メディアグランプリ

祝! 北斎生誕260年! 浮世絵をみよう!


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記事:あだちあやか(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
あれは夏の暑い昼間だった。
なんとなく興味をもって、ある小さな美術館に初めて行った。
そこで、一枚の絵の前でくぎ付けになった。
 
ほんとうに夏の暑い昼間だった。
美術館は入った途端クーラーが効き過ぎなくらい効いていて、でも、外があまりに暑すぎたので、おもわず「あぁ気持ちいい」と声が出そうなくらいだった。
入館料を払って、ふらっと入ってすぐにあった一枚の小さな絵に、くぎ付けになった。
晴れたお昼間なのに、その夕立の絵の前で、わたしは、ほんとうにその中にいた。
一気に周りの湿度があがり、聞こえるわけもない、雨の音を聞いて、橋を急いで渡る女の人の声や橋をかけていく下駄の音を聞いた。遠くで雷も鳴っていた。
 
後ろから来た人の鞄がわたしにあたり、はっと我に返った。なんだか暗いところから急に明るいところに来たようなまぶしさを思った。
ふっと窓を見るも、外はカンカンに晴れていて、雨は降っていない。夕立なんて降っていない。
一周ぐるりとしたけれど、さっきの衝撃が忘れられず、気はそぞろだった。
2回目戻ってきたときは、「もう一回見たい!」という気持ちと「でもあんなことになるなんて恐ろしい」という気持ちとのジレンマでそこまできちんとは見られなかった。
その頃は展覧会に行ったら、気に入った絵の絵葉書を一枚買って、部屋の壁に貼っていた。だから、今回も迷わず買って帰ろうと思ったけれど、さっき見た絵とは、線の濃淡なんかがまったく違って買えなかった。
 
わたしが感動したその絵は、「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」。歌川広重が描いたものだ。
 
それからいろんな絵を見る機会に恵まれた。日本でもいろいろ行ったし、パリやイギリスなど外国でも何カ所か行った。
でも、あんなに衝撃を受けたのは後にも先にもあれだけだ。
 
なぜ、ここまで一枚の絵の話をしてきたかというと、去年2020年は、葛飾北斎の生誕260周年で、それに伴って映画HOKUSAI(柳楽優弥と田中泯がそれぞれ青年期、老年期の北斎を演じる)や、さまざまな浮世絵の展示が企画されているからだ。
メモリアルイヤーは去年だったけれど、ウイルスの猛威のせいで、もろもろが延期になったので、今年は浮世絵をみるなら絶好のチャンスだ。
 
葛飾北斎は富岳三十六景が有名かと思うけれど、あの人の絵は、わたしに音は聞こえない。
わたしにとって、広重は「動」で、北斎は「静」だ。
実際、波が大きく上がっているのが目をひく「神奈川沖浪裏」は、スーパースローで波をみたらあのようになっているらしい。
あれも、やっぱり実物をみると格好がいい。晴れていて自分の真ん中をすーっと風が吹き抜けるようなすがすがしい気持ちになる。
 
せっかくだからこの機会に是非体験してもらいたいと思う。
 
美術館に行くのが好きだというと、わたしもなんですよ、と同意を得られることがときどきある。
でも、浮世絵を好きだと言うひとにはあまりであったことがない気がする。
そして、案外、浮世絵は食わず嫌いになっている気がする。
食わず嫌いで見ない、浮世絵ってちょっとニッチ、分からない、となるのは悔しいな、と思う。あまりひとのことに大げさなことを言うのは好きじゃないけれど、それでも、ちょっと、もったいないな、と思ってしまう。
美術が好きならなおさら。
 
もちろん、わたしと同じ体験をみながするとは思わない。それでも。
日本人が特に好きだとされる印象派の画家たちは、結構、浮世絵の影響を受けている。だから、きっと、それなりに響くものがあるひともいると思うんだけどな。
 
浮世絵、案外楽しいですよ。面白い。
北斎の生誕260年(正確には261年)、浮世絵をみてみるなら、今年は絶好のチャンス。
このチャンスによかったら乗っかってみませんか。
 
 
 
 
***

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2021-06-25 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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