違う意味で秘めておきたい秘めフォト
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:鈴村文子(ライティング・ゼミ12月コース)
秘めフォト。それは天狼院書店で行われる、自分史上最高にセクシーな1枚を撮るという、女性限定のイベントだ。
私がそのイベントのことを初めて知ったのは、今から4年ほど前、もやもやさまぁーずというテレビ番組を観ていたときだった。本来は、下着をつけているだけの、ほぼ裸の写真を撮るという。テレビ番組の中では、女性アナウンサーが、服を着たままで撮影されていたが、その、自分史上最高にセクシーという言葉に、私の心は鷲掴みにされた。
しばらく経って、池袋の天狼院書店に行く機会があった。秘めフォトのチラシが置いてある。初めて、秘めフォトというものを目にした私は、全然、いやらしさは感じず、むしろ、とても美しい、と感じた。こんな風に撮ってもらえるなら、参加してみたい、とチラシを興味深々に見ていると、スタッフの方が話しかけてくる。「秘めフォト、とてもいいですよ」と勧められたが、自分の裸の写真を撮ってもらう勇気が、どうしても出なくて、申し込むことはできなかった。
それから何度か、天狼院書店に行く機会があり、その度に秘めフォトのチラシを見ては、参加したい、でも、裸の写真を撮ってもらうなんて恥ずかしい、という気持ちが行ったり来たりして、結局、申し込まずに帰る、ということを繰り返していた。
そんな私が思い切って秘めフォトへの参加を決めたのは、夫の従姉妹が亡くなったことがきっかけだった。40代後半で、私よりはいくつか年上だが、亡くなるにはまだ早い年齢だった。人見知りの私が、ぽつんとしていた親戚の集まりで、話しかけてくださって、とても嬉しかったことを覚えている。最近はコロナ禍で、その親戚の集まりもなくなってしまい、しばらくお会いしていなかったけれど、まさか、そんな急に亡くなるなんて、とてもショックで、信じられなかった。そして、人生、何があるのか分からない。やりたいことがあるなら、思い切ってやってみよう、という気持ちになったのだ。
申し込んでから撮影の日までは、あっという間に過ぎた。案内のメールには、白か黒の下着をお勧めします、と書いてあったので、特に深く考えもせず、自分の持っている白い下着にしようと決めた。これが大きな間違いだった。
いよいよ、撮影の日がやってきた。写真映えがするように、いつもは眼鏡だが、コンタクトにした。いつもはファンデンショーンしか塗らないのに、マスカラやアイラインまでして、自分でできる限りのメイクをした。そして、お気に入りの服を着て、ウキウキした気分で会場に向かった。
会場に着くと、先に来ている人がいて、私は2番目だった。今日の参加者は全部で6人。撮影は1人ずつ行われ、他の5人はそれを見守る。初めは、私も含め、皆が恥ずかしそうにしていたが、最初の人の撮影を見ているうちに、自然と、わあ! すてき! などの声が皆から上がり、その場の熱が高まってくる。皆、とてもきれいで、私もこんな風にできるのかしら、と少し緊張してきたところで、とうとう私の番が来た。皆が、きれい! かわいい! と言ってくれて、私も気持ちが乗ってきた。カメラマンの指示にしたがって、表情を作り、ポーズを決めて、自分が自分でないようだった。また、他の人の撮影のときには、周りの人と顔を見合わせて、すてきですね、と言い合った。それはまるで、友達と恋の話で盛り上がった、修学旅行の夜のようだった。先生の見回りも終わり、消灯してからの時間。こそこそと好きな人の名前を言い合った、少し悪いことをしているような、でも、とても楽しかった、あの感覚。最初に秘めフォトのことを知ってから、3年くらい経っていた。長い間、参加するかどうか、悶々と悩んでいたけれど、思い切って参加して良かった! 最高の気分で撮影は終わった。
写真は、その日のうちに、データで届くという。家に帰って、データが届くのを、今か今かと待っていた。最高に楽しかったのだから、あのチラシのような美しい写真になったに違いない、と期待は高まるばかりだった。やっと、データが届いたので、わくわくしながら、1枚ずつ見ていくと、違和感を感じる。あのチラシと何かが違うような……。違和感の原因がはっきりしたのは、上半身裸の後ろ姿の写真だった。ただでさえ、お尻に自信などないのに、下着の生地が透けていて、ボロボロだったのだ。全然、美しくない。ああ、恥ずかしい。こんなボロボロの下着をつけていたのに、皆からかわいいと言われて、いい気になって、ポーズを決めていたなんて。
期待していた気持ちでいっぱいに膨らんだ風船が、急にしぼんでいった。就職試験のグループディスカッションで、グループの中で1番目立つ活躍をして、同じグループの人からも、きっと内定取れるよ、と言われて、自信があったのに、届いた結果が、不採用だったような気持ちだ。
勇気を出して参加を決めたのに、とても恥ずかしくて、残念な写真になってしまった。秘めフォトの本当の意味は知らないが、裸の写真を撮るのだから、秘めておきたいのは当然だろう。私の場合は、また、違う意味で、秘めておきたい秘めフォトとなった。
とはいえ、イベント自体は最高に楽しかった。新しい下着を準備して、また参加したい。今度こそ、秘めフォトのチラシのような、美しい写真を残したいと思っている。
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