休みたい休めないと言っていたら
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:塚本 よしこ(ライティング・ゼミ2月コース)
うっうう……
食器も洗い終わり、さあ寝ようというタイミングだった。
急に腹痛に襲われ、しゃがみこんでしまった。痛みが次々に襲ってくる。何これ?
変なもの口にした? お腹を押さえ、身もだえる。こういうのが結石?
とにかく激しい痛みだった。とりあえずなんとかトイレに向かう。
娘を寝かせなきゃと焦りもあるが、どうしようもできない。1時間近い挌闘の後、少し落ち着き、布団に入った。
いやあ、もう勘弁して欲しい。
疲れきって少しは眠れた。しかし、何度も痛みがやってくる。
4時頃だったか、うまく寝付けぬままトイレに行った。
ん? え? 赤い。
こんな時、うわー! ぎゃー! と叫べない私は、何もなかったように布団に戻った。
今のはナンダ?
あー痔かな、痔に違いないね。そう思って、もう一度寝ようとする。
しかし、なかなか眠れない。
よくない病気だったらどうしよう。いや、きっと大丈夫。そんな思考を繰り返す。
朝が近づいてきた。そのうちこれも治まるだろう。今日は休日。明日まで続いたら病院に行こう。
娘の朝ごはんを作る。私は何も受けつけない。まだお腹が周期的に締めつけられる。午前中だけでも、赤い色を数回見た。友達にメールする。
「救急に行った方がいいよ!」
「やっぱり? 車の運転できるうちにいくわ!」
急いで出かけようとした瞬間、また、きゅうっとお腹を締めつけられた。厳しいかも……
結局、友達に休日診療まで送ってもらった。
「腸を休めるために入院かもしれないので、この後すぐ総合病院に行って下さい。紹介状を書きますね」
えっ入院? えっ、総合病院に?
とりあえず今日救急に来ておいてよかったようだ。
タクシーに乗り病院へ向かう。60分待ちとあったが、待合は比較的空いていた。
名前を呼ばれ、問診。それから別室に案内され、気づくとベッドの上にいた。
あっという間に装置が付けられる。
ピーピーピー。覚えのある音と心電図。左手には点滴。あーやだな、こういうの。
しかし、すぐそこに先生や看護師さんがいることで、落ち着いている自分もいた。
「では、CT撮りに行きますね」ベッドが動く。え、歩けますけど。
扉が開き、少し冷えた廊下に出た。天井だけ見える中、方向がぐるぐる変わる。
また扉が開き、白い機械の前に。
長いんだろうか? 途中お腹が痛くなったらどうしよう。動いていいんだろうか?
機械の中に入っていくの?
そうだ、ドラマだと思うことにしよう! 私が怖い時に使う手法だ。
今からはCTを撮るシーン。これは私ではない、私は観察者。
体が大きなドーナツに吸い込まれていく。息を吸ってー、止めて。ブンブンブンブンブン。
ドーナツの中が騒がしい。蜂が飛び交うような、F1のような音がした。
再び体の位置がずれる。息を吸ってー。止めて。ブンブンブンブンブン。
そんなに時間はかからなかった。
なんだ、大丈夫だ。再び天井の白だけを見て、元の部屋に戻っていった。
「虚血性腸炎だと思われます」
やっぱり何もないわけなかったか。
「絶食して腸を休めることになると思います。入院はできますか? 入院はできないとかありますか?」
「あ、あ、何日くらいですか?」
「3日から1週間くらいかと」
先生をじっと見てしまう。
「あ、はい、わかりました」
入院……何から考えていいのか分からなくなった。
えーっと、あっ
「すみません、すみません」看護師さんを呼ぶ。
「やっぱりできるなら入院は避けたいです」
娘の行き先が決まってなかった。
先生が誰かと話して戻ってくる。
「貧血もないので、今日は帰宅していいです。明日、また外来に来てください」
よかった、入院は免れた。
次の日も特に入院を勧められることはなく、経過は良好で帰宅できた。
ただ、しばらく仕事は休むこととなった。
さて、一連の出来事を通して、何を感じたか?
原因は、お腹をこわした衝撃で、腸の粘膜から出血したのでは? ということだった。
けれど、あー、あの食べたものが悪かったのかな? これからはやめておこう! ということには落ち着かなかった。
お餅を焦がす。パンを焦がす。とにかく3回に1度は何かを焦がす。
同じ靴を、間をあけて2つ買ってしまう。眠い眠いが口から出る。
仕事の合間に車で寝てしまう。左目の奥がキーンと痛む。これが最近の私。
職場は手薄な状態が続いていて、「休みたいけど、休めない」
そんなことを数日前に綴っていたところだった。
何かを焦がすのは、私にとってアラームだ。
慌しい、余裕がないと知らせている。
そんな警告を無視し続けると、こんなに激しいアラームが身体に鳴り響く。
結果「休みたい!」という願望は叶った。けれど、こんな方法で叶うなんて!
タスクを重ねても、やりこなせる自分像を持ち続けるのはやめよう。
色んなことに降参していこう。それが、人生後半を生き抜く知恵になりそうだ。
仕事を休んだ朝、そこには起きた瞬間から戦闘モードのいつもの私はいない。
「肩に力が入るね、肩の力も大地にお返ししましょうね」
柔らかい舞の先生の言葉が浮かぶ。
***
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