私の仕事場の相棒
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:青山 聡美(ライティング・ゼミ4月コース)
私は、いつも三人の相棒と共に仕事をしている。今日は彼・彼女らを紹介しよう。
一人目。
彼女は、いつも、静かにモニターの下で佇んでいる。
私をなめらかにして、しっとり、柔らかにしてくれる。
私は、自分がそうなったことを確認すると、まるで幼児の頃に戻った気持ちになれる。
そして、いつまでもその状態を味わっていたくなり、その部分を触り続けてしまう。
また、彼女は甘い花だったり、すっきりとした柑橘系の香りをまとっている。
私はその香りを嗅ぐと、
イライラした気持ちがおさまったり、
次にやることに頭が切り替わったり、
緊張感が和らいだり、
眠気がおさまったり、
こんなことが起きる。
彼女は目を引く色をしている。今回の彼女はピンクと黄色のデザイン。
前回はオレンジ色に花のイラストが書いてあった。
彼女の色づかいやデザインも、かわいらしく、気に入っている。
私は彼女を見てついにっこりとしてしまう。
私は、彼女を手に取り、蓋を開ける。
いつも開け口から漂う香りを存分に嗅ぎ、持つ手にそっと力を入れて、中身を手のひらに出す。
中から出てきたのは、よい香りのするハンドクリーム。
クリームをすり込む。香りを吸い込みながら。
手のひら。
手の甲。
手首。
爪の先。
自分のために、自分で選んだ好きな香り、好きなパッケージの彼女。
しばらく両方の手のひらを鼻のあたりに持っていって、存分に息を吸い込む。
私の中で、何かのスイッチが切り替わる音がする。
「よし、と」
思わず、ひとりごとが出る。
鏡は見ていないけど、口角はきっと上がっているんだろう。
二人目。
彼も、ハンドクリームと同じように、机のモニターの下でいつもじっとしている。
彼は、薄い空色。
握った手の中に収まるサイズ。
たくさんの大小の突起がある。
見た目は、ゲームに出てくる雑魚キャラのようで、とてもかわいい。
そんな色、サイズ、見た目は私好み。
触ると、ゴツゴツ。握りしめると、少し痛い。
たくさんの突起が、手のひらを刺激する。
両手のひらの間に挟み彼を転がすようにする。
何度もやっていると、思わず声が出てしまう。
「あー、痛いー」
手のひらのあらゆるツボがたくさんの突起で刺激される。
親指の付け根あたりは痛気持ちいい。
そして、もっとコロコロしていると、眠気が飛んでいく。
足の裏でもコロコロしてみる。
足裏が温まり、むくみも取れるように感じる。
「これ、かわいいからママにあげるね。使うときっと疲れが取れるよ」
この言葉とともにやってきたこのツボ押しは、小学生の子供からのプレゼントだ。
たしかに、ツボが刺激されて気分がスッキリする。
そして、だれた気持ちからもうちょっとがんばろうかなと思う。
使うたび、私のことを思って選んでくれた子供のことを思い出す。
ちょっと気持ちがささくれだっているたときは、ほっこりとするのを強く感じる。
鏡は見ていないけど、きっと眉間のしわがなくなっているだろう。
三人目。
マウスやキーボードを使っているとき以外は、たいてい彼が右手にいる。
彼によって、頭の中に浮かんだ、たくさんの文字や図が白いページの上で見えるようになる。
そこから、新たなアイデア、疑問がうかんできては、また現れる。
手に持つと軽い。
握る部分にくぼみがあり、フィットする。
色は黄色。元気が出る色。
触り心地もつるつるしていて良い。
動かすとするするとノートの上をすべる。
指先から伝わってくるその感触が心地良い。
こんなにデジタル機器が身近になり、便利になっているのに、相変わらずノートとペンを愛用している。
彼、黄色いL A M Yのペンは、それを使う時間をとても優雅なものにしてくれている。
周りは、iPadやペンタブなど、より便利なデジタル機器やそれらの便利な使い方を教えてくれるけど、このペンを使いたい。
それは、このペンが夫からのプレゼントだからだろうか。
私よりもずっと、仕事中は気に入ったものに囲まれていたい、と思っている夫だ。
彼なりのこだわりで選んでくれた相棒。
仕事についてお互いあまり意気込みなどを話し合ったことはないが、
「よい仕事をしたい」
と思う気持ちはきっと同じなんだろう。
このペンを使うたび、仕事への情熱を感じる。
鏡は見ていないけど、きっと私の目には光が入るんだろう。
いつも彼・彼女らのおかげで、
「いい仕事をしよう」
「いい時間を過ごそう」
そんな気持ちにさせてくれている、大切な相棒たち。
私により、家族により選ばれてやってきた彼らは、私の思い、家族の思いをたずさえて、そばにいてくれる。
「さあ、今日もやるか」
毎朝、お気に入りの彼らを仕事場に見つけて、背筋が伸びるのを感じる。
***
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