コロナが我が家にやってきた
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記事：匿名（ライティング・ゼミ日曜コース）
コロナが我が家にやってきたYA! YA! YA!
と続けるとなんだかおめでたい感じもするがとんでもない。
それは年末の28日にやってきた。正確には長男が連れてきたのだ。
普段の我が家は私（56歳）と妻（57歳）と犬（甲斐犬・メス7歳）の二人と一匹暮らし。
ここに一昨年まで一人暮らしをしていた、長男（27歳）と次男（25歳）がそれぞれの事情で昨年夏から舞い戻ってきていた。
28日の夜帰宅した長男が調子悪いと言い出し、熱を測ると39度を超えている。
コロナがよぎったが、まだ他人事。
まさかと思いつつ、翌日病院に妻が連れて行くとしっかり陽性。
メディアで見聞きしていたものが、実態を伴い僕の前に現れたのだ。
現状、入院の必要はないが人と接触しないようにとの事。そしてホテルは今アレンジできない状態なので自宅療養をお願いしたいとの連絡。ここまでは情報通り。
そして濃厚接触者である、僕と妻と次男はなるべく自粛して欲しいと。
んっ……少し情報と違う……ここで濃厚接触者はPCR検査を受けさせられるはず。
保健所に問い合わせると、今PCR検査を受けても無症状の場合何もできないので受けなくても良いとの返答であった。
ゆるい、ゆるすぎる。まずは検査をして、現状を正確に把握させないと強制力が発生しない。
予想通り、次男は年越しイベントに出かけて行った。これでは広がるわな……
状況を嘆いてもしょうがないので、僕は長男を隔離する部屋の片付けをして、暖房器具を買いに走る。妻は薬局に走り除菌スプレーやら体温計やら葛根湯やらを大量に買ってきた。葛根湯！！ コロナに葛根湯が効くのか！！
そしてこの日から目に見えないウィルスとの戦いが始まった。長男が触れたところを片っ端から除菌！ ドアノブ、ドライヤー、動く後ろから追いかけて触れたもの全てだ。シャワーを浴びれば浴室を全て洗剤で洗う、使用した食器類も全てすぐに洗う。
この生活を大晦日まで3日間続けて、1日の夜妻が発熱。
ここから孤独な僕の戦いが始まった。元旦の昼ぐらいに次男も帰ってきたが、戦力にはならない。幸い長男も妻も安定していて、重症化する様子はないので家事に専念することにする。食事の用意、食器洗い、洗濯、換気、そして果てしない除菌。息抜きは朝夕の犬の散歩、きつい……いつ終わるかもしれない除菌が特にきつい……。
そして3日の夜、僕の心が折れた。
除菌は無理だ、これ以上やっていられない。
そこで僕はすでに感染しているものと思う事にした。
「僕だけは感染しないよう頑張る」から、
「すでに感染しているが、発症しないように努力する」に意識を変えたのだ。
するとあんなに忌み嫌ったコロナが姿を消した。
コロナで発症しないためにを検索する。、
するとその方法はただ一つ、「免疫力を100％に保つ事」
調べていくと、まあ規則正しい食事とか喫煙しない、良質な睡眠とか諸々出てくる。
しかし、妻と僕の生活習慣はそんなに変わらない。
妻が発症して、僕がしないということはその違いを見つけて続けていけば良いと。
すると、妻と僕の生活習慣で大きく違うところが3つあった。
1つ、妻はビール好きで僕はワインと日本酒。
2つ、妻の運動はママさんバレー、僕はサーフィンとトレラン、犬の散歩。しかしこのコロナで妻は全く運動できていなく、僕は変わらず週1のサーフィンと毎日30分のランニング、朝夕の犬の散歩は続けている。
3つ、妻は夜一回の入浴。僕は朝夕の2回入浴。
アルコールの種類は関係ないと思うので、2と3の運動と入浴に行きあたる。
基礎体温を高めに保つとウィルスに感染しにくくなり、その有効な方法は適度な運動と入浴とある。
これだ、この2つを怠らないように続けていこう。日本酒とワインも、もしかしたら効果的な要素かもしれないので続けることにする。
そして日課の犬の散歩である。
朝は日の出と共に、夕方は日が暮れる前にそれぞれ30分ほど散歩する。
この散歩で、ここ最近マジックタイムに出会う機会が増えた気がする。
マジックタイムとは日の出、日の入り前後の数分間に見せてくれる天体ショーだ。
日の出は東の地表が薄く紫に色づきはじめ、そこから雲の下を染め上げていく。ぼってりとした水墨画のような雲が、様々な表情を見せはじめるとそこから一気にピンクが現れ、雲の白と空の青に混ざり合っていく。トムクルーズの映画、「バニラスカイ」のあれだ。風で雲が流れている時などは圧巻である。
日の入りは西の空で、オレンジと様々な深さの赤の共演が始まる。やはり雲が主役で、太陽に近いほど赤が深く、かと思うと遥か頭上に広がる空がオレンジに染め抜かれたりもする。映画「沈まぬ太陽」のあれである。
僕と犬は口を開けてその光景に見惚れる。
これは空気が綺麗になったことによる、コロナの数少ないご褒美ではないかと思えてしまう。
目に見えないウィルス、まるで幽霊のような存在だ。
いると思えばいるし、怖いと思えば怖い。
未知のウィルスがそこにある生活、おそらく人それぞれの捉え方でこのウィルスと付き合っていくしかないのだと思う。
テレビのアナウンサーは真剣な顔で今日の感染者数を読み上げる。
政治家の方々は、会議に追われているのだろう。
ハーメルンの笛吹について行ってはいけない。
これを書いているのが七日の朝、未だ僕は発症していない。
この書き出しはウィルスミスのデストピア映画にあった気がするが……。
余談になるが「ビートルズがやってくるYA! YA! YA!」の原題は『A Hard Day’s Night』である。
明けない夜はない。
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