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学び直しの先にあるもの


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:阿部真巳(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
「おっしゃー、SSキター」
「パパすごーい」
スマホゲームのガチャで確率1%のレアカードを引き当て親子で盛り上がる。
レアカードを引き当てるのは確率の問題なので親としての面目躍如、という表現は少し違うかもしれない。
 
「学び直し」という言葉が流行語大賞になったのは2018年。そんな言葉が注目されることこそ、日本の社会人が、いかに学んでいないかということの裏返しであろう。
かく言う自分もリビングでゴロゴロしてTVを見るか、スマホでゲームをしているかであった。
このような姿を見て育つ子供は必然的に親に似てしまう。
 
そんな生活をつづけたある日、仕事で壁にぶち当る。
それまでゲームをしながらも、ビジネス書を読み勉強はしているつもりだった。
しかし、ビジネス書で学ぶだけでは限界がある。そんなことを思い始めた矢先のことだった。
リビングでゴロゴロし続け、挫折感を味わいながらの人生では現実逃避でしかない。
そんな人生は嫌だ。
一念発起して社会人大学院への入学を決意する。
目指すのは経営学修士=MBA。
いわゆるFランク大学卒業で、地方の中小企業勤務の私にとっては雲の上の世界だ。
そこに通う人たちも、一流大学卒の一部上場企業に勤めるキラキラしたキャリアの天上人達。
入社以来、内勤で外の世界を知らない私は、自分の実力が世間の中でどのあたりにあるか、という事さえわからなかった。
キラキラした天上人ばかりの環境で、ついていけるのかという言う不安、人間関係がうまくいくのかという不安もある中で、勇気をもって踏み出した一歩。
入ってみると、企業の規模や学歴は関係なく、同じ課題を抱えた人たちばかりで、年齢や立場を越えた仲間として切磋琢磨し、楽しく学ぶとこができ、大きく世界が広がった。
ただし、楽な道ではなかった。
会社から帰宅後にすぐに部屋にこもり、深夜、場合によっては明け方まで勉強に明け暮れる毎日。
土日は通学のため、朝早くから家を空けることも多くある。
遅くに帰ってくると、妻がダイニングテーブルで何かの本を読みながら寝落ちしていることもあった。
当然リビングでゴロゴロしている暇もなく、TVもほとんど見なくなり、ゲームも引退する。
必然的に家族と過ごす時間も少なくなる。
この時、長女は中学1年生。2年後に中学を卒業し、私も同時に大学院を卒業する。
私は卒業するだけなのだが長女は高校受験があり、新たなスタートを切るタイミングでもある。
 
何事も真剣に取り組んでいると時間の経過が早い。
あっという間に大学院2年目の夏を迎え、私の忙しさはさらに加速する。
長女も受験シーズンに入り、親としては子供がどの位置にいるのか気になるところではあるが、最近の中学校は学校で偏差値を出さない。
そこで、時々子供の部屋へ様子を伺いに行く。
「塾の成績見せろよ~」
「やだー」
「見せないとスマホ止めるぞ!」
「スマホ止めたら勉強しないぞ!」
あっさり反撃され断念する。
そんなやり取りが続くうち、見かねた妻が子供机の引き出しから成績表を持ってきてくれた。
「これが、あの子の成績表よ」
「……! 偏差値67?」
そこには自分では取ったことのない数字が並んでいた。
私自身が英語と数学が苦手であったため、小さい頃から公文の英語と算数に通わせていた。
しかし、それだけ。
流石に中学に入ってからは学習塾に通わせていたが、そこまで厳しい塾でもなく、家庭教師もつけたことはない。
「あなたが勉強をするようになってから、言われなくても勉強するようになったのは知っていた?」
「……」
「気づかないわよね、あなたも部屋に籠って勉強しているのだからね」
以前は、どんなに「勉強しろ!」と言っても勉強をしなかった長女が、自ら進んで勉強をするようになるなんて。
やはり、リビングでゴロゴロしている親のいう事は説得力がなかったということか。
そして、言わなくても、親の背中を見て育ってくれたのなら、大学院に入学し、学び直しをした甲斐があったというものだ。
 
翌年3月
県内最難関高校の合格発表日。
10時頃に発表の予定だが、その日は会社の全体会議。私は会社で仕事をしながらLINEの連絡を待つが、なかなか連絡が届かず仕事にならない。
10時20分を過ぎたあたりにLINEで「う」の一文字
「かった?」と返信
「うん」とメッセージ
思わずガッツポーズと共に「よし!」と声が出てしまい、会議出席者の注目を浴びてしまった。
模試の結果は合格圏内であったとはいえ、やはり親としては心配だった。
 
長女の入学手続きも終わり、次は私の卒業式。
「みんな、卒業おめでとう!」
「せーの!」
五月晴れの青空にアカデミックガウンを着た卒業生が投げた帽子が舞う。
周りが皆優秀な人たちばかりだったが、努力の甲斐もあり、まあまあ良い成績で卒業することができた。
何よりも共に学んだ仲間との絆が一生の財産となる。
 
長女の入試発表、卒業式と高校入学式、私の卒業式という、いつになく慌ただしい日々が続いたが、それらも落ち着いたある日。
自宅のポストに妻あての大きな封書が届いている。
それをもって自宅に入ると、妻がダイニングテーブルで寝落ちしている。
テーブルの上にある本のタイトルは「ファイナンシャルプランナー2級検定」
「……?」
私の足音で妻が目覚めたようだ。
「おかえりなさい。それ届いたのね。」
手元にある封筒を見ると「ファイナンシャルプランナー3検定合格通知書」と印刷がされている。
長女だけでなく、妻も私の知らないところ、いや、私と一緒に勉強をしていたのだ。
そして、次はファイナンシャルプランナー2級の試験に向けての準備を始めている。
 
学び続ける勉強習慣。
切磋琢磨できる生涯の仲間。
そして、家族それぞれが向上心を持って得た成長と成功体験。
これらが学び直しで私が得たものだ。
きっと、これからも壁にぶつかり、挫折を味わう事もあるだろう。
でも、大丈夫。
私たちは学び続け、仲間や家族と共に壁を越えてゆくことができるのだから。
 
 
 
 
***
 
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2022-08-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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