ふるさと、再学習のススメ
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記事:村人F(リーディング倶楽部)
ふと、こんなことを思った。
ふるさとを考えるのって、ふるさと納税くらいだなと。
今の時代、生まれ育ったふるさとで暮らし続ける人はどんどん少なくなっている。
仕事のある東京や大阪のような大都市に移り住む流れは今後も止まることはないだろう。
その影響もあるだろうか。私はふるさとをちゃんと理解している自信がない。
どういう歴史があって、どんなよいところがあるのか、人に自慢できるだけの情報を持ちあわせているとは言い切れないところがある。
だからこそ、生まれた秋田県について書かれた「秋田学入門」という本を購入したのだろう。
本書は、秋田県について、歴史・地理・文化など幅広い切り口で論じたエッセイ集だ。
これを読んでみたが、やはりその内容のほとんどが初めましてと言っていいものだった。
藤田 嗣治(ふじた つぐはる)という世界的な画家がいたことも知らなかった。
秋田県の日本酒が有名になったのは、明治時代に入ってからで、それまでは質が悪かったことも同じである。
読めば読むほど、生まれた秋田県についてほとんど知らない状態だったことを突きつけられる。
この状況を考えると、今住んでいる土地に対して、積極的に関心が持てないのも当然かも知れない。
自分が生まれ育った場所に対する知識もあやふやな状況では、それ以外の地域についても興味を持つことも少ないだろう。
このような思いが、心の中にモヤモヤとして巣食う面もあると思う。
ご近所に誰が住んでいるのかもわからない現状は、住んでいる土地に興味がないことの延長とも言える。
その結果、移り住んだ土地で頼れる人がいない、孤独を感じる。そういうネガティブな感情を生み出す側面があると思う。
となると、この閉塞感を打破する第一歩として、ふるさとを学び直すということは、有効な手段ではないかと私は考えるのである。
「秋田学入門」を読んで、知らないことが多すぎて恥ずかしいと思った。しかし、秋田県にもまだまだ面白いことがたくさんあるんだと、好奇心を刺激される側面もあった。
なんせ、秋田県にも日本史と同じく、縄文時代から続く歴史がある。
広大な面積を持つから、地域によって文化もまるで違う。
県北と県南を比べただけでも、食生活もここまで変わるかと言いたくなる。
そうした謎の多さが、土地の魅力になっていく。
それらを知るうちに、どんどん愛着が湧いてくるのである。
その過程を経ることで、ふるさとに対する誇りも生まれてくる。
その思いは、人生が辛くなったときの支えにもなるだろう。
また、ふるさとについて詳しくなることで、移り住んだ土地に対する見方も変わってくるはずである。
なんせ、ふるさとにも奥深い世界が広がっているのだ。
それと同じように、今住んでいる町にも知らなかったことがたくさんある。
名古屋であれば、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の三英傑がいる。
東京なら江戸時代について考えるだけでも一生遊べるだろう。
それによって、土地に対する愛着も同じように湧いてくるのである。
そうすれば、モノクロに見えていた無味乾燥な風景の見え方も鮮やかになっていく。
この道路の構造はどのような歴史を経てこの形になったのか。
なぜ今の方言ができたのか。
名産品がそう呼ばれるまでの過程はなにか。
土地について知れば知るほど、好奇心が刺激される。
これは人生そのものを楽しくするスパイスにもなっていくのだ。
このようにふるさとを学び直すことで、移り住んだ土地に対する見方も変わっていく。
その状態で見える景色は、今までよりも色鮮やかになるはずである。
今回、「秋田県入門」という本を読むことで、ふるさとがどれだけ奥深い存在なのかを認識することができた。
高校を卒業するまで住んでいても、わからないことがたくさんある。
だが、その分だけ知る喜びをいっぱい味わえるということでもある。
その視点を得られたことが本書を読んだ一番の収穫だった。
それに秋田県でもこれだけのワクワクがある。
ならば国の中心である東京、名古屋などの都市圏も、同じように好奇心をくすぐられることがあるはずだ。それらに触れれば、希薄になっている住んでいる場所に対する愛着も増してくることだろう。
今住んでいる土地に対して、関心が持てない、誇りが持てないという方は、ぜひふるさとをもう一度学びなおしてみてはいかがだろうか。
そこには長い歴史と様々な文化がある。
それらに触れ起こされた好奇心は、無味乾燥と思えた通勤路ですら、鮮やかに色をつけてくれる。
そうして生まれた愛は、自分自身に対する誇りにも繋がることだろう。
本記事で紹介した作品
タイトル:秋田学入門
著者:あんばいこう
出版社:無明舎出版
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