鳥類を憐む例
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:すずりす(ライティング・ゼミ日曜コース)
ある火曜日、在宅ワーク中の午後、「ドン!」というような鈍い音が聞こえた。
「また上の階の人が音立ててるのかな」と思って仕事を続ける。
ところが、ふとベランダのある窓の方に目をやると、何か違和感。
ベランダに近づいてすぐにわかった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ~、カラスだぁぁぁ」
自宅ベランダの手すりにカラスが止まっていたのだ。
わたくし、鳥が苦手。カラスは特に、あの黒光りする大きな胴体と、突っつかれそうな黒く大きなくちばしがコワい。
近寄るのもコワいから、ほおっておけばそのうち逃げてくれるかもしれないが、視界に入る場所に居続けられるのもコワくて気が気じゃないので、ベランダに半分だけ体を出して、追い払おうとしたところ、なんとハトまでいる!
わたくし、ハトも苦手。コンクリートのような色の、どちらかというときれいとはいいがたい色の胴体なのに、なぜか首元はエメラルドグリーンと赤キャベツのような紫のゴージャスな色合い。地面を進むときは、首を動かしながら歩く姿。そしてなぜかぶつかってきそうなくらい低空飛行する突発的な飛び方。朝方に「ホーホー・ホホー」とリズミカルに鳴くあの声。私には、この特徴のどれを思い出しても身震いするほど苦手で、これを書いている今も鳥肌がたっている。(ハト好きのみなさん、ごめんなさい。)
ベランダで、カラスが大きな羽をばたつかせ、そしてハトも羽をばたつかせていた。その光景を見た瞬間、ハトがカラスにやられている最中だとわかった。しかしなぜよりによって鳥嫌いな人のうちの狭いベランダで。鳥嫌いな私が消化しきれない感情と情報量だ。あぁぁぁぁぁ~、もうなんなんだ~!
ベランダに半分人間が身を乗り出した姿にカラスが気づき、その場から飛んで行ってくれた。だがハトはベランダに着地しておろおろしている。
どうやら、さっきのカラスとの闘いで弱っているように見えた。ただ、そのハトも人間の存在に気づいて、早くこの場から立ち去りたいと思ったのか、隣の家へとつながる排水スペースの小さな隙間を見つけてくぐり抜けていった。そのハトはなんとなく足を引きずるような感じがしたが、私にとっては、とりあえず自宅ベランダから2羽の鳥が逃げて行ってくれてホッとした。これで仕事に戻れた。
そんな鳥事件のことをすっかり忘れていた翌日水曜日。
寒い夜だったが、ベランダにあるものを置きに行こうと窓を開けたらなんと。
暗闇にベランダを歩くハトがいるのがわかった。
うわぁぁぁぁぁぁぁ。よりによってなぜまたハトが? しかも暗くなってからの夜に? いつ来た? 実は昼間からいたのか? いや、いなかったぞ。
音を立てみると少しは音から遠ざかろうとするのだが、わが家のベランダの端のほうに植物のプランターを置いていたのだが、そこで待機をして動こうとしない。まるで寒さをしのごうとしているかのような。
音の近くから遠ざかるときにふと気づいたのだが、なんとなく足を引きずるような歩き方と、ちょっと細身の体型から、昨日のハトだと思った。
一刻も早くどこかに行ってほしいと思いながら、冷静に対策を考えるためにハトの習性をネットで調べると、ハトは一度いいと思った場所に何度か訪問して、そこが気に入ったら棲みつくらしい。棲みつかれたとしたら、音やフンの被害、また健康への影響などがあり、かなり厄介。駆除が必要なレベルに至ったとして、鳥獣保護法で保護されているので、業者にお願いしないと難しいとのこと。
調べるほどベランダに棲みつかれたら大変だと思い、一刻も早く逃げて行ってほしいところだが、怖いし、夜だし、寒いしで、とりあえず朝を待つことにした。
正直朝までいられたら困ると思ったが、このハト、期待を裏切らない。
翌朝までいたのだ。ガーン。
しかし、今度は私が少し音を立てたら、例の隣の家へつながる排水スペースから逃げて行った。
もしかすると、このハトは数日前くらいからこの排水スペースを行き来しているのではないかと思った。
とりあえず、その日はハトが棲みつないようにできる対策を自分なりにした。
一晩過ごした証にたくさん残していったフンを跡形も残らないように掃除。
仕事中の昼休みに行ける場所にある近所の100円ショップで対策になりそうなグッズを購入。ゴミ収集場所などによく使われるカラス除けネットと花壇のネコ除けトゲトゲしたものは、あいにく「ハト除けグッズ」ではないが、ないよりはマシだ。あとは磁石。ハトは磁場がゆがむような場所が苦手らしい、と読んで、私の心の気休め程度に購入。これらを明るくて例のハトがいないうちにベランダに設置。
その日もその後数日も、ベランダの状況は気が気でなかったが、100円ショップグッズが良かったのか、それともたまたまもうハトはもう戻るつもりもなかったのかもしれないが、あれ以来、ベランダにハトの姿も、またカラスの姿も見ていない。
鳥が苦手な私としては、ほっと胸をなでおろして、今のところ平穏な暮らしができている。
鳥の住む場所や休息できる場所が人間の活動によって減ってきているから、ベランダ等の人の住処に棲みつくような被害が増えているということもハト対策を検索しているうちに知った。
あの足を引きずるように歩くハトは、自然の中で適した場所を探すことができたのかな、と鳥が苦手な私は鳥肌を立てながらも、なぜか思い出しては気になっている。
***
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