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【わたし、整形手術しました〜顔にメスを入れた日のこと〜】


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記事:人生相談YouTuber 和泉あんころ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
実はわたし、20歳の時に整形手術をしています。
 
敢えて言うタイミングも掴めないし、公言するほどの事でもないので、特別隠したい気持ちがあるわけではないけれど、仲が良くても知らない友人がいるのは事実です。言い訳に聞こえるかも知れないけれど、わたし自身、整形手術をしたことを普段は忘れてしまっているんです。
 
ひどい怪我や大病を患ったことがないわたしの身体は健康体そのもの♡であり、手術とは無縁の暮らしを送ってきました。
 
だから、あの日……整形手術をした日の、自分の顔にメスが入っていく感覚は、未だに鮮明で強烈な記憶としてわたしの脳内に宿っています。
 
そのときのことを思い出しながら、心境を綴ってみようと思います。
 
「痛いですか?」
コンコンと医師に謎の器具で叩かれている。顔には白い布がかけられ、目を瞑っているので様子がわからない。麻酔が効いてきたらしく、痛みは特に感じない。
 
全身麻酔ではなく局所麻酔のため、医師とは普通に会話をしながら手術が進んでいく。思っていたのとは全然違った。
 
「麻酔が効いているようなので、メスを入れていきますね」
 
え!? もう?
 
本当に麻酔は正常な働きをしてくれるのだろうか? めちゃくちゃ痛かった場合はどうしたら……歯医者のように手を挙げて合図をすれば中断してもらえる? いや、中断されても困るけど、
……と頭の中はパニック状態だが、もう「20歳の大人のオンナ」になったのだ。冷静にならなければいけない、と無理矢理こころを落ち着かせる。
 
ーーーサクッ
 
嘘だと思われるかもしれないが、本気でこんな感じの音と感覚がした。
 
痛みは全く感じない。
 
現代の医療とは何と素晴らしい! ナイフがわたしの顔面の皮膚を切り裂いているにもかかわらず、全く痛みを感じさせないなんて!!!
 
わたしは妙に関心しながら、整形は人ごとのような気分で呑気なことを考えているあいだに、既に手術は終盤に差し掛かっていた。
 
「今から傷口を縫っていきますね」
 
医師は説明責任でもあるのだろうか? わたし個人的な意見としては、今から行われることを宣言されるとイチイチ緊張して身構えてしまうため、お任せするから勝手に進めて終わらせていただきたいのだが……。
 
自分の顔がちくちくと針で縫われていくのがリアルにわかる。
 
小学生の頃、家庭科の授業で裁縫道具から針と糸を引っ張り出して、ボタンをつける練習をした授業を思い出した。今、まさにそんな感じ。医師の手によってただの布から何か作品が生まれるような気持ちになりながら、呆気なく手術は終わった。
 
本当に、呆気なかった。
 
呆気なさ過ぎて拍子抜けした。
 
医師に渡された鏡を覗くも、今まで20年間わたしと人生を共にしてきたはずのホクロが……もうそこには無かった。
 
「レーザーでとれるほど小さくはない黒子なので、メスを入れる手術になります」と医師から説明を受けた際には、もっと大掛かりな手術を覚悟していた。
ドラマで見るような手術室でもなければ、「メス」とか「汗」とか医師を介助する看護師すらいなかった。これは流石にドラマの見過ぎか……笑
 
麻酔が切れてきたら傷口が多少痛むことも想定はしていたが、ビックリするほど痛みもない。お会計も確か約20000円くらいだったように思う。学生の身でもバイト代で充分支払える僅かな金額で、わたしは、永年自分の顔に張り付いていたホクロに別れを告げたのだ。
 
抜糸をするまでは顔にガーゼを貼ったままの生活をすることになり、右目の下、頬のあたりにかなり目立つガーゼをしたまま、翌日は大学に行った。
 
わたしは大学の誰にも、ホクロをとる手術をすると伝えていなかった。そもそもわたしは友人に悩みを相談した試しがない。自分のことは自分で決めるし、相談したところで人の助言をあまり聞けない性格なので大して意味がないのだ。いつも事後報告タイプ。
 
もちろん顔自体のパーツをいじるわけではないとは言え、自分を産んでくれた母親には事前に相談も許可もとっている。むしろ、わたしより母親のほうが、わたしの顔にある水疱瘡の跡やホクロを気にしているようにも見えた。「成人したら、もしホクロが気になるなら自分で決めていいからね」と20歳になる前から言われていた。
 
顔にガーゼを当てたまま、大学の授業に出た。「ホクロとったんやね!」「手術、怖くなかった?」とみんなから注目の的になるに違いない。整形手術をして目立つのは本意ではないけれど仕方ないか。
 
覚悟を決めていったのとは裏腹に、予想外の反応オンパレードがわたしを待ち構えていた。
 
「顔、どうしたの?」「転んだ? 怪我でもした?」
 
誰ひとり気付いてくれないではないか! そんなことがあるだろうか? わたしのホクロは、第一印象で「大きめのホクロがある娘やな」くらいには記憶に残る存在感はあったはずだ。
 
「怪我じゃないよ、ホクロとったんやよ!」
 
わたしの返答に対して
「……ホクロなんかあったっけ?」と大学のメンバーたち。
 
小学生の頃、何かにつけてイジられたり、悪口を言われたりするのが嫌だったわたしのホクロ。
 
幼い頃の写真では小さかったのに、成長に伴って少しずつ大きくなっていくのもコンプレックスに感じていた、わたしのホクロ。
 
「そのホクロがかわいいんじゃん」
チャームポイントだと褒めてくれた人もいたが、自分のことじゃないから軽々しく言えるんだ……と慰めかお世辞にしか思わなかったわたしのホクロ。
 
『自分が気にするほど他人は自分に興味がない』ということを思い知らされた。
自分自身が感じるコンプレックスなど、他人からしたら取るに足らないことなのだ。
 
存在したかどうかさえ、憶えてもらえていなかったわたしのホクロよ、無念なり。
 
当の本人ですら、手術から数週間後に抜糸を終えてしまったら……ましてや、20歳の皮膚再生能力で綺麗サッパリ傷跡もなくなってしまってからは、ホクロに想いを馳せることはなくなってしまった。ホクロについて忘れてしまったわけではないものの、思い出すきっかけも殆どない。
 
たまーに、昔の写真を見る機会があるとき、
ふと鏡を見てなんとなく思い出したときに
ホクロがあった場所を指でなぞってみる。
 
コンプレックスって何だったんだろう? とひとり考える。
 
コンプレックスって、自分で生み出したもののようにみえて、実はまわりを気にした結果、生まれてしまったものなのかもしれない。
 
自分以外の人から全く気にされていない事実を
整形手術前のわたしがわかっていたら……
 
わたしはホクロを気にして、わざわざ手術をしてまでとろうと思っただろうか?
 
「もしも論」は何とでも言えるし、実際にはわからない。
 
けれど……
 
自分が気にするほどまわりは自分に興味がないとわかっていたら、もしかしたらまだココにあったかもしれないホクロの位置を指でなぞりながら、思う。
 
これから先、もし知人や友人、わたしの大切な人たちが噂話や劣等感に押し潰されそうになっていたとしたら……
わたしは、このホクロの話を披露しよう! と
そんなことを考えながら、わたしは鏡に向かって微笑んでみる。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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