世界最北端のコーヒーをいただく
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:岩渕千佳(ライティング・ゼミ平日コース)
「岩渕さん、一番北にあるコーヒーの産地って、どこだか分かります?」
「え?コーヒーと言ったら、アッタカイところですよね?」
「今度、世界最北端のコーヒー豆を取り寄せするので、ぜひ、飲みにきてくださいね!」
最初にお断りしておく。上記のやり取りのように、私は、コーヒー通ではない。違いのわかる、嗅覚も味覚も持ち得てはいない。この記事を読んでいただく方の中には、コーヒーにとても詳しい方もおられることだろうから、一言二言あるかもしれない。ただそこは、グッと堪えていただき、「世界最北端のコーヒー初体験」レポートを温かく読んでいただきたい。
ちなみに、この「世界最北端のコーヒー」は、時々お邪魔する行きつけのお店の店長が来客者向けサービスとして出してくれたものである。喫茶店ではない。呉服屋である。この店長、本来の職務もきっとしっかり果たされていると思うが、忙しいスタッフに代わり、来店した客にコーヒーを淹れ始めたところ、すっかりコーヒーの魅力にハマってしまったようで、今では「マスター」と呼ばれている。
お店に着くと、マスターは店の奥でコーヒーを淹れる準備を始める。インスタントではなく、豆をミルで挽いて、1杯ずつ丁寧に淹れてくれる。淹れていただいた珈琲はもちろん美味しいが、それ以上に、贅沢かつありがたい時間もいただいている。
というのも、このマスター、もともと色んな珍しく、美味しいお取り寄せをリサーチするのが大好きで、それが今は、美味しいコーヒー豆の調達に変わっている。最近は、月替りで趣向を凝らし、豆を吟味したり、珍しい豆を取り寄せたりして楽しませてくれていて、今回の趣向が「世界最北端のコーヒー」であった。
先月から話を聞いていたので、これは行かないわけには行かない。週末、時間を作ってコーヒーを飲みに行くことにした。重ねていうが、喫茶店ではなく、呉服屋である。が、今回のメインは、着物でも帯でもなく、「世界最北端のコーヒー」である。
店長は、いつこしらえたのか、店名の刺繍がなされた前掛けをして出迎えてくれた。似合っている……。ますます喫茶店のマスターっぽくなっていた。
横道に逸れたが、私の前に来店した人たちの感想は、人により好みが分かれたそうである。コーヒーの好みは人ぞれぞれであるが、私は、どちらかというと苦味の強いコーヒーは苦手なので、すっきりと程よく酸味と香りが効いたこの「世界最北端のコーヒー」は、とても飲みやすく美味しいと思った。2杯目もいける。物珍しさもあって、おかわりももらった。
店長の話では、フレッシュな豆であるせいか豆を挽く時に、挽きやすかったそうである。
「コーヒー豆、固さ」で検索すると焙煎の違いによる豆の固さ違いについて多くヒットする。焙煎の違いでの硬さが変わる。深煎りの方が柔らかく、中煎りまでだと硬いらしい。深煎りはストロングと言われるように苦味が強くなる。うーん、そこまで苦味は感じなかったぞ?
もう一つ、標高の違いもあるらしい。珈琲の生豆の固さは、同じ品種であっても農園の標高差で違いが出るそうである。標高が高いところで取れた豆は、密度が高く硬い豆。標高が低いところで取れた豆は柔らかい。そして、酸味も強くなると言われている。中南米の産地では、1000m級の高地にある農園が多く、グアテマラやコロンビアでは標高3000mの高地の農園もある。3000 mというと富士山である。
この「世界最北端のコーヒー」の産地は、中南米の農園と比べると標高は低いので、それで豆を柔らかく感じた、ということだろうか。もしくは、深煎りだから柔らかいのか・・・。強い苦味は感じず、どちらかというと飲みやすさを感じたので、標高説を取りたいところである。
さて、この、呉服屋のマスターが淹れてくれた「世界最北端のコーヒー」産地はどこか……。何を隠そう、沖縄である。「へ〜、沖縄ねえ。え?国産!?」
私の中で、コーヒーというのは、中南米のイメージなので、まさか日本でコーヒー豆の農園があるとは思ってもみなかった。世界のコーヒー生産地は、北緯25度〜南緯25度のコーヒーベルトと呼ばれる赤道を中心としたエリア中南米が多いが、沖縄、小笠原は、北緯26度〜27度ではあるものの、亜熱帯海洋性気候なので、辛うじてコーヒー栽培ができる、まさに最北現地なのだそう。
まさか、あると思っていなかった国産のコーヒー豆。コーヒーを美味しくいただくには、焙煎してからの日数も大事。国内なので、空輸されてくる海外の産地のものと比べたら、まさにフレッシュである。
そして、たまたま、マスターからこの国産のコーヒーの話を聞いた後に、沖縄のコーヒー農園の記事を見る機会があった。コーヒーの木というのは風に弱く、温度管理もデリケートで、いろいろな試行錯誤を経て今に至っているそうである。
丁寧に大事に育てられ、焙煎され、届いた沖縄コーヒー。もしかすると、これからもっと進化するかもしれない、そんな楽しみも感じながらいただく初めての国産コーヒーは、マスターの満足げな笑顔もブレンドされて、とても美味しく、印象に残る二杯であった。
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