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メディアグランプリ

華道は私の健康診断


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:吉田 倭子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
華道を習っていると言うと、女子力を磨くのですかとか、高尚なご趣味ですね。という反応をされることがある。正直そんなつもりはない。華道を習い始めてからも、相変わらず粗忽な性格は変わらないし、日本の伝統文化やおもてなしを学ぼうとした訳でもない。
けれど、一月に2回のペースの稽古の日は、忙しくてもなんとか時間を作って通っている。華道を始めた切っ掛けは、茶道を習っていた先生に「華道も教えているから、吉田さん。あなた見学に来なさい」 と言われたから。言われるままに見学に行き、そのまま教室に通うこととなった華道教室ではあるが、通いだして3年が経つ。まあ、続いているのだから好きなのだと思う。以外なほどに長続きしている理由はなぜだろうと我ながら疑問に思っているところだ。
 
いつも教室に行くと先生から使う花材の指示をされ、花器を選んで花を生ける。大体、稽古で使う花材は3種類だ。先日の教室の花材は、フトイ、アンスリウム、カスミ草。「今日のテーマは構成です。まずこれで構成しなさい」 と言われながら、フトイとホッチキスを渡された。初めて華道を習うまでは、華道のメイン。ご馳走は、この花材の中の一番の華やかさのある花材。この日の花材で考えればアンスリウムなのだと思っていたのだが、華道のメインは実は、枝もののような全体の構成を作り出す花材だ。メインの花材で、人の目を引き、全体の動きを決定し、印象づける。その作品の大部分がメインの花材で出来上がる。後の花材は、正に花を添え、華やかさを作り出す材料となる。枝もののなかったこの日は、フトイで構成を作り出す必要があった。フトイは、1m以上ある細長い棒状の植物なのだが、そのままで使うのではなく、撓めたり、折り曲げたり、丸めたりと、様々な形を作り構成を作り出す材料となる。
 
枝ものであれば、枝ぶりの良いものや、面白みあるものなど、素材の良さを生かしながら造形を作り出していくこととなる。この枝がこっちを向いていれば、若しくはもっと太ければもっと格好良くなるのになどと、あるものを生かして生けることは構成の難しさの一つだ。そして、フトイのように同じ形をしたものを使って、様々な形を作り構成をするのもまた別の難しさがある。形は、ホッチキスやセロテープ、針金など様々なものを使って思い思いの形をつくれば良い。けれど、西洋の様な対象の美、シンメトリーの世界ではないから、ただ同じ形をつくっていては話にならない。工夫をして様々な形を作り出していき、最終的には、それを組み合わせることで、人の目を引き、全体の動きを決定し、印象づけ、作品としての大枠を完成させることのできる材料をつくる必要がある。0から作り思い通りにできるからこそ、その自由度に迷う難しさがある。
作品を上手く作り上げるには、構成が上手くできていることは必要不可欠だ。そして、素材を生かして構成する、若しくは思い通りに0から作り上げ構成する難しさをクリアするには、経験はもちろんだが、少なからず感性とかセンスといったものが必要なように感じている。
下手なりにも何年か習っていると花器の大きさに合わせて、全体の高さはこれぐらいが適当であるとか、花材の生け方のパターンなどを覚えて、無難に生けることが出来るようになってきたように思う。けれど、その無難に生けた時ほど詰まらなく、面白みのない作品はない。この枝ぶりがいいから前に生けようかとか、この葉とこの葉を撓めて絡めてみたら面白い形がつくれたとか、生けながら思いついたその試みは成功するばかりではなく、恰好付けようと色気を出しすぎてイマイチだったり、全体として何が作りたかったのかわからない作品になることもある。けれども自分の感性にヒットしたものを掴み上げながら、クリエイトすることを楽しめた時はなにより楽しい瞬間となる。
 
そうして作品を作り出そうとすることには、実はパワーが必要だ。
以前、教室で、お花を生ける時、花材を何処にどう生けたらいいか迷うばかりで作りたいものは定まらず、剣山にやっと刺せたかと思えば刺した花材が倒れてきて……と、時間ばかりかかる日があった。教室でご一緒した先輩が、「疲れているんじゃないの? 集中力が続かないと生けられないものよ」 と教えてくださった。そうして思い返してみると確かに出来上がった作品には、どうやらその時の自分の現状が現れる。仕事にくたびれ果てているときに生けた作品は、集中力に欠けるから作りたいものが定まらず、花材をどこにどう生けたらかもわからなくなる。疲れているから、手にも力が入らず、剣山にしっかり生けることができない。その一方で、調子の良い日は、何気なく始めに生けた枝が、全体の構成の方向性を決定し、そのまま構成を作ることに成功する時もある。
そのことに気づいてからは、お花を生けることで、自分の現状を把握するようになった。健康診断替わりだ。仕事に忙しくてもお花が生けられればまだ元気。なんだかしっくりいかない時は自分が無理していないか、気持ちの余裕がなくなっていないか振り返ってみる。改めて考えてみると最近イライラしがちだと気が付いてみたり、しばらく不摂生をしていたなと反省してみたりする。
 
一方的に「見学しなさい」 と言われて始めた華道。けれども、いつの間にか、花を生ける楽しみが私の心の中に入り込んでいることに気づかされる。花に触れることで、自分の中の感性に触れ、そこから作品に仕上げていく過程で自分の遊び心や創作力、可能性に出逢うことができる。そして、仕事で忙しくても、休みの日も何かと興味の引くものに手を出してスケジュール帳をいっぱいにしがちな私にとって、忙しいときにこそ「要注意」 と作品は警告サインを明確に出してくれる。どちらの意味でも華道の時間は自分と繋がる手放せない大切な時間となった。
 
 
 
 
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2019-04-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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