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メディアグランプリ

目が見えなくても絵画は鑑賞できることを目の当たりにしてわかったこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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Facebookで友人が「いいね」していた天狼院のライティングセミナーに惹かれ、思い切って参加しました。この前パソコンに向かってこうして文章を書いたのって何だろう、と思い返すと、ギャラリートークの原稿でした。
7月16日の名古屋でのセミナーで学んだ書くことのコツの1つは自分に近いトピックを選ぶこと。課題のテーマを考えたとき、これはかなりハードルが高いと感じました。自分には人様に読んでいただけるようなネタがない、と焦りました。何を書こうか色々と記憶を掘り起こしましたが、これはなかなか楽しい過程でした。
 
自分の恋愛ネタで一本書いたものの、本名で登録しているFacebookでグループの皆さんのお目に触れることに気づき、怖気づきました。私小説を書く作家さんの潔さ、精神力の強さって相当なものなんだなと思いました。
一通り書いていくうちに、印象が強かった自分の出来事なのに見えていなかったことに気づくことが出来て霧が晴れるような体験が出来ました。書くことってすごい! これが天狼院さんが言っていた「人生が変わる」ってことの一部なのかも。
 
観るということは全身でエネルギーを感じ取ることについてお話します。
小さいころから絵を見るのが好きだったので、空の巣症候群対策に美術館のボランティアになりました。同じころYWCAの講座で盲目の美術鑑賞グループの皆さんと美術館にいく機会がありました。前半は座学で、目の見えない方にどうやって作品を伝えるかを学びます。
これはひたすら細かくそこに何がどう描かれているかを、分かり易く説明していくそうです。テキストには絵の輪郭を盛り上げて印刷したものも紹介されていました。説明を聞いたうえで指でなぞると形の把握がよりはっきりとできるということです。
 
実践では鑑賞グループのメンバー一人ずつについて、絵画の説明をします。
顔合わせの時、私は全盲の方と過ごした経験が無かったので、ガッチガチに緊張していました。教えられた通り、二の腕を持ってもらって歩き始めると、ペアを組んだ女性が明るく笑いながら「緊張しなくても大丈夫よ」と声をかけてくださいました。確かにそうですよね。彼女たちにとって目の見えないことは日常なのですから、滞りなく、大きな通りを挟んだ向かい側の県立美術館に到着しました。
 
私たちはそこで「熊谷守一」という画家のタンポポの絵を観ました。
絵の前に立って、私は彼女に絵の説明をします。新聞紙を基準にして絵の大きさを伝え、絵の右上から、できるだけ細かくそこに描かれているものの様子を伝えます。
彼女は少し微笑みながら顔をじっと絵に向け、私の説明に耳を傾けてくれました。
 
一通り説明が終わると、彼女は少しだけ長く息を吸ったように見えました。それから、愛しむ様に穏やかに「温かみのある優しい絵ね。内側から輝くように明るい感じがするわ」と言いました。
 
私は驚いて彼女を見ると改めて絵に視線を向けました。ガラスの向こうでその作品は確かに温かみがあり明るく輝いて見えました。全身に鳥肌が立ちました。
思わず「えーっ! あの、あのその通りです。ほんとその通りです。どうしてお分かりになるんですか」と興奮気味に尋ねると、彼女はうふふと笑って「あなかが丁寧に説明してくださったからよ」と答えました。
 
絵に描かれたものを伝えているとき隣にいて感じたのは、彼女の集中力でした。普段、私の周りにいる人たちからは感じたことのない強い集中力です。とても深く作品の放つパワーを彼女は全身の器官を駆使して感じ取っているようでした。
 
何年か後、私は駅のホームで居合わせた白い杖を持った女性の乗車のお手伝いをしたことがありました。声をかけられてお話しするうちにその女性も同じような美術鑑賞サークルに入っていることがわかり、私の体験をお話ししました。そこでもまた「なぜ、淡々と絵に描かれたものを説明するだけなのに、温かみのある優しい絵だ、と分かったんでしょう?」と質問してみました。
 
彼女は少し考えてから
「きっと彼女はあなたが感じた絵の印象をあなたが言葉にしなくても、説明しているあなたの声を通して感じ取ったんですよ。私たち、そういうとこあるんです」と答えました。
 
ここでまた全身鳥肌です。見えることに甘んじて漫然と表面的なものしか見ていない私より、
なんて細やかで研ぎ澄まされた感覚なんでしょう! 同時に伝える側の責任を感じました。伝える側はニュートラルでいることが必要なのでしょう。伝える側の好き嫌いで、作品が良くも悪くも伝わってしまうのですから.
 
見えることに甘んじて、無意識に表面的なものしか見ていない自分に気づかされました。
それでも絵を観ることは強制的なものでも義務でもありません。ただ、時々、彼女たちのことを思い出し、もう少しじっくり作品と向き合うことで、絵を味わう喜びが増したらうれしいなと思います。
書いていくと考えがはっきりするものですね! これはくせになりそうです。
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2018-07-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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