メディアグランプリ

タモリのサングラスのような郷愁


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記事:シマザキ キミコ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
突然ですが、タモリさんの顔を思い浮かべてください。
 
思い浮かべたでしょうか?
さて、今ここでサングラスなしのタモリさんの顔を思い浮かべたかたはいらっしゃいますか?おそらく相当数の方はサングラスにオールバックのタモリさんを思い浮かべられたかと思います。
もし「サングラス無しのタモリさんの似顔絵を描いてください」という注文をされようものなら、そのハードルの高さに皆さん頭を抱えられるのではないでしょうか?
そう、タモリさんといえばサングラス、サングラスといえばタモリさんというほどに我々の中にはそのイメージが強く刷り込まれているのです。
 
このサングラスと同じように、実は私の中にはいつの間にか自分でもそうなのだ、という自覚のないままに刷り込まれてしまった価値観というものがあります。
 
私は人生で何度も引越しをしていますが、一番多感と思われる保育園の年中さんから高校卒業までの期間、神奈川県相模原市の相原から橋本というエリアで暮らしていました。もうあと数年もしたら話題のリニアモーターの駅もできて、話題を集める(と勝手に思っている)場所です。
しかし、私が住んでいた頃のそのエリアは、それなりの郊外感はあるものの今現在ほど駅前にビルが林立しているような場所でもなく、程よい田舎感満載の場所でした。自宅から歩いて数分の距離には桑畑もたくさんあって、放課後おやつ代わりに桑の実を取って食べては舌を真っ青にし、親にバレて叱られるなんていうこともありました。
 
そんなエリアにあった小学校の校歌に「丹沢は西にそびえて」という言葉があります。丹沢と言うのは、神奈川県にある丹沢山という山です。
校歌の通り、通っていた小学校の校庭からも通学路の途中からも西の方角には(正確には南西くらいですが)丹沢山がいつも遠目に見えていました。
しかしその山については(なんか、校歌に書いてあるなあ……あれは丹沢なんだなぁ……)程度のことしか考えず、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。相模原での思い出は色々とありますが、当時の私は(大人になったら地元を離れて東京で仕事をする、どこか住んだことのない場所に行きたい、早く一人暮らしがしてみたい!)と考えていました。
 
念願叶って、20歳を過ぎてからは活動拠点を都内に移しその中でも複数の土地に暮らすことができました。
下町エリアに住んでいた時は電車に乗って隅田川や中川という大きな川を渡る度に(こんな大きな川の近くに住んでいたことは無かったな、嬉しいな)と思いながらその景色を眺め、東京湾近くの職場に通うときはゆりかもめの車内からこれぞTHE東京という景色を当たり前のように眺め都会人気分を満喫していました。
 
しかし、今から数年前に家族の都合で神奈川県西部にある小田原へ引っ越しが決まりバタバタと転居先を決めました。
(また神奈川に戻るのかぁ)とは思っていましたが、特にこれという感慨もなく雑務をこなす日々でした。
ところがある朝、ゴミ出しをして家に戻ろうとしてふと目に入った光景に何とも言えない既視感があることに気がついたのです。
そうです、都内にいた時には目にすることの無かった山です。
小田原市内を車で移動していても、視界の端には常に山があります。
しかも幾つか見えている山の中の一つは、幼い頃相模原から見ていたあの丹沢山系の反対側なのです。
私は既視感と共に安心感も感じていました。
相模原時代の思い出は決して良いことばかりでは無かったし、いつか相模原に戻りたいとも思ったことはありませんが、それでも自分の中にはこんなにも強く山のある景色に対して郷愁が刻み込まれているんだなあと。
天気の良い日にくっきりと見える山、雪が降った次の日に見える冠雪した山そんな景色に自分のルーツがあるんだということに気がつけたのは、面白い経験でした。
 
また、こんなこともありました。
中学校時代にクラスメートの女の子で仁科さんという方がいました。
彼女は目鼻立ちがはっきりとしていて、少しオリエンタルな雰囲気も持ち合わせている快活な方でした。バスケット部に所属していて、クラスでも人望厚く、勉強もしっかりとできる優等生の鏡のようなそんな彼女が、私は会ったその日から大好きで仕方なかったのです。
自分でもその理由がさっぱりわかりませんでした。
具体的に何か親切にしてもらっただとか(いや、誰にでも親切な素晴らしい方だったけど)コレという素晴らしい体験を共有しただとか、とにかく大親友だったとか、そんな熱いエピソードがある訳でもないのにです。
ただただ、折に触れては(この人への好感度が止まらないなぁ……)と繰り返し思いながら、卒業を迎えました。
そんなにも好感度が高い彼女でしたが、人付き合いがマメではない私はその後彼女と特段の連絡を取ることもなく、現在もどこで何をしていらっしゃるのかさっぱりわかりません。
 
いつしか彼女のこともさっぱりと忘れていたある日、私は突然何故彼女が大好きだったのかという原因を解明することになるのです。
その日、何か探し物をしていたのか親の寝室のクローゼットの中を覗いていた私はちょっとした好奇心で親の古いアルバムを手に取りました。
私がまだ産まれる前の母親のアルバムを見たことがなかったな、とそんな軽い気持ちで開いて驚きました。
そこにはちょうど小学生くらいの大きさの仁科さんそっくりの女の子が写っていたのです。いえ、仁科さんではなく、そこに写っているのは間違いなく自分の母親の幼少期の姿でした。
(そういうことだったのか……)
一瞬で仁科さんを思い出せるほどそっくりだった私の母親の幼い姿を見ながら、これ以上はないほど何かが腑に落ちるのを感じていました。
私は見たこともなかった母親の片鱗を我知らずのうちに仁科さんに見出し、そして好きでたまらんという、体験をしていたのでした。
望もうと望まざろうと、自分が何かを好きになる時には既に両親の面立ちなどの影響を大きく受けてしまっているのだな、と心底驚きました。
 
皆さんにも、もしかしたら気がつかないうちに刻み込まれた価値観があるのではないでしょうか?
ふとした時に、知っているようで知らないことを発見できるかもしれません。
その発見はきっとあなたにとっての大発見になると思います。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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