運動嫌いのわたしがジョギングをはじめたら、真逆の自分が現れた。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:なかむらしょうこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「位置につて、よーい、ドン!」
わたしが小さい頃、大嫌いだった言葉だ。なぜかって? 答えは単純。走ることが大嫌いだったからである。
短距離も、長距離も、鬼ごっこも嫌いだった。
運動会なんてもってのほかだ。外野から同級生や先輩、保護者から「がんばれー」と激励の声。
嫌いすぎるから、どうやっても頑張れないし、仮に頑張ってみたところで、結果はビリなのがわかっているから、むしろ、その声援は負担でしかなかった。
好きな場所は、学校の図書館。絵を描くことが好きで、図工の時間は張り切る。まさに文系で内向的。走ることをはじめ、あらゆる運動が苦手で、嫌い。
スポーツマンタイプが集結するクラスの人気者グループは眩しすぎて近づけなかった。
ここで芽生えてしまったのは「わたしなんか……」という、ネガティブ思考。わたしなんかどうせ、走れないし、運動できなくてカッコ悪いし、あの子たちとは友だちになれないし、というかそもそも住む世界が違うし。もう、ネガティブが止まらない。わたしなんてかわいくないし、太ってるし、おしゃれなんかできないし、頭悪いし、音痴だし……。
そんなわたしの今の日課は、ジョギング。10kmほど、近所の河川敷を走っている。かれこれ7年経つ。
本当に、信じられない! 走るのが大嫌いで、体育の授業はサボることばかり考えていて、超文系で超内向的で、ネガティブ思考だったわたしが……。
毎朝、ランウエアに着替え、お気に入りのシューズを履いて、
「走ってきまーす♪」 と元気よく玄関のドアを開ける。
自分で作ったワークアウト用のプレイリストを再生し、「位置について、よーい、ドン!」 と心の中で、スターターピストルを鳴らして走り出す。
まさに、小さいころのわたしとは、真逆の姿だ。大嫌いだった言葉を、毎朝、自分に投げかけている。
ジョギングをはじめたキッカケはシンプルにダイエットだった。お酒が大好きなわたしは、夜な夜なお酒を楽しんでいたのだけど、例によって、運動嫌いだから、飲むだけ飲んで全く動かない。すると、どうなるか、浮腫む・太るのは予想の範囲内通りで、さらに悪いことに、心と頭も冴えなくなってきてしまった気がした。
さすがに、これはマズイ……と危機感を覚える。運動しなくちゃかな……。背中をおしてくれたのは夫だ。陸上をしていた彼が、走り方を教えるから、一緒に走ろうと誘ってくれた。ジョギングなら、お金もかからないし、ダイエットするにはちょうどいいかな……と一歩踏み出してみた。
しかし、そこは超ネガティブ思考なわたし。まわりを見渡すと、かっこいいウエアに身を包み、颯爽と走るジョガーのみなさま。わたしなんかは、あんなにかっこよく走れないし、そもそもダイエットをしていると思われるのが恥ずかしいし、それ以前に、走るって、そうすればいいの?! とこの調子。一歩踏みだしたというと、えい! とやる気が出たみたいだけど、はじめは、いやいやな気持ちが7割以上を占めていた。そして、ひっそりこっそり走り出した。人目を気にしまくりながら、「え、いや、別に~、ダイエットしてるとかじゃないですから。わたし、そんな意識高くないですから。ただちょっと体動かさないとな~って思って」という雰囲気を醸しながら。しかも、ウエアやシューズも買い揃えずに、Tシャツにジーパンにタウン用のスニーカー。走ることが恥ずかしすぎて、ウエアを揃えて、シューズを履き替えてということすらできなかったのだ。ほら、わたしなんか……精神が、歯止めをかけてくるの。
しかし、だんだんと気づいてくる。これでは、走れないし、この格好で走ってるのって、ちょっと急いでいる人か、単に不審者ではないか? と。そうだ、それでは逆に目立ちますから!! と、当時のわたしにもっと早く教えてやりたい。そこで、ウエアを買い揃え、シューズも自分の足に合うものをスポーツ用品店で相談して購入。フォームもいろいろ勉強をして、いざ、再スタート。はじめは500mで、息切れ。しかし、ここで生まれてきたのは「ほら、わたしなんか、やっぱり走れない……」だけではなくて、「くやしい。きっと、まだいける」という気持ちだ。夫も根気強く付き合ってくれた。それから、2km、3kmと距離が伸び、今では10km走らないと、走った気になれないというところまできた。そりゃあ、だって、にんげんだもの、時には、今日は走りたくないな、しんどいなと思ってしまう日もある。そんな日は休むけど、走る気満々の気持ちに反して、雨が降り、走ることができない日のわたしの機嫌は悪い。
数年、続けていると身体についたお肉はまあまあ落ち、それとともに、心と脳も冴えてきて、どんなシーンよりも走っている最中にいろいろなアイディアがおりてくるようになった。走っている姿を誰に見られようが気にならなくなり、実生活においても、人の目を気にしなくなった。別に、人気者グループに入ることができない自分を卑下もしないし、かわいくない、太ってる、頭良くない……と何かと、誰かと比べて生じる悩みは消えていった。「わたしは、わたし」、そう思えるようになった。あんなに塞ぎこんでいた自分が、今では嘘のようだ。きっかけはダイエットというささやかな思いつきで、しかもはじめからやる気満々だったわけではない。嫌いなことに向き合うのは時間がかかるし、苦手なことを続けるのは正直しんどい。だけど、真逆なわたしに出会えた時に得ることは、とてつもなく大きかった。
走ることが大好きです。
最近は自己紹介で、こう伝えている。すっかり、大嫌いが大好きになった。
実は、わたしが今思い込んでいる、わたしは本当のわたしではないかもしれない。
あなたが思い込んでいる、あなたは本当のあなたではないかもしれない。
わたしが嫌いなことは、実は嫌いじゃないかもしれない。苦手なことは、実は苦手じゃないかもしれない。
わたしもあなたもいつだって、スタートを切ることができる。
真逆のわたしに出会うためのスターターピストルを鳴らすことができる。
「位置につて、よーい、ドン!」
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