悩める人よ、旅に出ろ!
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:Shima (ライティングゼミ・GW特講コース)
行き詰った時。
そんな時こそ、旅に出ろ! と、声を大にして言いたい。
数年前の出来事だ。
その当時、異常な仕事量を抱えている時期があった。
チームの中に正社員は私一人。あと二人、派遣社員さんがいた。もう二人、正社員がいるはずなんだが……。どういうことかというと、二人とも産休育休中。そう、想像がつくかもしれないが、チームとしてこなさなければならない仕事が一気に私に集中した。
最初はよかった。仕事は嫌いじゃない。むしろ好きだ。しかし繁忙期になってくると状況は一変する。自分が回せないほどの仕事が舞い込んでくるのだ。しかし絶対に休まなかった。休んでもその日にやらなければいけない仕事は消えない。ただ先延ばしにするだけだ。
そしてその考えに拍車をかけたのが、リストラの噂だ。新しい有能な人を社員として入れるためには枠を作らねばならない。ぽつぽつと、長年勤めている人たちの退社のアナウンスがメールで流れる。そういえば私の部署のトップも新しく来たばかり。ここで自分はまだできることを見せないと非常に危険だ。だから休むという選択肢は私には残されていなかった。
そんな自分を追い込む日々が続き、ある日、とうとう限界を迎える。
思考回路が止まり、なにも考えられない。言葉もうまくでてこない。病院には行かなかったが、この状態はあまり働くうえでよくない状態だ、ということだけはわかった。
今日は木曜日。もう限界だ。こんなに頑張ったんだから、いいよね。
もうここで目をつけられたとしても、いいや。そうだったらあきらめよう。
そう思ったら力が抜け、やっとこの一言を上司に言うことができた。
「すみません、本当に今日は体調が悪いので帰らせてください」
その日夕方5時に仕事を切り上げ、(申し訳ないが)翌日も体調不良で欠勤した。
丸2日ほどベッドで過ごしたが、3日目は少し元気になり、近所に散歩にでられるくらいになった。身体は寝すぎたことによって痛かったが、秋空の下で散歩するのは楽しかった。2日間、様々な情報を遮断して寝ていたおかげで頭の中はすっきりした。
それから家に帰った。パソコンに触れられるくらいになったので、目的もなくネットサーフィンをしていた。
その時だ。ある写真が目に飛び込んできた。
石造りの町。砂糖菓子のような建物。
イエメンのサナアだ。
イエメンの建築物は特殊で、イエメン建築とも呼ばれる。まるでおとぎ話に出てきそうな街並みのオールドサナア。砂漠都市シバーム、砂漠の中に白い高層ビルのような建物が並ぶ。私は一気にこの建築物たちに心奪われた。さらに別のサイトを除く。ぽんと出てきたイエメン人の出で立ち。これにもひとめ惚れした。頭には刺繍が施されたターバンが巻かれ、白いシャツ風の民族衣装の上に皆、ジャケットを羽織る。足元はなぜかサンダル。腰にはジャンビーヤと呼ばれる半月刀。浅黒い肌にとても似合っていた。ああ、なんて格好いいんだ。
街並みも、人々の生活にも、古き良きアラビアが残っている。いけなくなる前に一目、この目に焼き付けたい。
「そうだ、イエメンに行こう」
その日からイエメンに行くための綱渡りの渡航準備が始まった。準備期間は3週間。ぎりぎりだ。
現地のニュースのチェック、航空券の手配、情報収集、ビザの手配、現地航空会社とのやり取り、旅をサポートしてくれる現地人との連絡。
私の勤務時間と睡眠時間、その他人間生活(トイレやお風呂)に必要な時間以外は、すべてイエメン渡航準備に充てられた。自分で自分を忙しくしてしまったのだが、仕事の後でも不思議とつらくない。むしろ、楽しい。ああ、やっぱり私は旅が好きなんだ。改めて実感した。
旅は油絵のキャンパスにとても似ている。
古い絵を塗りつぶすかのように、日常生活のもやもやを消すことができる。
絵を描くかのごとく、準備から旅の終わりまでの出来事、ハプニング、思い出を脳裏に残すことができる。
そして出来上がった絵を、日常生活に戻ったとき思い出として、脳裏に色鮮やかに残すことができる。
病は気から、とよく言われる。もしかしたら私の調子の悪さも“気”から来ていたのかもしれない。
苦しんでいたあの時、私は私の手で日常のもやもやや辛さを、自分自身でつぶすことができた。旅に救われたのだ。
旅立ちの3日前、無事に旅行に行ける手はずが整った。ビザも無事降りた。
旅立ち前日、もう、私は元気だった。仕事量は相変わらずだったが、イエメンに行くまでは絶対に倒れたくなかった。旅に出ることが日常の生活を送るための原動力になった。
旅立ち1日前。終業時、上司に聞かれた。
「今度はどこに行くんや」
「イエメンです」
え? という声も聞こえた気がするが、ちょっといろいろ言われてしまうと困るので、長引く前にそそくさと失礼させていただいた。
さあ、明日は出発だ。足取りがいつもよりも数倍、軽くなった気がした。
その後イエメン旅行はどうだったか?とても印象的な旅だった。ここではもう書けないので、その話はまた今度。
今でもあの情景、あった人達、起こったハプニングが脳裏に浮かぶ。
辛くなったらまた逃げ出せばいいんだ。また旅に行くための計画を練ろう。
苦しくなったら、日常生活のもやもやのキャンパスを真っ白に塗りつぶしてやろう。
そしてまた、行こう。新たな思い出になるような絵を描くために。
***
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