【苦手】は最大の【強み】である
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記事:高田 麻由(ライティング・ゼミ平日コース)
私は人の顔と名前を覚えるのが、究極に苦手だ。
1分前に自己紹介をされていたとしても、忘れてしまうことも多々ある。
よっぽどインパクトがあったり、興味のある話をしていない限り、1日経つと完全にメモリーが消失している。○○交流会、などで、目的なく「自己紹介という会話」や「時間つなぎの会話」をしている場合は特にそうだ。
名前だけならいいが、顔すら忘れてしまうので、
「久しぶり〜!」
と声をかけられても、ほぼ思い出せない。むしろ私からしたら初めましてな気分で「???」があたまを駆け巡る。
「やばい、誰だっけ」
久しぶりです、ということは実際に会っているのだろうし、相手方は覚えているのだろうから、覚えていなかったことで相手を落胆させてしまってはいけない。やばい。しばらくニコニコと笑い、相槌をうったり、話を合わせながら、必死に脳内メモリーを探索する。
お酒が入るとそのメモリー消失度はさらに加速し、同じ人に3回「はじめまて!」と挨拶をし、「いや、3回目だから!」と突っ込まれた。
プライベートな場でならまだいいが、研修ファシリテーターという仕事で名前と顔が覚えられないのは、かなり痛い。「○○さん、今の行動いいね〜!」とか「△△さん、今の発言はどういう意図で言ったの?」などタイムリーに言えないと効果が半減してしまうのだ。また、人事にレポートを出す場合にも「あの、いい行動してた人なんて名前だっけ……」と思い出せず苦労する。
人の顔と名前を忘れてしまう。いや、覚えられない。
笑って済ませられない事態になっていた。
そこで、様々な策を講じた。まずはとにかくメモを取る。人と名前、特徴を書いておく。研修では、名札をつけてもらったり、それを何度も見返したりする。一番効果的だったのは「覚えるんだ!」というスイッチを入れ、脳を活性化させることだった。
そうしていくうちに、なんとなく顔と名前を覚えるコツ、がわかったのか、以前に比べて、その場で人の顔と名前を覚えられるようになった。
しかし、その場が終わるとすっかり忘れてしまう。脳のスイッチが切れると、記憶も消滅し、後日、話題に出たり、ばったり出会ったりしても「誰だっけ?」ということになる。そして、【本文の最初に戻る】である。
「本当に、人の顔と名前が覚えられないんだよね。どうしたもんかね」
そんな話を友人にした時のことであった。
「それって、覚える必要がないってことなんじゃない? むしろ、覚えない方がいいってことなんじゃない?」
は?
どういうこと?
「名前が覚えられないから、「ごめん〜! 教えて!」って、聞くでしょ? テヘペロってやるでしょ? そうやって打ち解ける術を得ているんじゃない?」
なるほど……
そう言われてみれば、大当たりであった。
確かにそうなのだ。思い出せないままにしておくこともできないので、タイミングを見計らって切り出す。
「あの〜……ごめんなさい! どうしても名前が思い出せず、なにさんでしたっけ?」(テヘペロ!)
「あの○○の会で会った、△△ですよ〜!」
「ああ〜! そうでしたそうでした! も〜すっかり忘れちゃってごめんなさい〜! そういえば、あの会の時のあれって……」
テヘペロ感満載であるし、相手方にとっては非常に失礼かもしれないが、こうやって関係性を改めて築くことで、場が和んで話しやすくなったり、思わぬ会話に繋がったりすることがある。
また、そういう角度から考えてみると、常に捨て身で「なにさんでしたっけ?」とアタックをし、受け入れてもらってきたので、人に質問をする、ということに対してあまり躊躇することがない。
知っているフリ、わかっているフリ、をして通すこともあまりなく、「わかりません。教えてください」と聞くことや、自分の弱さを開示することにもほとんど抵抗がない。
見ず知らずの人に質問したり、会話を続けたりすることも得意である。
研修の場でも、参加者から「話しやすい」と言ってもらえる。同僚からは「嫌われないという強みがあるよね」と言ってもらえる。
「これらは、覚えられないことから得た恩恵だったのか……」
衝撃だった。一瞬で認知が変わってしまった。
今まで自分の苦手、マイナス面であると思っていたことが、実は自分に大きな財産を与えてくれていたのだ。むしろ、【そのために顔と名前を覚えるのが苦手だった】のだ。
そうやって物事を見てみたら、すべての認知が変わることに気づいた。
苦手なこと、できないこと、うまくいかないこと、それらが逆に何かをあたえてくれているとしたら? そこから得られるものは何?
苦手やできないことを克服していく、困難を乗り越えていく、ということももちろん大事であると思う。ただ、こんな風に考えたら、マイナス面(と思っていること)ともうまく付き合いプラスに変えていくことができるのではないだろうか。
苦手は最大の強み!
苦手が自分の武器!
それからというものの、日々楽しい。マイナス面を見つけると絶好のチャンス! と、ほくそ笑んでいる。
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