ついに逆転したネコ派! イヌ派の私が思うこと
記事:Mizuho Yamamoto(ライティングゼミ)
「ねぇ、イヌとネコどっちが好き?」
子どもの頃よくそんな話をした。
あなたはどちら?
私は断然「イヌ派」だった。
『名犬ラッシー』『フランダースの犬』
イヌと少年は熱く固いきずなで結ばれていて
ラッシーもパトラッシュもご主人に忠実だっ
た。忠実とえば『忠犬ハチ公』。その行いは、
イヌの鑑だ。
「ねぇ、イヌがさぁご主人が亡くなったのを
知らないで、駅に迎えに行く日本の映画見た
? 私ね、その映画を見て2日間泣きっぱな
しだったの」
と英会話の先生。
「見てないけど、ハチ公のことかな?」
「そうそう! Hachi」
「なんかねぇ、駅に銅像が立ってるらしいの
。今度そこに行きたいなぁ」
「渋谷駅のハチ公だね! 今度一緒に東京に
行ったら、案内するね」
転勤族の我が家は、動物とは縁がなかったが
それでも2回イヌを飼ったことがある。
1回目はドル。シェパードもどきの雑種を、
父が、勤務する自衛隊から拾ってきた。お金
が貯まりますようにと「ドル」と名付けられ、
父に連れられ3歳の私とよく近所に散歩に行
った。10円で10枚入っているビスケットを
ドルと私で分けて食べた。左利きの父が、
「さぁ、ドル! 追いかけてキャッチだ」
一目散に走りだし、地面に落ちるすれすれで
見事にキャッチ!!
「ドル、すごいねぇ」
と拍手する私。
という父のシナリオは毎回打ち砕かれ、走り
もせずにドルは、父が右手に持っている数枚
のビスケットにかぶりつくのだった。もしく
は父の脇に立つ幼い私の手から、ビスケット
を奪い取りもぐもぐ。草原の向こうに投げら
れたビスケットには興味を示さず。ありのえ
さにしてしまうのが常だった。
そんなドルは、私たち一家の転勤が決まった
日に姿を消したまま、帰って来なかった。
2回目はチロ。真っ白な子犬を、これまた父
が自衛隊から拾ってきた。自衛隊は敷地が広
く、ときどき子犬や子猫が産み落とされる場
所だった。
自家中毒で学校を休んでいた小学2年生の私
は、がぜん元気になって一晩中子犬と遊び、
「チロ」と名付けた。一緒に遊びたくて、も
う1日余分に休んだのを覚えている。きれい
好きの母が、玄関内ではなく外に置こうとい
うので、たすき掛けにピンク色のひもを付け
て箱に入れ玄関の外に置いた。夜になると、
「く~ん、く~ん」
寂しそうに鳴くので気になったが、部屋がイ
ヌ臭くなるのを嫌う母からは中に入れるお許
しは出なかった。
朝、目が覚めて、すぐに玄関を開けたら、バ
スタオルを敷いた箱の中には、ピンク色のひ
もだけが残され、チロの姿はなかった。
垣根越しに、庭の手入れをしている隣のおば
さんに、泣きそうになりながら尋ねた。
「白い子犬見ませんでしたか?」
「ああ、朝からうちの庭にいたから、散歩つ
いでに遠くに置いてきた。あなたの犬だった
の? ごめんなさいね。まだ遠くに行ってい
ないと思うから」
それから、朝の短い時間で家族総出で大捜索
をしたが見つからず。登校しても気になって、
授業中もずっと泣いていたら先生が、
「何かあったの?」
「いいえ、また具合が悪くて」
結局早退して、家に戻りながら一人でチロを
探したが見つからなかった。
しばらくは、いつか戻ってくるのではと、気
が気でなかったが、三カ月たってもチロは戻
ってはこなかった。
ある日曜日、父と本屋に行く途中の公園で、
楽しそうな子どもの声と、子犬の鳴き声に
振り返ると、チロが小さなボールを追いか
けては口にくわえて戻る遊びを、はしゃぎ
ながらやっているのが目に入った。
「お父さん、チロ! 間違いないよ、チロだ
」
「よしよし、バロン。いい子だね」
チロはバロンと呼ばれ、頭を撫でられ嬉しそ
うにしっぽを振っていた。
「ドルよりは賢いイヌだったのに、残念だっ
たな」
ちょっとしたことで、手元から離れてしまっ
たチロはバロンとして幸せに暮らすんだと、
幼いながらに納得し、自分に言い聞かせた。
その後、結婚して二人の息子が生まれ、いず
れもイヌ好きだったが飼えなかった。
「朝になると、イヌがわんわんとベッドに来
てほっぺたをなめてくれて、それで目を覚ま
したミシシッピはよかったぁ」
次男のリクエストに応えて、横須賀まで、ス
タンダードプードルを飼っているアメリカ人
の友人宅に泊まりに行って思う存分遊ばせた。
ソファーで並んでTVを見るときも、次男の
肩に手を置いてるイヌの姿は可愛かった。
そこには米海軍佐世保基地で拾われ、息子た
ちの英会話の先生がスポイトでミルクをやっ
て育てた4月生まれのネコの「エイプリル」
もいた。佐世保→ミシシッピ→横須賀と転勤
したそのネコは、誰にもなつかなかった。
いつもどこにいるかわからず、突然飛び出し
てくる。しかし、なぜか私にだけすり寄って
くるのだった。それも夜限定で。
ミシシッピに行った時も、横須賀に行った時
も、ベッドに横になってさぁ寝ようという時
にいきなりベッド下からジャンプして、私の
おなかの上に乗って、
「みゃ~」
いつになく親しげな声で鳴くのだった。
だったら、早く寄ってくればいいのに!
しかし、昼間はネコのプライドが許さないの
か、知らん顔だった。
まっすぐに愛情を示すイヌが私は好きだ。
しかし、屈折した愛情表現しかできない不器
用で無愛想なネコが好まれるこの頃。
人々が、気ままに生きるその姿に共感したく
なっている証拠かもしれない。一生懸命でひ
たむきイヌの姿に、疲れた自分を見るのだろ
うか。
いずれにしても私も、魔女修行のためには、
そろそろクロネコと仲良くせねばと思う。
クロネコを飼っている友人は複数いて、彼女
らは、ずいぶんと魔女化し始めている。
ネコ派になるときは、今かもしれない。
***
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