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メディアグランプリ

病とセカンドオピニオン、そして奇跡が起こった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:佐藤薫(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「ママ、おじいちゃんの座ってたとこ、血だらけだよ」
家族旅行のユニバーサルスタジオでランチをしている時、娘に言われてイスを見たら、そこは血まみれだった。
「え? なんで? なんで? どこからの血なの?」
と半ばパニックになったところにトイレから父が戻ってきた。
「お父さん、血、出てない? 大丈夫?」という私に対して、父はきょとんとしている。
しかし、椅子についている血の多さをみて自分でもビックリしたようで固まってしまった。
血がどこから出ているのかはすぐに分かった。
ズボンが血まみれなのだ。下血していた。
本人はトイレに行ったのに全く気付いていないが、これはただの下血じゃないなと私たち家族はみんな思っていた。
せっかく、神奈川県からユニバーサルスタジオまで来たのだから、主人と子供たちだけ遊んでもらって父を連れて私はホテルに戻った。
今、思い出してもその時の衝撃は忘れられず、お昼までにいくつか乗ったアトラクションの記憶が全くない。びっくりしたのと同時に何か得体のしれない不安に襲われた日だった。
しかし、その悪夢の始まりに思えたこの出来事は、父の持っている運の強さを表す出来事だったのだと2年たった今は思う。
何とか車で神奈川県に帰り、地元の病院で検査を受けた。結果はGIST(消化管間質腫瘍)。消化管の壁にできる悪性腫瘍の一種(肉腫)が大腸にできていた。
しかも初期のガンまで大腸にできていた。
孫たちと初めてユニバーサルスタジオに行って歩きすぎてそこから出血していたのだ。
毎年、大腸がんの検査はしていて異常はなかったのに。
大腸は大腸カメラを入れないと本当に悪いところは見つからないということ。それなら検査の意味がないのでは、私は怒りを覚えた。
それから2年間は病との戦いだった。
最初にGISTは大腸にできているということ、がんよりは転移しにくいが、10万人に1人の発生で希少ガンといわれていることを説明された。そして何より父がショックを受けたのは手術をしても人工肛門になると告げられたことだった。
しかし、自分の父ながらすごいなと思うのは、人工肛門しかないと言われたのに父は納得しなかった。自分なりにインターネットで情報を集め、薬でGISTを小さくしてくださいと先生に懇願した。最初は薬を使うことを渋っていた先生も学会で小さくなった症例を聞いたということで薬を使う治療に納得してくれた。
投薬治療は思った以上に副作用が強く、抗がん剤と同じくらいに不快で苦しそうだった。
しかも薬が高額で、いくら高額療養費として戻ってくるとはいえ、歳をとってお金がないという理由で医療が受けられない人もいるだろうなと思った。
治りたい一心で1年薬を飲み続けて、ある程度、GISTは小さくなったが完全に取りきるには、やはり人工肛門にするしかなかった。
先生もさすがに、そろそろ決断をしてほしいと手術日を決めようと言ったが
「先生、セカンドオピニオンで他の先生にも診てもらっていいですか?」父はいった。
病院の先生は嫌な顔をしていたが、ここまで副作用に我慢した父が納得するためにもセカンドオピニオンをお願いしてみようと私は言った。
そこからが、まさに奇跡の連続だった。
GISTの研究をしている病院を友人から教えてもらい、学会でも有名な先生に診てもらうことができた。
「これなら、手術で取れるよ。人工肛門は一時的になるけどまた、戻せるよ」とその場で即答してもらった。
「だけど、僕が手術するよりもっと上手い先生がいるから、そこを紹介するから」と先生に言われた。
うちからは片道3時間はかかるが、紹介された病院にすぐに予約をして行ってみた。
本当に大丈夫なのかと不安に思いながら診察を初めて受けた日。
「うん、大丈夫。手術自体は難しいものだけれど、全く元通りに治るから」
と即答してもらった。
今まで迷路の中にいるみたいだったのに、先生の一言で一気に視界が明るくなった。
そして腹腔鏡手術でGISTはきれいに取ってもらって、一時的に人工肛門はなったが、今は閉鎖して元通りの生活をしている。
思えば、ユニバーサルスタジオのあの日、出血しなければ父は病気に気づかなかったかもしれない。あれが奇跡の始まりだったのだ。
今回のことで私は医療技術の格差を思い知らされた。最先端の医学では取りきれる病巣も末端の医療ではあきらめないといけないということもある。
先生を信頼してお願いするのは当たり前と思われているかもしれない。
しかし、自分の身体なのだから疑問に思ったことはとことん調べて、どんどんセカンドオピニオンを受けるべきだと私は思う。
ただ、セカンドオピニオンを受けるには保険がきかないので、結構な負担だ。この2年間父と一緒に病院へ通いながら、いつも医療費の事を考えていた。
地域の医療技術が劣っているということではないが、誰もが病気になった時に自分が納得できる医療を受けられたらと切に願う。
 
 
 
 
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2019-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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