fbpx
メディアグランプリ

名前は、最初のプレゼント


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【9月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:かめ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「私の名前? めずらしいでしょう?」
目の前で採血をしている看護師さんは、私の視線がネームプレートにくぎ付けになっているのに気づいた。
その名前は、
「嗣子(つぐこ)」
と書かれていた。
「家を継いで欲しかったみたい。次女なのにね」
こんな風に考えるには、時間を要したのだろうか。
周りにはきっと、親からすてきな名前をもらった人もいるはずだ。
あっ、つぐこさんの名前がよくない、と言っているのではない。
ただ、さっきみたいにちょっと悲しそうに、彼女は何度この名前の由来を人に説明してきたのだろう。
  

私の名前には、「友」という字がついている。
母親は、
「友だちに恵まれますように、ってつけたの」
と言っていた。
恵まれますように?
神頼み的?
私は? どうすればいいの?
ずっと疑問に感じる名前だった。
だって、友だちとの出会いなんて、私が選べないじゃん?
偶然でしょ? 相手の好みにもよるでしょ? 私が好きでも、相手に好かれてなかったら友だちになれないじゃん? なんか変な名前。
そう思っていた。
 
 
けれど、それは実は違った。
 
 
3月から、私はあるセミナーに参加し、大勢の仲間と勉強した。
そこで感じたのは、
「ここにいる人には、同じ傾向がある」
ということだった。
合言葉のようなものがあって(というとあやしさ満点だが)、みんなとっても明るかった。
人が集まるような場所に行くと、実はどこか好みの似ている人が集まっている。
そこで仲間や友だちを得るというのは、自分が選択できることだ。
友だちって、自分の選択でこんなに変わってくるのか。
そう思った。
 
 
かと言って、昔からの友だちに不満はない。
私は今日、生まれたときからの友だち(親同士が友だちだった)に会ってきた。
昔からの友だち過ぎて、実は距離感がわからない。
会うと、家族みたいな、くすぐったい感じになって、場合によっては何を話したらいいのかわからなくなる。
何も話さなくても別にいい気がしてしまうのだ。
今回の帰省は、その幼なじみが初めての出産を終え、私はうれしくて飛び帰ったのだ。
「おめでとう!!」
ひさびさに会うと、少しほっとした。
赤ちゃんは、少し小さめに生まれていたので、帝王切開したのかな、と思っていた。
けれど、ギリギリ自然分娩で産むことができて、ギリギリ体重もあり保育器に入らずに済み、ギリギリ37週? とかで一緒に退院してこれたらしい。
「なんか全部ギリギリなんだけどね。なんとかやってるよ~」
そう、笑った。
しばらくして、私はハッとした。
「名前は? もう決めたの?」
すると、
「うん。ゆいと。結ぶに友で、結友だよ!」
へぇ~。えっ? 友?
「友! 一緒だよ! 一緒だね!」
ちょっとうれしくて、いや、大分うれしくて、はしゃいでしまった。
すると、
「そう、漢字を選びながらその字を使ってる人をイメージしてね。あぁ、友は、とんこ(私のあだ名)と一緒だから大丈夫だなって、とんこみたいな子に育ったらいいなって思ったの」
そう、言った。
まじかぁ……。めちゃくちゃ、うれしい。
泣きそうだった。
 
 
私は、正直、ほしいものは無い。
他人になにかを強く望むようなことも無い。
世の中に大きな期待もしていない。
なんなら、生きること自体に意味があるとも思えていない。
そんな、ふわっふわとしている部分がある。
他人の行動も、気持ちも、そんなに簡単にどうこうできないから自分が動く、変わる、感じる。
その中で、なにか楽しい、いいな、と思えるものを作っていきたいし、誰かとそれらを共有できる瞬間があれば、それでしあわせだと感じていた。
絶対的な無力感の上にある、小さなしあわせを、ベーキングパウダーやらを加えてふくらませて、おいしいホットケーキのように喜んでいた。
けれど、今日あらためて気づいた。
多分、私がほしかったものは、形のあるものじゃない。
目に見えない、自分だけでは作ることのできないものだ。
自分だけで作れないから、手に入れるのがむずかしいから、
「ほしいものは無い」
というふりを、続けてきた。
私のほしいものは多分、
「自分の存在意義」
だ。
しかもそれは、自分の大切な人からほしいのだ。
1つや2つじゃなく、ほしいのだ。
想像以上に、欲深いのだ。
それを今日、幼なじみから、大きな存在意義を1つをもらった。
あと何十年かは生きて行けそうな、大きな1つだ。
うれしくて、気づいた。
私も、相手をどれだけ大切に思ってるかということに。
自分ではどうにもできない、変な名前だと思っていたけど、ちゃんとその通りの方向へ進めていた。
母のつけた名前は、先に私の未来を決めてくれていた。
自分で選べない出会いでも、選んでいく出会いでも、私は友だちに恵まれていると感じることができた。
まだまだ、未熟な部分でうまくいかない人間関係もあるが、これからは闇雲に不安を抱くのはやめようと決めた。
母さん、父さん、最初のプレゼントをありがとう。
すごく遅いけど、今日、やっと自分の名前を、好きになれました。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【9月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜《9/6までの早期特典あり!》

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事