写経を180日続けてみて気付いたこと
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:板井さやか(ライティング・ゼミ6月コース)
2022年1月17日を1日目として数え始めると、100日目は4月26日で、150日目は6月15日、そして200日目は8月4日である。
これらの日付は私にとって非常に重要なマイルストーンとなっている。
2022年1月17日に写経を始めた。
それから1日も休まず毎日写経を続け、これを書いている今日時点で183日連続と日々記録を更新している。
特に何か成就してほしい強い願いがあるわけではなく、ただ毎日淡々と続けているだけ。
ただ、この毎日淡々と続けることが私にとってとても重要な役割を果たしている。
最近、本当に書く機会が減ったと感じる。
テレワークになり仕事で使う資料は印刷せずに全てPC上のデータとなり、ミーティングや電話のメモも紙には書き込まずPC上の付箋やメモに打ち込むようになった。
年賀状の宛名も印刷だし、手紙なんてもう何年も書いていない。
そんな状況で久しぶりに字を書くと、その下手さに驚愕する。
ある日子供の頃によく怒られた「みみずが這うような字」を自分の日記で見つけ、「大人になってこんな字では恥ずかしい」と感じた。
思い返すと、小学生の時は字の上手下手より丁寧さが重視されていた記憶がある。
6年間通った習字教室ではとめ・はね・はらいを丁寧に、縦と横の線や点の数を正しく書くことが大切で字そのものが目的だったが、年を重ねるにつれて字は手段となった。
周囲も自分も書く機会が減っている状況で、渋いおじさまが万年筆で綺麗な字を書いているのを見た時は心から惚れ惚れした。
私もきれいな字が書けるようになりたいと思い、最初は手軽にできるペン習字にチャレンジしようとテキストを買ってみたものの、まず棒線や波線から始まり、日常では到底書くことのないサイズの文字の大きさに辟易し、早々に挫折したのが去年のこと。
それから特に何もせず年が明け、新年の目標をたてた数日後に「何か続けてみたい」と思いつき、始めたのが写経である。
「写経」と聞くと、お寺で墨をすって正座をしながら祈願成就の願いをこめて行う、非日常と考える人が多いと思う。
私も始めるまではなんだか尊い行いという印象で、自宅で気軽にするものとは考えていなかった。
そんな写経と日常が結びついたのは、知人がコロナ禍で写経を始めたことをSNS上で知ったことがきっかけだ。
彼女は1日目から毎日ブログにその日書いた写経の写真をアップし続け、その時は「毎日続けていてすごいな」と思った程度だった。
本来の動機として正しいかは別として、私は「字を丁寧に書く」と「毎日何か続ける」ために写経を始めた。
最初は丁寧に筆ペンで全身全霊を込めてやっていたため、体がガチガチになるほど力をいれていた。
机と頭の距離も近く、30分机に向かい写経をした後は肩こりと背中の痛みが酷く、これでは続けられないと思っていたが、
全世界の平和が私の写経にかかっているわけではない、と気づいた今では好きな音楽やラジオを流しリラックスしながらボールペンで20分程度で済ませるようになった。
祈願も初めのころは書いていたが、最初から何か願いを叶えるための手段として始めたわけではないので、今ではシンプルに最後は日付と「謹書」で締めている。
180日続けた現在、写経の効果として心が落ち着いて無になれることを実感している。
よく言われるフロー状態というものだろう。
目的であった字を丁寧に書くことを意識することで他のことを考えずに目の前にあることに集中でできている。
だが、それよりも重要なのは毎日続けると決めたことを続けているという事実が、私にとって大きな自信になっているということだ。
元旦ではないなんでもない日にまずは気負わずにゆるく始めて、3日続いたら「やったー!3日!」、それが1週間、10日、2週間、3週間、1ヶ月となり、付き合いたてのカップルのように都度節目の記念日を喜び、自分を褒めている。
桜の季節に50日、ゴールデンウィークで帰省中に100日、先月150日を達成した日はお気に入りのマグカップが割れた悲しみが吹き飛ぶ程の喜びを感じた。
これまでイタリア語講座やラジオ体操など気合十分で始めても結局は長続きしなかったことも多く、その都度罪悪感や自己嫌悪を覚えることもあったが、
今回たまたま性に合ったのか写経を1日も休まず続けられていること、その事実は私の自己肯定感を上げてくれている。
仮にこれが写経ではなくペン習字でも、瞑想でも、ヨガだったとしても変わらないはずだ。
ただ何かを毎日続けると決めてそれを淡々と続けること、それは自信を与え、自己肯定感を上げる力を持っているのだ。
写経を続ける効果として、字が上手になるのはただのボーナスである。
***
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