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メディアグランプリ

月下美人の「今」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Hanao(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
いつも行っているビアバーでQueenのライブ映像を見る機会があった。カウンターで、Rさんという隣の席に座った女性(おそらく私の親ぐらいの年齢)がリクエストしたからだ。普段は、80年代から90年代の曲が流れていることが多いのだけれど、その日はそこからQueen一色になった。マスターもご機嫌に歌っていて、楽しい雰囲気の夜だった。
 
私にとってQueenはリアルタイムのアーティストではない。でも、強烈な個性と、狂気と言えるほどのエネルギーに包まれたQueenという存在や、フレディ―・マーキュリーというカリスマがいたことは知っている。今だって、曲はありとあらゆるところで使われているから、知識のないわたしでも代表曲と呼ばれるものはいくつか知っている。いまは、「ボヘミアン・ラプソディー」というフレディ・マーキュリーの人生を描いた映画が公開されていて、ヒットしているらしい。
 
Rさんは、Queenの日本公演、武道館のライブも見に行ったことがあるという方だった。高校生の時にお年玉を貯めて、親に行かせてほしいとお願いして行ったライブ。
 
「亡くなって、こんなふうに伝説の人になるなんて、その時はまさか思ってなかったんだけどね」
 
「本当ですよね。行けてよかったですよね。私も母をポール・マッカートニーのライブに連れていきたいとずっと思ってるんですけど、チケット代も高いし、なかなか……」
 
「でも、そう思ってるなら親孝行と思って連れて行ってあげたほうがいいですよ」
 
ビールを飲みながら、そんな会話をした。
 
先日、HikakinとSeikinの兄弟YouTuberが新曲をリリースした。彼らは歌手でないけれど、作詞作曲は兄のSeikinが手掛け、歌い手としては2人で活動する。今回リリースした曲は「今」というタイトルで、「今この瞬間を大切に生きよう」、「もし、明日死ぬとしたら、今日何をするか?」というメッセージを込めたそうだ。若い人たちに大きな影響力を持つ、トップYouTuberがこのような前向きなメッセージを発することはとても意味がある。その証拠にミュージックビデオのコメント欄やTwitterを読んでいると、たくさんの若者がそのメッセージを受け止め、そして元気づけられていた。
 
そして、幡野広志さんという写真家。最近、彼のブログと写真を拝見した。昨年、末期ガンと診断され、余命3年と宣告された35歳の写真家。まだ幼い息子さんの写真を撮りながら、家族の方々と「今」を生きている。私なんかが軽々しく言えることではけっしてないのだけれど、その写真はとてもあたたかくて、力強い。あまりに美しくて、やさしくて、涙が流れてくる。その美しさや優しさはプロカメラマンの力量とはまた別のところにあるような気がする。「今」この瞬間をまっすぐに見つめ、切り取っているその写真は、幡野さんがそのものをどのように見ているかがよくわかるのだ。
 
私たちには、今しかない。
 
その今という時間は、夜に咲き始めて、夜明け前にしぼむ月下美人のようなものだ。
 
私も、のんきに明日のランチのことを考えたりするけれど、正直言って自分に明日が来る保証は厳密には、ない。そういう意味で、私たちはみんな、月下美人のような刹那を生きている。
 
現に、Queenのフレディ―・マーキュリーは45歳で亡くなった。
だから、武道館でのライブはもう2度と行われないし、私たちが彼のライブを見ることは決してできない。
当たり前だけど。
 
そう考えると、もし来年またポールのライブがあったとしても、私も母も来年元気で行けるかなんて誰にもわからないし、もちろん、ポールが来られなくなることだって充分ありえる。
私は、Rさんが言っていたこの言葉の意味をもう少しおもく受け止めないといけないような気がした。
 
「でも、そう思ってるなら、親孝行と思って連れて行ってあげたほうがいいですよ」
 
チケット代が高いなんて、別に大したことではない。100万するわけじゃないし。私が洋服を買うことや外食するのを少し我慢すればいいだけだ。母と一緒にポール・マッカートニーのライブを観に行くなんて、洋服を買うことよりも、ずっとずっと有効なお金の使い方なはずだ。私は何をぐずぐずしていたんだろう?
 
今読んでいる「ホモ・デウス」という本には、これから人類が「不死」を目指す方向に動いていく、ということが書いてあった。平和になった人類が次に目指すのは、究極の「生」らしい。
でも、人がずっと生きていることを保証されているなら、Hikakin&Seikinの「今」という歌は生まれただろうか? 私は次回のポールのライブに母を連れて行こうと思っただろうか? 幡野さんのファインダーを通してみる「今」に共感できただろうか?
 
バーから帰ったあと、スマホを見ると、facebookのタイムラインに「ボヘミアン・ラプソディー」を見た人の感想が流れてきた。そのコメントは熱量があり、私をそこに導くようだった。
 
私がその日に見聞きしたQueenの話と音楽、タイムラインに流れてきた映画のコメント。そしてたくさんの「今」にかかわる話。それを見聞きしたことは、きっとただの偶然ではなく、シンクロニシティと呼ばれる「意味のある偶然の一致」なのだと思う。
私がいま、受け止めるべきメッセージがそこにあるから目にしたのだ。
 
まずは、映画を観に行こうか? 誰かを誘おうか?
 
これだって「今」しかできないことだ。月下美人のつぼみは朝にはもう閉じているのだから。

 
 
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2018-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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