占い師の文章力
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:小松 鈴(ライティング・ゼミ2月コース)
ここ最近良くないことが続き、少々疲れていた。なんか良いことないかなーなどとスマホでネットサーフィンをしていたら、メール占いというものを知った。
電話占いなら知っていたけど、対面式は少なくなり、占いも電話やメールが主体になっているのか……と思いつつ、「初回無料」に乗せられついやってしまった。ら、結構当たっていたのでハマってしまい、かなり散財してしまった。
なぜここまで熱中してしまったのか。
鑑定士の文章が、めちゃくちゃ上手かったのだ。
ここだけの話だが、メール占いの文章を鑑定士が書いていることは少ない。もちろん実際に自分の言葉で文章を綴っている鑑定士もいる、と信じたい。けれど私はwebライターを仕事としているので、「占いの文章書ける人募集」という案件を嫌になるくらい見ている。(鑑定士の名誉のため付け加えるが、ライターが適当に鑑定結果を書くのではない。鑑定士が出した結果をライターが分かりやすい文章にする、という仕事だった。……ほとんど)
おそらく鑑定士は、依頼者の未来や運勢を観ることはできても、それをうまく文章に伝えることは出来ないのかもしれない。直接話をするのと、文章で結果を伝えるのでは、受け止め方にズレがある場合もあるからだ。
対面や電話と違い、文章というものはとても繊細で一筋縄ではいかないということを、このゼミで充分に叩き込まれた。言葉ひとつで誤解させてはいけない。占いを依頼するのはほとんどが女性、しかも何かしらの悩みを抱えているからこそ、電話なりメールなりを使って占いをお願いしているのだ。不快な気持ち、不安な気持ちにさせてはいけない。あまり良くない運勢が出ても、上手に伝え、アドバイスしなくてはいけない。スピリチュアルな力は当然だか、コミュニケーション能力も必要な仕事だと思う。
私がそのサイトに登録したら、毎日のように色々な鑑定士から連絡が来て少しウンザリ気味だ。
「いま最高の波が来ている」だの「ここを乗り切れば運勢が大きく変わる」だの。おそらくみんなに同じような事を書いているのだろう。しかしそのなかでひとりだけ、具体的に私が遭遇したこと、その時期まで言い当てた鑑定士がいた。ちなみに私が出した情報は、性別と生年月日のみ。本名も明かしていない。メールのみのやり取りなので、インチキ占い師がする「ホットリーディング(事前に相手のことを調べて、あたかも鑑定しているように見せる方法)」という手法はできない。なのにどうして?
この人は本当に私を「観て」いるのかもしれない。そう思うと、つい返事を出してしまった。そうなればもう相手の思う壺。
「いまこのような状態ですよね? でも大丈夫、私がこのような事をすることで、運勢はよくなります。ですから質問に答えて、返信ください」。
肝心な所で止める。確定的な言葉は決して書かず、あくまで「あなたのために書いている」と言う文章。完璧なセールスライティング! 「もう少し先が知りたい!」と言う気持ちで、つい課金してしまう。すると更に返信が来て「すごく上手い流れになってきましたよ! でもこの運勢、もっと強力にしたいですよね? 次はこの質問に答えてください」。これが5〜6回繰り返されて、ようやく鑑定終了となったが、気がつけば相当な金額を遣っていた。隠さずに書くが、一回のメールで1650円だった。それが6回。まあ面白かったし、ためになったので良かったけれど、さすがプロ、きっちりと仕事をやり遂げた。
今回のことで、スマホゲームに廃課金する人の気持ちがよく分かった。
今までは廃課金者に「そんなにお金遣っても、イラストがスマホに入るだけなのに」と思っていた。けれど、違う。レアキャラが欲しいのは本当だけれど、「欲しい、と思わせるマジック」に引っかかってしまったのだ。もちろんマジックだから、タネがある。スマホゲームは「このレアキャラを持っている、という自己満足や承認欲求を満たすため」お金を遣っているのだと思う。同様に占いでは、抜群の文章力と、鑑定士のリーディングが私を惹きつけてお金を遣ってしまった。
どちらもカタチにならないものだが、「もう少し、もう少し」という気持ちが抑えられなくて、お金を出してしまう。願い叶ってレアキャラを手に入れられたら、鑑定で「良い運勢を引き寄せられました!」と報告されたら、満足感でいっぱいになる。嬉しくて、いっときの間は金額について考えない。後から請求書を見てギョッとするのだ。
占い師からのメールは今でも毎日届く。最高の金運が来ているだの、ここを逃せばもうチャンスは来ないだの。毎日メールしてくる鑑定士もいるので「何か返信しないと悪いかな」という気持ちになってしまう。多分私は、宗教にハマるとか印鑑を買ってしまうタイプだ。
退会しても良いのだけれど、面白い文章を書く人がいるので、読むのが止められない。いきなり「私とあなたはソウルメイトです」と送られた文章には吹き出した。ソウルメイトならタダで鑑定してくれよ、と突っ込まずにいられない。
副業ライターをしていたとき、占いについて記事を書いたことがあるのだけれど、占いに依存し過ぎて、今日着る服も鑑定してもらわないと選べない、という人もいるらしい。
自分の満足できる鑑定が出るまで延々とサイトを回る、という人もいる。ここまで行くと「占い依存症」と言ってもいいかもしれない。そういう人に粘着されたら、鑑定士も大変だろう。ある鑑定士は、依存し始めたお客様にはあえて厳しく「もう占いは辞めなさい」と突き放す人もいる。過去に依存した方に振り回された経験かららしい。
占いは、好きな人にとってはとても楽しい。私も占いが好きなので、よく分かる。でもそれで自分の人生を鑑定士に丸投げすることは、違うと思う。「占ってもらったのに、全然当たらなかった!」と怒るのも、違うと思う。
占いはあくまで「こういうことが起こる『かも』」という助言。運命を切り開くのはあくまで自分なのだから、それを忘れてはいけない。チャンスの女神は前髪しかない、と言う。出会い頭にさっとひっ捕まえないと、スルリと逃げられてしまう。占いは、その時期を示唆し、チャンスをものにするためのアドバイスだ。
鑑定でいくつか助言をもらったので、実践しつつ「女神はどこかなー」と目を光らせながら待ち続ける日々だ。
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