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メディアグランプリ

英語はしゃべれませんが、何か。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:河野裕美子(ライティング・ゼミ平日コース)
 

「いいんだ。君、英語が分からないんだね」と英語でつぶやき、半分困ったように微笑んだおじさん。
私は彼の言葉に、ひざから崩れ落ちそうになった。
 

時は私が大学4年生。○十年前の話である。
 

 貧乏旅行からの帰り道、ちょっとノスタルジックな気分に浸っていた、忘れもしない、ヒースロー空港でのできごとだ。
 手荷物検査の後に、職員のおじさんにちょっと話しかけられた。
 とっさのことで、きょとんとしたら、冒頭のセリフを吐かれて、『行っていいよ』と言わんばかりにしっしっと追っ払われたのだ(ほんとはもっと親切だったかも)。
 おっさん! 一体、私が、何年間、英語を勉強してきたと思っているのだ!
 中学3年間、高校3年間、やっと英語から逃れられると思ったのに大学で2年間、おまけに専門課程に入ったら読まされる論文はたいがい英語だ!
 ゆうに10年間は英語をやっているわけですよ!
 それなのに「英語分からないんだね」って!
 ……はい、ごめんなさい。英語分からないです。
 

 突然英語が分からなくなった。
 高校入試でのことだった。
 それまでは、はっきり言って英語は得意科目だった。
 単語は覚えればいいだけ。
 あとは雰囲気で、何となく解ける。
 そんな感じで、英語はテストの得点源だった。
 自信を持って臨んだ高校入試の英語科目。問題文をとりあえず流して読んでみて……。
 ……何だこれ。この質問は何を言っているのか。
動揺が隠し切れず、アルファベットが歪んで見えた。
初めて「英語が分からない」と思った。
これまで、何となく分かったような気になって、英語の基礎ができてなかったせいだ。
 

それからの人生の「英語」は、苦行でしかなかった。
高校に入ったら、英語は文法中心で、おまけに、覚えなければならない単語数は半端ない。
次から次へと新単語が現れ、昔出会っていた単語が忘れ去られていく。
それなのに突然、ひょっこりはんのように、小テストに顔を出したりするのだ。
英語には、「理系」も「文系」もない。
数学が苦手だったら「私は文系だから」と、数学の無い世界に逃げることができるが、英語は文系だろうと理系だろうと、どこへでもついて来る。
まるで、居酒屋で嫌いな「お通し」が出たようなものだ。断れない上にお金まで取られて、腹が立つったらありゃしない。
今後のグローバル社会に対応するために、って本当にそんな社会はやって来るのか?!
少なくとも私は、今まで仕事で英語が必要だったことはない。
不便だな、英語が話せたらな、と思ったのは海外旅行した時くらいだ。
だいたい、こんなにAIが発達してきてるんだから、翻訳機能付きインカムが発売されるのは、そう遠い未来じゃないんじゃないの?
ドラえもんの道具、「ほんやくコンニャク」ができる日が!!
 

…… 分かってます、負け犬の遠吠えだということは。
苦手意識から、英語にとんでもないコンプレックスが生まれ、英語がしゃべれる人がうらやましくて仕方ない。もう、後光が差して見える。
わが子は、私の遺伝子を見事に受け継ぎ、2人とも英語が苦手だ。
そのわが子を「英語からは逃げられないんだからね! 苦しくてもやるしかないんだよ!」と叱咤激励し、毎朝ラジオ基礎英語を聞かせたりしている。
英語に憧れがあるから、勉強したいと思うのに、苦手な気持ちが先に立って、親子ともども、英語はやっぱり苦行でしかない。
だけどこれ、教育としても良くない方向じゃないだろうか?
 

以前、10代の中国人の女の子たちと関わったことがある。
私は中国語も話せないし、彼女たちも中国語しか話せないので、通訳さんがついている。
彼女たちが、お土産として家族に化粧品を買いたいと言うので、ドラッグストアに買い物に行った。
彼女たちは、あれこれ化粧品を手に取ってみながら、当たり前のように店員さんに声をかける。
店員さんも中国語は分からなかったので、通訳さんが頼りだった。
彼女たちは次第に店のあちこちに散らばっていき、その先々で店員に尋ねるので、通訳さん一人では足りなくなって、店員はすっかり困っていた。
彼女たちは『なんで中国語が分からないの?』と言わんばかりに、ちょっとふくれっ面になっていた。そのうち、偶然にも日本在住の中国人を発見し「保湿力はどうなのか」など、いかにも女子な質問を繰り広げていた。
その質問、ちょっと中国語ができるくらいじゃ答えられないけど(笑)。
そして、堂々とした彼女たちを見ていて、気がついた。
「分からない」ことは、ちっとも恥ずかしいことじゃない。
 

英語が苦手なのは、英語の授業が嫌だったからだ。
みんなの前で間違って、恥をかくのが嫌だったし、テストの点数が取れないのも悲しかった。
日本人が英語をしゃべれないのは、間違ったことを言うのが恥ずかしいからだ。
でも、どんどんしゃべって、間違いを訂正してもらわないと、英語はうまくならない。
テストの点数が低くたっていいんだ。そこから勉強して点を取れるようになるために、テストはある。
私は「contribute(貢献する)」のアクセント位置を完璧に覚えているが、それは高校の時の英語の授業で、田村くんが大声で3回も間違えてくれたからだ。ありがとう、田村くん。
 

わが子のお尻を叩いてばっかりいないで、私もまた英語の勉強を始めようかな。
私が英語を話せるようになるのが先か、ほんやくコンニャクができるのが先か、勝負だ!
 
***

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2018-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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