メディアグランプリ

自家製の梅干しが与えてくれるもの


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小林千紘(ライティング・ゼミGW特講コース)
 
去年の6月、私は初めて自家製の梅干しを仕込んだ。
きっかけは、友人のY子が作る梅干しを食べたことだった。
 
友人のY子はみそや梅干し、干し芋までも自分で作る。
買うものだと思っていたものを自分で作っていることが衝撃で、
初めて話しを聞いた時は、
昔の暮らしの伝道師にでもなるのかと思った。
 
スーパーに行けば買えるものをなぜ作るのかが分からなかったのだ。
Y子は言う。
「自分で作った方が塩分を調整することができたり、
風味を変えたりできるので面白い」
それを聞くと、少し気になる。
でも、実際に作るのは大変そう。
その時は、様々な手間をかけるであろう作り方を教えてほしいとは言えなかった。
 
Y子と仲良くなっていくと、彼女の家でご飯を食べることも増えていた。
すると、彼女が当たり前のようにみそや梅干しを仕込む姿を目にする。
季節を感じ、その季節にあったものを仕込んでいく。
自分の仕込んだみそで味噌汁を作り、
自分の仕込んだ梅干しをご飯のお供として食卓に並べる。
ご飯を食べた後には、冬に作った干し芋が出される。
シンプルだが、スーパーのみそとは違う深みのある味噌汁と
二種類の味が楽しめる梅干しは食卓をとても豊かにしていた。
少し羨ましくなった。
私もこんな豊かな食卓を作りたい。
 
そう思っていたある日、
友人を集めて、Y子が梅干しの仕込み方を教えてくれることになった。
梅干しを仕込むのに、手間がかかるのはわかっている。
でも、みんなで仕込めば楽しく仕込めるはず。
そう思って私も一緒に梅干しを仕込むことにした。
 
私がY子の家につくと、台所には見たこともない量の青梅があった。
梅干しは青い梅から作るらしい。
今日は梅干しの仕込みを習得しよう!
気合を入れる。
まずは、皆で青梅を洗い、くちというヘタの部分を爪楊枝で取る。
その後に、水気を拭き取った。
くちを取る頃には、おしゃべりが始まる。
昔の人もこうやって、
近所の人と一緒に話しながら、梅干しを仕込んでいたのだろうか。
話の尽きない私達にY子が言う。
「みんな少なめに仕込むから、今日はジップロックを使うよ。
ジップロックに梅、塩、梅、塩の順番で入れて、
あまり空気が入らないようにジップロックの口を閉じて」
皆言われるままに作業する。
「何日かしたら梅酢っていうのが出てくるから、
毎日塩と梅がまんべんなく触れるように振ってね。
じゃあ、片付けてごはん食べようか!」
え?! 終わり?
私の気合もあっけなく、作業は終わった。
その後は、ご飯を食べて、みんなでDVDを見て過ごした。
 
Y子から、梅雨がすぎたらまた連絡すると言われた帰り道。
私は衝撃を受けていた。
ものすごい手間と時間がかかると思っていた。
だからみんな作らないのだと。
それが、あんなにも簡単にできるなんて!
Y子の作っているものを思い出す。
みそも干し芋もY子に言わせれば、簡単だと言っていた。
言われた時は、まさかと思い信じていなかったが、
本当に簡単なのかもしれない。
簡単にあの豊かな食卓を作れるのなら、他にも作り方を教えてもらおうか。
でも、まずは梅干しを完成させよう!
想いを巡らせながら、家路についた。
 
梅雨が過ぎるまで、梅の変化が楽しくて、
ジップロックの袋を振る。
梅雨の間、こんなにも家に帰るのが楽しみだったことはないかもしれない。
塩は溶けたか?
梅は腐ってないか?
毎日変わる袋の中を見て、梅雨があけるのが楽しみで仕方なかった。
 
梅雨があけると、Y子から連絡がきた。
天気がいい3日間、竹ザルに広げて干すのだという。
もちろん、竹ザルなんて古風なものはもってない私は
ザルの上にキッチンペーパーを敷いて代用。
早く梅干しの完成した姿を見たいと思い、連絡がきてすぐ干した。
3日後、Y子から連絡が来る。
面倒くさがりの私を心配していたのだろう。
一言こう言った。
「3日間干せた?
それをびんに入れて完成だからね」
こうして私の初めての梅干しは完成した。
完成した直後、嬉しすぎて食卓に毎回出していたので、
私の梅干しはすぐになくなってしまった。
でも、やっぱり自分で作った梅干しは特別美味しく感じて、
何気ないいつもの食卓が豊かになった気がした。
私は、今年の6月も梅干しを仕込もうと思っている。
こんな簡単ならもっと早く作っておけばよかった。
自家製のものを食べることは、
自分の身体のことを考えてご飯を食べているような気持ちになる。
毎日一つだけでもそんな気持ちにさせてくれるものがあると、
食卓だけでなく一日一日も豊かになっていく。
少しずつだが、豊かな食卓と毎日を作っていけることが今の私の目標となったのだ。
 
 
 
 
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2019-05-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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