私の師範は超能力者 -未知との遭遇-
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:吉田まりえ(ライティング・ゼミ 日曜コース)
正座して正面の「開祖」に一礼、「師範」に一礼、「道場」に一礼して、道場に入る。
この作法から古武術の稽古は始まる。
古武術。私の人生の辞書に数カ月前に加わったばかり。それは、本当に偶然だった。数年ぶりに再会した知人と食事に行った時のこと。古武術歴10年の彼女は、その魅力をたっぷりと私に話してくれた。
私は、運動が原因で足が痛くなる悩みをパーソナルトレーニング通いで解消したばかり。
せっかく身につけた正しい姿勢や体の使い方を維持する方法を探していた。彼女の話ぶりから、段々「いいかも」と思い始め、早速、体験に行ってみることにした。
あんな体験に遭遇するとは想像すらせずに。
私の通う大東流合気柔術の道場では、正座して2人1組で向き合う稽古のみを行う。
私の稽古日は、人数は6~8名程度。上段者が経験の浅い人と組んで稽古をする。
稽古の一番の山場は、師範との2人1組の稽古。
約2時間の稽古のうち、時間にして10~15分程。
この短時間の稽古が、古武術の神髄に触れる体験なのだ。
師範は、60代の男性。胸板の厚い、いかにも武人らしく鍛え上げた体の持ち主。
正座して、師範と向かい合う。
師範が両手を広げて、私のほうに向ける。
私は、師範の両手首を強く掴む。
師範の手が私のほうに差し込まれた。
「あれ? 強く握っているのに」と私は思った。
次の瞬間、自分の体の力が抜けたような感覚になった。
「え?」同時に掃除機に強く吸い込まれるように、私の体が上に持ち上げられる。
「えーっ!!」驚きのあまり自分の目が見開くのがわかった。
そして師範が腕を振る方向に体が吸い込まれ続け、畳の上に転がる。
最初にこの体験をした時の衝撃は忘れられない。
何が起こったのか、わからなかった。
師範は、私に何を仕掛けたのだ?
手と体が吸い寄せられるような、あの感覚は何?
同じ場面を、師範と他の人が行う稽古で見るとー
相手に手首を掴まれた師範の腕が、突然、粘着液を出して相手の手をからめとり、師範が相手の持ち上げ、腕を振る方向に軽々と人を倒していく。倒された相手は、体まで粘着液で絡めとられたのか。必死で抵抗を試みているが動けない。
師範の一連の動作は流れるように軽く、腕以外は微動だにせず座っている。
まるでSF映画のワンシーン。
これが、古武術で体得をめざす”気”のなせる技なのだ。
初心者の私でも、”気”を巡らせば、正座している男性の体を持ち上げることができる。
稽古は、”気”を巡らせる練習に始まり、その練習で終わる。
正座して、師範と向かい合う。
私が両手を広げて、師範のほうに向ける。
師範は、私の両手首を掴む。すぐに掴んだ手を放した。
師範の高感度センサーが、私の”気”の巡りが十分でないのを感じ取ったのだ。
もう1度。
私が両手を広げて、師範のほうに向ける。
師範は、私の両手首を掴む。
私の手を師範のほうに差し込む。
「できた! 体を持ち上げよう」私の思惑をよそに、持ち上がるはずの師範の体は重く、私の手は震えている。
師範は、私の両肩を押さえた。
相手を持ち上げようという思惑が私の心に生まれる。心の動きに反応して、肩が上がった。体が力むと姿勢が崩れ、その瞬間に”気”の巡りは切れる。
“気”を巡らせ続けるには、心を無心にして、体から余分な力を抜くことが必要なのだ。
師範の鋭い観察眼は、この微かな体の動きや変化を決して見逃さない。
持ち上げよう、肩を気をつけよう、私の心に思惑が生まれる度に、腰や腕も反応する。
その都度、動きを修正される。動きながら正しい姿勢を維持していくことの難しさよ。
師範曰く「頭で考えない。体で覚える」
繰り返していくうちに、師範の体が持ち上がった。
「?」
何が起こったのか、わからなかった。
あまりに軽く、何かをした気がしない。なぜ持ち上がったのかわからないのだ。
これが“気”のなせる技の正体のようだった。
まだ初心者の身。稽古を積めばもっと違う境地に達するのかもしれない。
単純動作の繰り返しの稽古はシンプルだ。
古武術は、正しい姿勢や体の使い方の維持には、ぴったりだった。おまけに稽古の日は、とてもよく眠れる。”気”を巡らせることが、体によいことはすぐにわかった。
師範の教えもシンプル。
~体の軸を整え、”気”を巡らせる。無心に行えば、無駄な力を使わなくても成せる~
心に響く。
~自分の人生の軸を整え、”気”を巡らせ、どんなことがあってもぶれずに、無心に行動すれば、余分な力を使わずに生きていける~
私は、私の知りえなかった生き方に出会えたようだ。
今日の稽古もSF映画ぶりは健在だ。
師範は2人の男性を同時に相手にしている。1人が師範の右腕を、1人が師範の左腕を掴む。1人でも、2人でも結果は同じ。
見えない”気”を見て、形がない”気”を自在に操る師範。
超能力にご興味ある方は、騙されたと思って是非1度、道場へお出でください。
未知との遭遇体験が待っています!
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