫刻が横並びになっていることを想像してほしい。こんなにもシュールで面白い光景があるだろうか。
 
車内広告にも触れてみよう。
車内で運動しようという内容で、手を腰の横に置き片足を床から上げて背中を丸めたり伸ばしたりしている。
もうその時点でおかしい。どうみても満員電車向けではない。ひじが両隣の人にあたるし、満員電車で足を動かせる余地はない。
新幹線や特急車両ならまだしも普通列車ではあきらかに迷惑な人だ。これを観た人のほとんどが「いや、無理でしょ」と思っているに違いない。
 
そう、満員電車はネタの宝庫だ。
芸人さんがネタ見せのオーディションをするとよく言うが、それが車内で繰り広げられている。
世間からの優劣はつかない、自分の中だけで楽しんで面白がることができるのだ。
もちろんスマホでの情報収集や自分の楽しみな時間を過ごしている人を批判しているわけではないし、車内での出来事についても決して批評をしたり、蔑んでいるわけではない。
自分の世界に閉じこもろうと必死になっていた時よりも外に目を向けたほうがはるかに満員電車に乗りやすくなったのだ。
車窓からの風景だって最高だ。
朝日が川に反射してキラキラ眩しい日、お花見に行かなくとも満開に咲き誇る桜、ベランダで洗濯物を干している人、バイバーイと手を振り合っている子供たち。
流れては消えていく光景なのに、その場所の空気や生活感を垣間見ることができる。風景を眺めながら行う瞑想もあるそうだが、瞑想しようと意気込まなくてもできてしまっている。
 
簡単にはいかないが、ひと時スマホを置いて周りを眺めてみると少しだけ気持ちが変わるかもしれない。ぜひお試しあれ。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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