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夫が女子な件


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:河野裕美子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
あなたは、人差し指と薬指、どちらが長いですか?
私は人差し指です。
夫は逆で、薬指の方が長いです。
……それなのに。
 
「半額だったんだよ! いい肉でしょ!」
夫は、嬉々として半額シールが貼ってある、牛肉のパックを差し出した。
私が買う食肉と言えば、豚こま肉か、鶏の胸肉か、さもなくば挽き肉である。
豚こまでさえ、夫に「同じこまでも、もっといい部位のパックがあるだろうに」とダメ出しをされる始末。でも、未だに豚こまの良い部位を見極める目は養われていない。
夫は「半額」が大好きだ。
そのうち、「半額」なら、車でも買って来るんじゃないかと疑っている。
いいものを、より安く。そのために日頃から、あちこちのお店のマストバイ商品の単価を把握してるし(ここが夫のすごいとこ。価格じゃなくて単価計算するから、偽物の特価に騙されないのだ!)半額シールが貼られるであろう時間を狙って買い物に行く。
一旦ぐるりとお店を一周し、お買い得商品を叩き出す。
もう一周目で、実際の品物を吟味する。
そうして買ってきた品物と、冷蔵庫の中身を確認し、うーん……と頭を捻りながら、美味しいご飯を生み出す。
夫の作るご飯ったら、何だかどっかアジアの屋台で食べたことあったようなエキゾチックなものだったり、えーと、そうそう、アヒージョだっけ? スペイン料理屋のメニューにあった! みたいな、おおよそ家庭料理とは思えないような美味しいご飯なのである。
言っとくが、専業主夫ではない。
かたや、私と言えば、買い物は10分あれば済む。
あらかじめ何を買うか決めてから行くので、目指す商品にまっしぐら。
鶏肉を買うと決めてたら、隣の牛肉に半額シールが貼られていようが、そもそも目もいってない。
半額シールが貼られるまで待つなどもってのほかだ。
料理も定番メニューしか作れない。
肉じゃがとか、ハンバーグとか、カレーとか。時々、「混ぜるだけ」とかいう簡単調味料を使ったりもする(実はカレーもそうだが)。
そんなんなので、ウインドーショッピングもしないし、話題のスイーツショップに行ったりもしない。
美味しいものは大好きなので、外食もするが、大方食べ終わる頃に「あっ。写真撮るの忘れた!」と叫ぶ(女子って美味しいご飯はインスタに上げるんでしょ?)。
何ならできるのか、と問われれば「人並みにお金稼いでくる……かな?」。完全に夫婦逆転である。
 
いえいえ、主婦の仕事は料理だけじゃありませんとも。子ども、子どもの世話があるでしょう? PTAとか、どうなのよ?
娘はパパが好きであり、ほぼ同性のような感覚なので、お風呂上がりは父の前でも平気で全裸だ。もう中学2年だというのに。
クラスの懇親会があれば、ほぼお母さんだけの参加者の中であって、夫は飛び込める。
……完敗か? 白旗なのか、私?
 
冒頭の指の長さは、脳が男か女なのかを見分ける術らしい。
胎児の時に男性フェロモンを多く浴びると、薬指の方が長くなるのだそうだ。
つまりは、薬指が長い夫の脳は男性で、逆の私の脳は女性なのだ。
当たってないじゃん! とここまで読んでくださった方はお思いになるでしょう。
脳科学者をナメてはなりません。夫の脳は、男なのです!
 
夫は、女社会で育った人には分かる絶妙なニュアンスを、汲み取れない。
その発言の裏側にある、本音に気づかない。
気づかないから、それが転じて「気が利かない」。
当然に、裏に潜んだ悪意にも気づかないから、だまされたり、損したりする(でも、それにも気づかない)。
ほかの女性からの若干危険なお誘いですら、表面の言葉だけ信じて、のこのこ出かけようとする(これは実はわざとかもしれない。しかしそれならば、そのことを私には隠すべきであるし、ばりばりの男脳の証明である)。
女ゴコロが分からないことの最たるものは、娘との関わりである。
基本的に、娘は父親が大好きなのだが、そこはやっぱり思春期で、触れられたくない話題とか、今はそっとしておいて欲しいというような場合に限って、かまってしまう。
私から見れば「あー、今はそういう気分じゃないよ……」と雰囲気ですぐ分かることに、全然気づかないのである。
女にもまれて育っていないので、「忖度」できないのである!
女社会において「共感する」ことはとても大事なことなので、これから女の中で生きようとするなら、必須のスキルだ。この点、私は確実に勝利していると言いたい! 少なくとも娘の評価は、そうである。
脳は正しい。夫と私の性別は逆転しない!
……でも性的区別は、そんなに大事なことだろうか。
そもそも、夫が女子である理由は「離婚した時に娘を取られないため」であるそうだ。
何を努力しないでも、娘を生んだ「母親」の私には、圧倒的にアドバンテージがある。
それに加え、仕事を持っているので、経済力もある。
相当な過失がない限り、離婚すれば親権は私になる。
夫は、「オトコ」のような私に勝つための方法を探っていた結果、女子力を磨くという戦略に辿り着いたのである。
夫の「女子力」は作戦であり、努力の賜物であり、そしてまだ伸びしろがある。
いいじゃないの。性的役割がどっちでも、それが作られたものだとしても、それでうまく回っているなら。
そして今日も、夫のご飯は美味しい。

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2018-07-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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