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選手としての本懐。ファンとしての本懐


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記事:山田THX将治(ライティング・ゼミ書塾)
 
 
「出ておくものだなぁ」
そう語ったのは、“とんねるず”の石橋貴明だ。
ハリウッドの名女優ジョディ・フォスターに初見の際、
「あなた、映画に出ていたでしょう?」
と、言ってもらったからだ。
むしろ私は、ジョディ・フォスター程の大女優が、B級映画を観ていたことに驚いたものだ。
 
もう、四半世紀前のこと、石橋貴明は実際にハリウッドの映画に出演していた。それも、2作品も。
但しそれはいずれも『メジャーリーグ2』『メジャーリーグ3』という続編映画だった。原作の『メジャーリーグ』は、そこそこヒットした作品だったが、『2・3』は、お世辞にもクオリティが高い作品とはいえる代物では無かった。
『メジャーリーグ2・3』で石橋貴明は、“タカ・タナカ”というバットを忍者のように振り回すコミカルな外野手役を演じた。元々コメディ作品なので、彼のお笑い芸人としての資質が買われた出演だったのだろう。
しかも、御存知の方も多いと思うが、石橋貴明は高校時代野球部の投手だった。それも、ただの高校ではなく、甲子園常連校の帝京高校だ。
しかし彼は、投手といっても2軍の選手だった。勿論、甲子園のグラウンドには立ってはいない。
そんな経歴と183cmの長身を生かし、ハリウッドの俳優連中に混ざっても、十分な存在感を示していた。
 
続けて石橋貴明は10年程前、シアトルのセーフコ・フィールドでもメインモニターで紹介されている。それも、ベースボール・プレイヤーとして。
その時は、シアトル・マリナーズで活躍した佐々木主浩(大魔神)投手と試合観戦していた。
場内カメラに抜かれた二人は、テロップで紹介された。
大魔神・佐々木は、『2000~2003年、マリナーズのクローザー“DAIMAJIN”』と紹介された。
一方の石橋貴明は、『1994、1998年映画『メジャーリーグ』でクリーブランド・インディアンズの外野手“TAKA TANAKA”』と紹介された。
モニターに気付いた二人は、外野の方を指さし、手を叩いて爆笑していた。
 
大魔神は兎も角、石橋貴明本人は、
「野球選手で良かったなぁ」
と、思ったに違いない。
こうして知ってもらったり、紹介してもらうことは、野球選手としての本懐だったことだろう。
 
5月16日のこと、21世紀に入ってからMLBばかりを観て日本の野球をほとんど観ることが無くなった私は、たまたま点けたテレビの画面に驚いた。
テレビでは、ニュース番組のスポーツコーナーが放送されていた。
画面には、リリーフカーに乗った石橋貴明が出て来た。どうやら、日本式の始球式をするようだった。
試合は、千葉ロッテ・マリーンズの本拠地で行われた、対西武・ライオンズ戦だ。
リリーフカーを降りた彼は、ラインをまたいでフィールド内に入る際、帽子を取って一礼した。そのままマウンドに立つかと思ったが、マウンドの前に進んだ。
係員が、マウンドに行くよう促したが、彼は従わなかった。元高校球児の彼なら、還暦を迎える年に為ってもマウンドからホームプレート迄届くだろうにだ。
 
石橋貴明は、相手チームの主力打者を始球式の相手に指名すると、一球投げただけで場内放送のマイクを握った。そこで、
「今日は、佐々木朗希のデビューです。応援よろしくお願いします」
と、言っただけで場外へと姿を消した。
スタンド下で、何故マウンドに立たなかったのかと聞かれた彼は、
「今日デビューするルーキーの記念のマウンドに、先に跡を付ける訳にはいかない」
と、その訳を述べたという。
これまさに、元二軍の高校生投手から、この先羽ばたくであろうゴールデン・ルーキーに対する敬意だったのだろう。
 
また言い換えるならば、誰の足跡も付いていないマウンドは、一軍の先発投手に為れなかった者にしか持ち合わせることが出来ない、言い様の無い憧れに他ならない筈だ。
石橋貴明という元・高校球児は、一般のファンでは思い付かない敬意を、代表して形にしただけなのだろう。
そこには、プロの高みに昇り詰めた者達と切磋琢磨出来た自分を、どこか誇っている様な自負も感じられた。
また、ただでさえ緊張するデビュー戦を、本職の御笑いで和ませようとした、思いやりでもあるように感じられた。
 
多分、一野球ファンとなった元高校球児が見せた、一種の本懐だったのかもしれない。
石橋貴明なりの、野球という競技に対する想いを形にしたのだろう。
 
還暦を迎えようとしている石橋貴明。
いつ迄経っても、悪ふざけばかりしている感がある。
しかしその内面は、大人としての常識と風格が備わっていると思われた。
 
なんだかとても、印象に残るシーンだった。
 
 
 
 
***

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2021-06-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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