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メディアグランプリ

酔った勢いでホノルルマラソン


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吉田 倭子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
忘れもしない平成30年11月1日、とあるセミナーの後の懇親会で、私は、Mさんからホノルルマラソンの話を聞いていた。いわずと知れた、ハワイのオアフ島で毎年12月の第2日曜日に開催されるマラソン大会だ。Mさんは、ここ数年仲間と一緒に毎年ホノルルマラソンに参加している。残念ながら、今回は仲間がみんな仕事などの都合で行けないため「今年は一人で行ってくる」 といいながら超、楽しみそうだった。
 
日本国内のマラソンは大抵6時間の制限時間が設けられ、申し込み期間は2、3か月前だ。そして、参加定員が設けられているため、東京マラソンもそうだが、人気のある大会は抽選になったりする。
けれど、ホノルルマラソンは、もともとハワイの観光シーズンオフの12月に観光客を呼び込むために開催されるもので、日本のように制限時間もないし、参加定員もない。そして、開催直前までエントリーが可能だし、各旅行会社からホノルルマラソンのパックツアーも出ている。
 
ホノルルマラソンのスタート時間は、朝の5時。夜明け前の空に打ち上げ花火が上がり、スタートを知らせる。クリスマスイルミネーションが輝く街並みを横目に、キロ8分位のペースで走っていくと、カハラ地区の下り坂にさしかかるのが7時頃。ちょうど夜が明ける頃だ。高級住宅街からコーナーを曲がると、突然視界が広がり、海までまっすぐ続く坂になる。坂の向こうに見える太平洋からはちょうど朝日が昇り始める。絶景ポイントだ。
なにより、初心者へのおすすめポイントは、制限時間がないことだ。最終的には、歩いても完走できる。
たいがい昼頃にはゴールするから、そのあとはみんなで打ち上げだ。マラソンで乾いた喉にぐいっと飲むビールの旨さといったら、もう、このために走っているといっても過言ではない。
ちなみに、フルマラソンに自信がなければ、10Kラン&ウォークがある。これも朝5時スタートだ。10kmだから、歩いても8時までにはゴールする。マラソンほど疲れないから、後は、ホノルルの街をゆっくり観光をすればいいだろう。
 
そんなホノルルマラソン愛好者Mさんの絶妙トーク。
なんといっても説明してなんぼのお仕事の方なので、まぁ~お話上手。
走った後のビール目的といいながら、マラソンにやみつきになっておられるのを感じる。
マラソンにはそんな魅力があるらしい。やみつきキャベツならぬ、やみつきマラソンといったところか。
 
懇親会のメンバーで同じ席を囲むのは私とMさんとお姉さまが2名。お二人とも変に気を遣うことなく自然に接することができ、娘のように可愛がって下さって、気の利かぬ娘に逆に食べ物を取り分けて下さる。気を遣う仕事の飲み会とは異なり、旨い料理を食べ、ビールを飲み、私はただ楽しく上機嫌に酔っていた。
カニスプーンでほじほじしながら、メインのカニ料理に舌鼓を打ち、ビールはもう何杯目になっていただろう。
10Kラン&ウォークがある。のくだりのあたりだったか「じゃあ、私も来年行く!」 と言っていた。
Mさんと団結の固い握手を交わし、上機嫌でビールをくいっと飲み、ふと止まった。
あれ、私ホノルル行くって言ったね。え? 仕事休めるの? 12月って結構忙しい時期だよ? そもそもジョギングさえしたことないよ?
 
まさに酔った勢いとはこのことだ。
 
しかし、Mさんは続けて言った「吉田さん。大丈夫。急に走るのは体を痛めるけど、練習すれば大丈夫。休みも初めから皆に言って休めるようにしとくんです。ホノルルマラソンに行くって言うとなぜかみんな応援してくれますよ」
 
仕方がない。酔った勢いとは言え、言ってしまったのだ。職場にホノルルマラソンに参加すると申告して行くとしても、たかだか10kmのために行くとは言えないだろう。ここは腹をくくって、ホノルルマラソン42.195kmを走りに行くというしかあるまい。
すでに、私はこの時点でMさんのやみつきマラソンの病に感染し、潜伏期間に入っていたのだと思う。
 
しかし、一人孤独に練習できるとは思えなかった私は、後日、近くの運動公園のスポーツ教室でランニングクリニックというクラスに申し込んだ。3月に地元であるマラソン大会を目標に走る指導をしてくれる12月から3月上旬までのクラスだ。
まず初日、約1時間程度、ランニングフォームの指導を受け、グラウンドをキロ8分ペースで40分走った。同じクラスの人はみんな最低でも週1回走っている人ばかりだ。息が上がる。ただ、終わることだけを考えてついていく。もう、ついていけない。というところで40分が過ぎ、その日の練習は終わった。
翌週、初めにグランドの外周を軽く1周ジョギングをする。みんなにとっては軽いかもしれないが、私は息が上がる。そして、準備運動。ランニングフォームを軽く確認して、グラウンドの外周約800mをキロ7分40秒前後で4周2セット走る。2セット目になるとみんなのペースから遅れだす。しんどくてもみんなについていくように声を掛けられながらなんとか走り、その日の練習は終了した。
この調子で、12月は毎週1回の練習で約6kmを走った。
正月中は、自主トレで2,3日に1回約6km走り、正月明けに久しぶりにクラスへ行くと練習のノルマが10kmになった。とにかく無心で走り、なんとか10km走り終える。
 
毎週10kmの練習を2、3週間繰り返すうちに調子にのった。
なんだ、2か月で10km走れるようになったじゃない。
多分この辺りで、既にやみつきマラソンの病は発症していたに違いない。
しかし、こうして酷使しまくった普段まったく運動をしないデスクワーカーの私の体は悲鳴を上げ始めた。
 
2月。膝が痛くなった。
練習をやめて体を休める。膝の痛みが軽くなり練習を再開しようとしていたら、次は腰が痛くなった。ぎっくり腰ではないけれど最早動きはロボットのよう。身動きするたびの痛む腰に走るどころではなかった。
 
そんなこんなで、腰の痛みが治ると、3月。仕事は怒涛の繁忙期に突入した。
休日出勤をしてなんとか業務をこなす。練習に行くどころではなくなり、家には寝に帰るだけの日々を過ごした。
 
4月。まだ繁忙期は終わらない。
家と職場の往復に明け暮れながら、天気いいな。ランニング日和だ。と思っている私に気づく。病はすっかり根付いていた。
 
そして5月になった。
近くの運動公園のスポーツ教室のジョギングのクラスへ申し込む。
膝を痛め、腰を痛め、自分の体力と筋力の無さを痛感したにも関わらず、また週末のたびに走ろうとする自分が自分でちょっと分からない。ホノルルマラソンは酔った勢いだったはずなのに、なぜか走らない自分にソワソワしている。やみつきマラソンの病が疼くのだ。これは、なかなかに強力な感染力だ。
Mさんから私へと病は確実に引き継がれた。
 
 
 
 
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2019-05-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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