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メディアグランプリ

空海とマーチンのギター


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吉本哲也(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
先日、京都で、仏教のワークショップに参加しました。
 
そのワークショップは講師の和尚さんが、空海の教えをとてもわかりやすく解説してくれるので毎月、極力参加するようにしています。
 
今回は、講師からおもしろいワークがだされました。
 
「あなたは明日から一か月後に死ぬとします。いまから、1日1行、30日分の日程表を渡しますので、この一か月、毎日何をするか書いてください」とのこと。
 
一か月後に自分が死ぬ・・・・・・。一か月後。ふむ・・・・・・。
 
皆さんだったら何をそこにどんなことを書きますか?旅行?人に会う?グルメ?
 
私は、薄情なのか、あるいは執着が薄いのか、旅行も会いたい人も食べたい料理も、あらたまって思いつくことはありません。
 
しかし、30日間何もしないというのも情けないので、真剣なって考え、まずは明日何するか、考えました。
 
すると、遺言、葬儀社の手配、祭壇の予算決め、連絡先の整理、遺影の選定、保険やクレジット会社や銀行関係の整理と書き置き・・・といった、超具体的なことがでてきました。
 
次に、膨大な私の本やら趣味のガラクタのことに思い至りました。
一週間くらい、徹底的にメルカリにだして本やら物を始末することにしました。1か月後に売れなかったものは、迷わず即廃棄処分せよ、ということも遺言書に書いておかないといけません。
 
と、そこで、「あ、そや、家族にお礼状を書いておこう」と気付きました。妻や二人の子供たちのおかげで楽しい人生でしたと、ちゃんと書いておかないと後々墓詣りもしてもらえないかもしれない。
 
それから、墓参り、自分の両親、父方、母方のそれぞれの先祖のお墓に、「近々お世話になりますからまたよろしくお願いします」と挨拶に行っておかないといけません。これ大事ですね。
 
遺品の整理もしたし、家族への手紙、あの世への挨拶もすんだ、というところであと一週間ほどあります。あとは何をしよう。ビール飲みながらテレビみて過ごす?
 
あれ? とここで私は気付きました。
 
これって「やっておいたほうがよいこと」ばかり書いてる。せっかく(というのも変ですが)あと1か月で死ぬというチャンス(チャンスというのも変ですが)を頂いたのに、こんな、世知辛い、転勤のときの業務引継ぎみたいなことばかりやっててええんかいな、と思い至りました。
 
そこでもう一度、自分がしたいこと、ないのか、と考えました。そしたら、あったのです、先延ばししてることが。
 
3週間ほど前に、中学生時代の友達との話がきっかで、急に気分が舞い上がって、「1年以内にお客さん15人くらいのライブやろう!」ってことになってたのでした。
 
その日から、物置から40年振りに中学のときから使ってたギターを引っ張りだして弦を交換して、左手も右手もまったく動かない状態から毎日1ミリずつの歩みをしているところです。
 
練習していると、どうしても、いいギターが欲しくなり、いろいろ検討しているうちに名器マーチンD28に行き当たり、それに惚れてしまったのです。でもそのギター、なんと中古の安いのでも〇十万円もします。
 
無理をすれば買えないこともない。でも、もう少し先でいいだろう、この先、余裕ができたらその時手にしよう、と先延ばしにしていたのです。
 
そうなんです。今買うしかないのです。でないとあと30日で死んでしまう私は一生マーチンを買うことができないことに気付きました。
 
そこで、日程表の一番初めに、マーチンD28を買う。と書き込みました。
それと、1年以内にライブをするという目標は、30日後には死ぬので間に合いません。そこで、29日目に「生前葬ライブ」をすることにしました。これはなかなかいいアイデアです。「チケット買っとかないと化けてでるよ!」といえばたいてい買ってくれるでしょう。
 
ということを思いつくと、急に、死への一か月の毎日が輝きだしました。まるで栄光の一か月ように思えてきたから不思議です。
業務引継ぎなんか全部やめて、ギター猛練習!です。もうやる気満々です。
 
人間って、希望をもった瞬間から変われるもんですね。
 
ワークが終わってシェアタイムの時、和尚さんから「今日皆さんが書かれたこと、でも、それ、いま、できることですね」と言われ、なるほどそうだとつくづく思いました。
 
また「皆さんは死ぬとき、周りの人からどういう人やったと言われたいですか?」と聞かれました。
私の回答は「わがままやったけど、おもしろい人やったね」
 
そのワークから5日目の今、私の部屋には、マーチンがあります。空海上人様のお導きです。至福の日々です。やればできるもんです。
 
嫁さんには、怖くて〇十万円もしたギターを買ったとは言えてません。ましてや、そのお金はなかなか相手が見つからない息子の結婚資金の口座から出金したとは口が裂けても言えません。
 
30日後、私が死んで「ご主人はどんな人でしたか」と聞かれた時、嫁さんは恐らくこう答えるでしょう。
 
「往生際のわるい人でした」
 
 
 
 
***
 
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2019-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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