「1年半懐かない保護猫に懐かれる、特別であって特別じゃない方法」
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記事:なかはらあき(ライティング・ゼミ4月コース)
2006年にキジトラの子猫姉弟を友人から譲り受けました。姉猫の猫姫(仮名)が亡くなったのは彼女が14歳の時でした。脾臓を悪くして摘出施術を行い、しばらくは元気に過ごしていましたが、14歳を迎えて直ぐに体調が急速に悪化し、あっけなく天国へ行ってしまいました。
猫姫(仮名)は、猫や人の面倒見るのが大好きで、少し神経の細いところのある猫でした。マイペースでのんびり屋、本当に嫌なこと以外は文句を言わない弟猫のプリンス(仮名)からみると、すこし面倒なところがあったのか、二匹には微妙な距離感がありました。
そんな距離感のある二匹ではありましたが、時折仲良く話していることがありました。私が見ていないと思うと、猫語らしき言葉で会話をしているのです。弟猫が「んにゃんにゃんにゃ?」と問いかけると隣にいる姉猫が「なー・・」と受け答えします。そのやり取りは、私に見つかるまで続くこともしばしばありました。
猫姫を看取り、骨も拾った夫は、心の整理をするのが早かったように思います。
プリンスに猫の話し相手がいたほうがいいと思ったのか、猫姫が亡くなって2か月もすると、彼が寂しくないように、新たな同居猫を探すため保護猫カフェ巡りを始めました。
ところが夫の希望である、プリンスと仲良くしてくれそうな「猫好きな大人女子猫」は、なかなか見つかりませんでした。そんな時、私が偶然ネットで見つけたのが「保護されて5年間保護猫カフェにいる」猫たちでした。5年も猫カフェにいるなら、猫は大丈夫なのではないかと思ったのです。
実際に猫たちに会い、夫の好みと「強烈に憶病はあるものの、触っても怒らず凶暴性もない」という理由で選ばれたのが、現在同居している猫女子(仮名)です。
6歳のはちわれの白黒猫で、我が家へ来て半年も、怯えて体を隠し、全く出てこようとしませんでした。
その間、寒くないように色々敷物をもってきたり、ご飯をあげようとすると、「シャー」と言って怒られ、爪でざっくり引っかかれたり頭を叩かれたりで散々でした。
幸い、猫プリンスや夫とはどんどん仲良くなっていってくれましたが、1年半を経過しても、相変わらず私にだけ懐かない猫女子がいました。私が近づくと、「脅す」「隠れる」「攻撃する」の3パターン。溜息しかでませんでした。
そんな私を救ってくれたのが「ビビリ猫米子さんに懐かれたい」という漫画エッセイでした。
この本に出てくる米子さんは、保護猫カフェから貰われてきたハチワレの白黒女子猫で、長きに渡り隠れて全然姿を現さなかったり、お世話をしているだけなのに目が合うとシャーシャー威嚇するなど、猫女子とあまりにも共通点が多く、私は連載しているブログも含めすべてを一気に読んでしまいました。
その漫画エッセイの中で、米子さんは作者の女性には徐々にお腹を見せたり傍に来てくれたり、一緒に寝てくれたりするようになりますが、米子さんが大好きでお世話もせっせとしている、同居人の男性には6年経っても全く懐いていないと描かれていました。
でも、米子さんがどんなにシャーシャー言っても、怒って猫パンチをしても、隠れて出てこなくても、少しも懐かなくても、お二人共ほんの少し米子さんが振り向いてくれたり、一瞬体をつけてくれただけで、喜んだり、感動したりしていらしたのです。。
お二人が猫を飼うのが初めてで他に比べる猫がいなかったので、それがスタンダードになったのはあるかもしれません。でもその日から私はお二人がそうされたように、猫女子が何をしようと、どうあろうと、存在そのものを、可愛いと思ってみる事にしました。
するとどうでしょう。あれほど懐かなかった猫女子が、威嚇や猫パンチする回数を減らし始めたのです。その代わり、暇さえあれば私を離れた場所からじっと観察するようになりました。その状態が半年ほど続いたある日、自分から触らせてくれるようになりました。
「1年半懐かない保護猫に懐かれる、特別であって特別じゃない方法」それは、「猫の存在そのものを受け入れて、何をしても可愛いと思う事」「特別に何もしない事」だったのだと、漫画エッセイと自身の経験から今では思います。
2年半がたった現在。猫女子は、朝はハグとマッサージを楽しみ、家に帰ると玄関で待っていて、にゃおにゃおと鳴きながら一緒に二階に上がります。そしてふわふわの毛を撫でさせてくれます。
これを書いている今も私をじっと見て、猫タワーの柱の裏に隠れつつ、撫でられるのを待っています。
猫の米子さんのお話は現在も連載中で、ブログで楽しく読ませて頂いています。今でも保護猫との付き合い方を教えてくれる、素敵なバイブルになっています。
【参考文献】
浜村ごはん『ビビり猫・米子さんに懐かれたい。』(KADOKAWA)
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