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人生を変えた一品 ~ハンバーグ編~


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記事:串間ひとみ(ライティング・ライブ福岡会場)
 
 
わが家での「ハンバーグ」の定義。
 
気軽に食べられるものではなく、たまの外食で食べる特別な料理。お子様ランチのメイン料理で、できれば、最後に締めとして食べたい一品。ソースは一択のみ。当然デミグラスソースやジャポネソースなど、たくさんの種類があることなど知る由もない、というものだった。
 
それなのに大学生になって初めてできた彼氏にリクエストされた料理がハンバーグだった。
 
その当時の私は、全くと言っていいほど料理ができなかった。実家にいるときは、母が料理するのを手伝ったことはほとんどなかったし、留守のときにはそれは料理が得意な弟の仕事だった、そのため、大学生になって一人暮らしになったとき、一番困ったことも料理だった。何せ外食にはお金がかかるので、当然自炊という流れになる。
 
そんなマリオでいえば、クリボーやノコノコレベルとしか戦えない料理初心者に、
 
「ハンバーグが食べたい」
 
という彼の一言は、いきなりラスボスのクッパに挑戦しろと言っているようなものだった。
 
しかし大好きな彼の頼みである。料理ができないなどと、口が裂けても言えないのが、恋する乙女の心境である。練習する時間もなかったが、やるしかない!
 
意を決して本屋に行き、一番解説が詳しく、かつ簡単そうなハンバーグのレシピが載っている料理本を購入。材料のメモを取り買い物へ。今でこそ、分かるが、多少ないものがあってもハンバーグ、というかたいていの料理はその食材が完璧にそろってなくても作れる。しかし料理初心者の私にとって、レシピの食材と分量は絶対であり、心配しすぎて、すべての材料を多めに購入したため、何人分作られるのですか? というとんでもない量になった。
 
どうにか家にたどり着き、いざ調理開始!
①玉ねぎの皮をむいて、みじん切りして、炒める。
②①とひき肉と、牛乳に浸したパン粉と、卵、ナツメグ、塩、胡椒を混ぜ合わせる。
③②を楕円形に丸め、真ん中を少しへこませて焼く。
④ケチャップとウスターソースを混ぜてソースを作る。
 
ざっと書くとたったこれだけの工程に5時間。
 
料理初心者の私でも、5時間もかければ、さすがにそれなりのものができたのだ。
 
約束の時間に来た彼は、私のハンバーグをとても喜んでくれた。
その日、彼女としてのミッションを無事クリアして満足したのも束の間。次の日にはさらに恐ろしいミッションがやってきたのだ。
 
「友達がハンバーグ食べたいって。また作って欲しい」と。
 
私にとっては大仕事だったが、なんてことないそのハンバーグをよっぽど気に入ったのか、友達に自慢をしたとのこと。
 
内心
「何してくれてんだ」
と、怒り狂いたい気持ちでいっぱいだったが、彼氏と、彼氏の友達への見栄のために、再びクッパならぬ、ハンバーグに挑戦することになった。
 
そしてこれがまた、好評すぎて、友達に褒められたことも上乗せされ、彼氏の中で私は料理が上手な彼女というレッテルを張られてしまうこととなった。
 
その後、彼氏の所望する料理を作り続けているうちに、いつしか料理も少しずつ要領を得てきて、気づけばそれなりに作れるようになっていた。私が料理を続けていけたのは、彼自身も料理を作ることが好きで、洋風居酒屋でバイトをしていたため、その当時の私には珍しかった料理をたくさんごちそうしてくれたことだ。そして、私が作った料理に、いつも適切な感想とアドバイスをくれていたため、もっと彼の期待に応えたいと、頑張った結果だ。
 
結局、その彼とはいい別れ方はしなかったけれど、とても感謝している。彼のおかげで、私は料理が好きになったし、それだけでなく料理を教える仕事をすることになった。20年近くその仕事をしたにも関わらず、実家でほぼ料理をしなかったため、最後の最後まで家族は私が料理の先生をしていることを半ば疑っていたほどだ。
 
ちなみに、私を料理の世界に導いてくれた彼は、その後も料理の勉強を続け、今はオーナーシェフとして自分のこだわりのつまったレストランをやっているらしい。まだ付き合っている頃に、いつか自分のお店を持ちたいと言っていた夢を叶えている。
 
彼のおかげで、私は苦手だった料理が好きになり、上手になり、仕事になり、それを通してたくさんの経験と、たくさんの人とかかわることができた。料理を通して得たものは、本当に多い。もしかしたらその後、どこかの段階で料理にかかわることがあったかもしれないが、今は本当に彼のおかげだと思うし、感謝しかない。
ありがとう。そして彼は、きっと今も素敵な料理を作っていることをうれしく思う。
 
 
 
 
***
 
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2022-10-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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