『とと姉ちゃん』と『篠笛』は一日にしてならず!
記事:まみむめ もとこさま(ライティング・ゼミ)
細長い竹に歌口と指孔(手孔)を開ける、シンプルな構造の笛「篠笛」。
起源ははっきりしていないが、中国大陸から伝わり庶民の間に大流行。
今も祭りの囃子や、民謡の伴奏、そしてお座敷では舞妓や芸妓が場を盛り上げるための楽器として根づいている。
この篠笛、なかなか音が出ない。特に最初の音を出すのに、数か月から1年、2年かかる人もいるほどだ。しかも音が出たところで7つの穴で音階を作るので、曲を奏でるとなると、これがまた難しい。
実は私は祭りで篠笛を吹くのだが、すべての手を覚えるのに非常に苦労した。なぜかと言うと、楽器にあるべき譜面がないのだ。お稽古では、まず師匠の手を見て覚えていく。メロディは口伝え。「トヒーヒャー」など耳で聞いたままを文字にして書いてはみるものの、それをあとで読んでもピンとこない。実際に吹いている師匠のビデオとあわせてみても、なかなか同じような音にはならない。
この微妙な指の動きや、息づかいは直接目でみて、触れて、実際に目の前でやってみて、そこで指導してもらわないとわからないものなのだ。
そんな大変な思いをしてなんとなく基本を覚えたとしても、実はここから篠笛の難所が待っている。篠笛は歌口の横の穴から左手の人差し指、中指、薬指を下から回して押さえていき、右手は上から人差し指、中指、薬指、小指の順番に指を置くのが正しい持ち方。あとはそれぞれの穴を開けたり塞いだりしてメロディにするだけ。
しかし微妙な指の開け閉めが、篠笛の味ともいえるビブラートになるため、これができず、ここで挫折する人も多い。
左手の中指をポンポンと軽く叩く間に、人差し指を少しだけ開けて飾りの一音を生み出す。これを上手い人がやると「ピヨロヨロ~」と気持ちよく鳴るが、下手な人は、人差し指を開けすぎたり、中指とのタイミングが合わなかったりして「ホンヤ、ホンヤ、ホンヤ」となんとも間が抜けたものになってしまう。
では上達するためにはどうしたらいいのか!?
それはとっても簡単。毎日吹くのみ。
みんなが「あいつ祭りが終わったのに、まだ笛吹いてやがるよ、おめでたいね」なんて陰口にも負けず、ひたすら指を動かして笛を吹く。
この努力こそが篠笛がうまくなる唯一の近道だ。
現在、放映しているNHK朝ドラ『とと姉ちゃん』が高視聴率で話題となっている。私も毎日楽しみにしている視聴者の一人。
最初は何を隠そう“とと”である西島秀俊さんに惹かれて見始めたが、彼の出番が終わった今でも、朝の8時になるとチャンネルをNHKにあわせてしまう。
それはなぜか?
このドラマのストーリーが面白いのはもちろんだが、それだけではない。主役である小橋常子(高畑充希)一家の丁寧に暮らす姿は、朝見ていると、なんだかこっちまでシャキッとして、背骨がピンとのびて、それがとても心地よいのだ。
しかも小橋家の人々は言葉づかいがとてもキレイ。敬語を駆使しているとかではなく、誰に対してもきちんとした受け答えをするやり取りが「親しき中にも礼儀あり」を連想し、好感がもてる。
私の大好きな“とと”も、男性なのに決して声を荒げることはなく、子どもたちに対しても丁寧に接している。それは媚びているのではなく、子供でも一人の人間として尊重し、敬意を表しているのだ。
その姿は私に伝播して、小橋家の一員に加わった気分でしぐさや、言葉が丁寧になっていることに最近気づいた。家でも靴を脱いだら膝をついて揃えてみたりする自分に、驚くこともある。
さて今年はリオのオリンピックがあり、2020年にはオリンピック、パラリンピックが東京で開催される。
そもそも、出来るのか! という山積みの問題は置いといて、外国からいっぱいのお客さんが押し寄せてくることは予測できる。
では私たちはどうすればいいのか?
その時に備えて英会話などをやるよりも、実は毎日毎日を丁寧に暮らし、この穏やかな姿を含めて「おもてなし」をする……これこそが“ジャパニーズ暮らしっくスタイル”なのではないかと私は思う。
いつもついやってしまう歩きスマホを控え、電車の中ではおもむろにメイクはしない。子供も大人も公共の場では走らない。大きな声でのおしゃべりも慎む……なんて当たり前のことを意識して暮らしてみよう。
これは事前に迫ってから始めても、かえってちぐはぐになって恥ずかしい。篠笛の練習と同様、日々意識しながら暮らしてみるのが大切だ。すると知らない間に、自然としぐさが身についてくる。
まずは朝ドラの小橋家を見習って、言葉づかいから替えていくのも効果がありそうだ。
“ローマは一日にして成らず”ではないが、キレイに丁寧に暮らせば、みんなが気持ちよくなり日本を訪れた人たちも笑顔になって好印象は間違いなしだ。
しかもやっているこちらもすがすがしい気分になると言う嬉しいおまけもついてきて、さらに毎日がウキウキしちゃうはず。
「嘘だ!?」と思った人は、とりあえず10分でいいから小橋家を真似してもらいたい。この心地良さが、必ずわかるはずである。
そして篠笛は、実は上手になるにはヒケツが一つだけある。
指にばかりに意識を集中している人は、いつまでたっても「ホンヤ、ホンヤ~」のままだ。だが、両肘をピンとはり、指をキレイにのばして吹くとあら不思議「ピヨロヨロ~」の澄んだ軽い調べが響き渡る。
もしどこかで篠笛を吹いている人がいたら、その立ち姿をとくとご覧あれ。
かっこよく凛々した姿で吹いている人は、音色も繊細で細やかなはずである。
そしてそっと後ろに回ると、その姿は勇ましく両羽を広げている誇り高き鳳凰のようで、これがまた、かっこいいのだ。
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