「専門用語を日常にたとえる」という発想法 ~「再発見の発想法」を読んで~
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記事:村人F(リーディング倶楽部)
世の中には専門用語がいっぱいあります。
ニュースを見たら毎日新しい言葉が出てきます。
そしてこれらを見る度に、僕はこう思ってしまいます。
意味がわからないと。
専門用語が必要な理由はわかるんです。
世の中には業界でしか使われない概念がいろいろあって、それを短い言葉で伝えようとしたら、新しく専門用語を作るしか無いというのは理解できます。
でもあんなに量が多いと、いちいち覚えなきゃいけないこちらが大変なわけです。
もうちょっと別の言葉でなんとかできないものかと常々思っています。
そんなときに出会ったのが、今回紹介する「再発見の発想法」という本になります。
本作は、IT業界でよく出てくる専門用語を、日常生活の場面に当てはめたらどうなるかを説明した本です。
「DoS攻撃」や「ブルートフォースアタック」など、IT業界にいる僕でもあやふやな言葉たちを、意味だけじゃなく日常生活の何にあたるかまで丁寧に解説しているわけです。
この本を読んでいて思ったのは、日常生活にたとえられるレベルまで専門用語を理解している作者はすごいなということです。
僕も業界人だから言葉の辞書的な意味はなんとなくわかっているつもりだったんです。
でもそれを知らない人に伝えることはサッパリできませんでした。
そこを本書は日常生活にたとえて伝えているわけです。
この発想は僕にとって新しい考え方でした。
これは普段から表現にこだわっているからできることで、流石「数学ガール」などのわかりやすい作品を多く書かれている結城浩先生だなあと思いました。
本書のテーマである、「日常生活を専門用語から見直すことで新たな発見が得られる」という点も感銘を受けました。
それを最も感じたのは「DoS攻撃」の説明でした。
これはメールなどのデータを、大量に送りつけて相手をパンクさせる攻撃を表す専門用語です。この言葉が持つ「大量のデータを送りつけることは攻撃だ」という考えを、被災地に送付する千羽鶴へ適用されたときにハッとさせられました。
被災地にいろいろな物資を送るボランティアがよくありますが、ちゃんと考えて送らないと受け取った側がパンクしてしまい、善意が攻撃になってしまう。
こういった発想は専門用語から日常を見たからこそ得られる知見でしょう。
このように専門用語を日常生活に置き換えていく本書を見て思ったのは、こういう先生から勉強を教わったら楽しいだろうなあということです。
新しい分野について勉強しているときに真っ先につまずくのは、多すぎる専門用語です。
言葉を覚えることが大変だし、それ以前に意味を説明した文章もわからない。こういう体験が学習意欲をどんどん下げていく経験は誰にでもあるでしょう。
そんなときに「この言葉の意味は日常生活の○○だよ」と教えてくれる先生がいたら、「意味がわからない」という理由でつまずくことがなくなるわけです。
それだけでなく日常生活と専門用語が結びつくことで、記憶に定着しやすくなる効果まで得られます。
こんな先生が学校にいてくれたら、どれだけ幸せだろうと思います。
しかしこの発想は、決して本書の作者にしかできないことではありません。
僕たちが出会う専門用語に対しても、各々で実践できる考え方なので、これを身につけられれば人生にとって大きなプラスになることでしょう。
たとえば人に教えるときに役に立ちます。
専門用語の辞書的な意味だと、その説明の中に難しい用語があって伝わらないということがよくあります。しかし、日常生活にたとえて説明する場合は、相手に伝わりやすくするためにはどうすればいいかを一緒に考えることになります。その結果、よりスムーズに相手に伝えられ、深いコミュニケーションが取れる効果も得られます。
自分が新しい専門用語に触れるときでも大活躍するでしょう。
現代は情報が多すぎる時代で、毎日とんでもない量の専門用語が生まれています。
もはや専門家ですらその全てを把握することが不可能なレベルです。
ここで新しい専門用語に対して、日常生活にたとえる癖をつければ、「これはあの言葉と同じ意味だから覚えなくていい」という具合に取捨選択ができるようになるわけです。
この発想だけでも、ずいぶんと勉強が楽になることでしょう。
専門用語から日常生活を見直すという本書は、言葉の多さに疲れた僕にとってじんわりと効く薬となりました。
きっと同じような思いを抱えた皆さまにもいい効果を与えてくれるでしょう。
「再発見の発想法」、ぜひ手にとってみてください。
本記事で紹介した作品
タイトル:再発見の発想法
作者:結城 浩
出版社:SBクリエイティブ
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