ふざけるというタイヤも必要です
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:佐々木 慶(ライティング・ゼミ日曜コース)
「他の人を当たってください!」
大学2年生の私はその提案を断ろうと、語気を荒くした。
提案の主は、大学のサークルの同級生と3年生の先輩達。
聞いてみると、なんでも卒業する大学4年生の先輩達への追い出しコンパで一発芸をやってほしいとのことだった。
「ジャンルは特に問わないから大丈夫だって。それに、滑っても俺たちみんなでフォローするから、問題ないって」
「いやいや、そういうことじゃなくて!」
そんな押し問答を何回か繰り返したが、どうやら先輩達は折れる気はないらしい。
「うーん、みんなにはいろいろお世話になってるしなー……」
しぶしぶ、提案を受けることに
あー、なんでことになったんだろう……。
そんなことを思いながら、過去のことを振り返っていた。
小学校の頃の私は、真面目な子どもだった。
学校から言われたことは必ず守っていた。
廊下を走ってはいけません。
宿題は忘れずにやってきなさい。
学校にはいろいろなルールがあったが、そのことで先生に怒られた記憶はほとんどない。
それに、学校の授業でも、自ら手を挙げて発言するようにしていた。
だから、同級生からは、「佐々木君は学校のルールを守ってすごいね」って言われることが多かった。
学校の先生からは、「授業に積極的に参加していて偉いね」って褒められることもよくあった。
しかし、当時、私の心は全く晴れなかった。
褒められることはもちろん嬉しかった。
しかし、それ以上に不安が勝っていたのだ。
ルールを破ってしまったら、同級生から「なんだ、佐々木君ってたいしたことないじゃん」って言われるのではないか、積極的に手を挙げなくなったら、「なんで、積極的に手を挙げないんですか?」って先生に怒られてしまうのではないかといつも恐れていた。
要は、自分に全く自身がなかったのだ。
まるで断崖絶壁の崖の端っこで踏ん張っているような気分だった。
いつ、自分の評価が下がってしまうのかとビクビクしていた。
当時の私はいつもマシンガントークだった。
自分の不安な気持ちを見透かされたくないから、一方的に話していた。
揚げ足を取られないのに、必死で相手の話なんて聞いていられなかった。
当時のクラスの同級生には、よくこんなことを言われた。
「なんで、いつもビクビクしているの?」
「佐々木君って、いつも一方的に話をしてばかりだよね……」
こんな調子だったから、友達はほとんどできなかった。
中学校、そして高校生と年を重ねていくうちに、そんな萎縮した感情は徐々に薄れていった。少しずつ、相手の話も聞けるようになり、自然と友達も増えてきた。
ただ、それでもやはり人の目は怖かった。
私の行動はいったいどうとられているのだろう?
変な風に思われていないか?
そんなことばかり、考えていた。
大学は、地元を離れ、東京にある大学に進学した。
高校までとは違い、がっちりした校則があるわけじゃないし、講義の時間割を自分で自由に考えて、組み立てることができるから、決まった時間に学校に行く必要もない。
やっと、自由に過ごすことができる。
周りの目に気にしなくても良くなる。
なんだか、解放された気分になった。
学科の人達以外とも仲良くなりたいと思い、サークルにも入部した。
サークルのメンバーは、先輩達もそして同級生もとても優しく、そしてフレンドリーだった。
私を快く受け入れてくれたし、私も彼らといるのがとても楽しかった。
普段のサークル活動はもちろんのこと、それ以外でも一緒に遊びに行ったり、飲みにも行ったりした。
人の目を気にすることなんてもうないだろうと思っていた。
ただ、やはり、いやだからこそ、不安があったのだ。
自分の行動が変に思われていないだろうか?
せっかく、仲良くなったメンバーに嫌われたくない。
そんな思いが、頭を占めるようになっていた。
気がつくと、また人に対して、ビクビクしている自分がいたのだ。
そんな異変を察したのか、先輩達が提案してきたのが、追い出しコンパの一発芸の提案だった。
一発芸、そんなことできるわけない!
頭の中で私は、そう叫んだ。
滑ってドン引きされたらどうしよう? 嫌われるかもしれないのに、なんでそんなことやらないといけないんだ?!
そんな気持ちの一方で、こんな気持ちも湧いてきた。
そもそも、嫌われるってなんだろう?
別に、滑ったところで嫌ってくる人達じゃないよな。
むしろ、フォローしてくれるって言ってくれているのに、信じないんでどうするんだ。
自分と仲良くしてれているメンバーのみんなを楽しませたい。
私の中の何かが変わった気がした。
いよいよ、追い出しコンパ当日。
卒業生を盛大に送り出すべく、メンバーそれぞれが楽器の演奏や出し物など、趣向を凝らした内容がステージ上で、披露されていく。
いよいよ、私の番がやってきた。
披露したのは、伝統芸能の一発芸。
もし、飲み会の場で「伝統芸能! 伝統芸能!」というコールがかかったら、こんなことを一発芸をして盛り上げようという設定で、実際に私がそれを披露するというものだった。
日本の伝統芸能である歌舞伎、そしてバリ島の伝統的な踊りであるケチャを一人でやってみた。
サークルメンバーは、みんな飲み会好きで、また自分自身が歴史好きなこともあり、考えたのだった。
はじめ、卒業生も、3年生も同級生達も、みんなぽかんとしていた。
設定は、あまりにもマニアックすぎたのだろう。
滑ったら、どうしよう。ドン引きされたんじゃないか?
そんな思いが頭をかすめたが、それは杞憂だった。
一人で伝統芸能を始めた途端、どこからともなく笑い声が聞こえてきたのだ。
滑るどころか、図らずも大ウケしたのだ。
無事、一発芸が終わり、自分の席に戻るといろいろな人が声をかけてくれた。
「よく、あんな内容を考えついたね」
「楽しませようとしているのが伝わったよ」
「佐々木君があんなに度胸があったなんてびっくりだよ!」
その言葉を嬉しく聞きながら、私ははっとした。
今までは、真面目にしないといけない。
人と違うことをしてはだめだ。ふざけちゃだめだ。人に嫌われてしまう。
そんなことを思っていた。
しかし、それは間違いだった。
真面目だって、ふざけたって相手にいい気持ちになってほしいという思いで行動すれば、それは伝わるものなんだ。
それからというもの、みんなを楽しませようとふざけることが多くなった。
すると、どうだろう。
以前に増して、私に対してフレンドリーに接してくれる人が増えたし、何より私自身の不安がなくなり、日々の生活が楽しくなってきたのだ。
きっと、真面目というタイヤの他に、ふざけるというタイヤも手に入れたかな。
二つのタイヤは私の一生身につけていたいな。
これからも、真面目に、そしてふざけて日常を過ごしていこう。
そう、心に誓った。
***
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