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ライティングゼミでの学びと問い合わせ対応のノウハウを活かしてちょっと難しい費用請求をしてみた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:古川 実花(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「水出ーへん!」
 
シェアハウスの共用キッチンで野菜を炒めていると、同世代の女の子の悲鳴が上がった。
 
「え、全然出ーへんねんけど」
「これってキッチンだけ?」
 
晩ご飯を作る手を止め、キッチンにいる5,6人で現状確認に動いた。
 
「トイレもお風呂もやったらキツくない?」
「ちょっと見てくるわ」
 
「建物内だけなんか、この辺一帯のことなんかわからんよな。ちょっと近くのコンビニに聞いてみる」
 
こんなとき、一人ではなく誰かいるだけで冷静に考えることができる。
 
私が住む物件はシェアハウスというよりシェアアパートに近く、社員寮のようにそれぞれが個室を持ち、50人ほどが住んでいる。
共用のキッチン、トイレ、シャワーの全てで水が出ないことを確認し、何かあった時のためにかけられるコールセンターに電話した。
 
物件名と自分の名前を伝え、本題に入る。
 
 
「いま断水してるんですけど、今日って建物内で断水の予定ってありましたでしょうか?」
 
「だ、断水ですか?」
 
 
おそらく、対応してくれた男性も初めてのケースだったのだろう。諸々確認して、また折り返し連絡する、ということで通話を終えた。
 
そうこう話しているとコンビニに出た友人が帰ってきた。近所のコンビニは何の問題もなく、どうやらこの物件内だけの断水のようだ。
 
さて、どうしようか。
水が出ないのは困るのだが、キッチンで料理をしている最中だった。これ以上の洗い物は出したくないが、作りかけの野菜炒めは炒め切りたいし、解凍してしまったお肉も焼きたい。
 
コールセンターに電話はした。やることはやったのだから後は待つしかない。
水は出ないが電気は通っているため、マイペースにも調理を再開した。
 
その間にも周りの会話は続く。
 
「トイレは災害用のトイレが置いてあるから大丈夫やで」
「でも明日の朝の支度ができんよなー」
「近くの銭湯って何時までやってたっけ?」
 
今までの人生で災害に見舞われた経験がなく、水のありがたさを再確認した。
 
会話を聞きつつ調理をしつつ、自分はどうしようかと考えた。
 
「私、彼氏の家に行くわ」
 
あ、そうか。私は実家に帰れる。
1時間半くらいかかるが、仕事はリモートでもできるし翌日の仕事も調整できる。
よし、実家に帰ろう。
 
コールセンターに電話をしておよそ20分後、実家に帰る決意をし、断水をして1時間半後には家を出発した。
 
家を出るまでにコールセンターから現状報告の電話もあった。業者の手配を依頼しているところだがなかなかできない、という内容だった。
そりゃ21時を過ぎていればなかなか繋がらないだろう。
少し震えた声で現状報告をしてくれる担当者に同情した。
きっと他の住民からも電話があり、話せることがあまりないため対応にも困っているのだろう。
 
ある種の非常事態なので、こういうときは住民の性格が出ておもしろい。
私が電話した10分後に重ねてコールセンターに電話をかけてくれた人がいたのだが、彼は周りのことも考えてホテル代を立て替えてもらえないかなど、具体的な要望を伝えた。
 
たしかに、実家や友人宅に避難できる人はいいが、それ以外の人はどうするのだろうと思っていたところだ。
 
通話後、「さすが」「ありがとう」という賞賛の声が上がる。
 
「だって、水道管の整備不良やったら管理会社の責任やろ。家賃払ってるのにサービス受けられへんのはおかしいし」
 
なるほど、たしかに。
頭の回転が早くて一緒に住んでいて心強い限りだ。
 
 
 
さて、1週間は離れることを覚悟して物件内で仲良くしている友人らに別れを告げたものの、結論として翌日の午前中に断水は解消された。
近隣宅で行われた配管工事の影響ではないか、ということらしい。
 
シェアハウスの運営会社には結果的に何の非もなかった。
ただ、一次対応として宿泊費や温浴施設利用代、在宅勤務ができなくなったことにともなうカフェ利用代などを常識の範囲内で負担する、と案内が出ていた。
その他雑費や交通費については事情を鑑みて個別判断する、とも、復旧した当日に追加で案内された。
 
 
人事での経験上、個別判断されるときは「お願いの仕方」によって費用負担してもらえるか否かが決まる。判断するのは人間のため、「払ってあげたい」と思わせることが大事だ。
 
4月からライティングゼミを受講し、日本語の文章力を上げている。さらに、人事として約4年半、色々な人から色々な問い合わせを受けて対応してきた。
 
これらを活かして、実家までの往復交通費を渾身の文章で請求してみた。
交通費は領収書が出ないため証明するのが難しく、払ってもらえるか厳しいラインだ。さらに、他の住民との兼ね合いもあるため望み薄でもある。それでも書いてみた。
 
あなたがもし決定権のある担当者だったら、私に実家までの往復交通費を払いたい、と思っていただけるだろうか。
 
 
***
(一部、名前等を変更しております)
 
ご担当者様
 
いつもお世話になっております。
(物件名)305号室の古川と申します。
 
この度は迅速な対応をしていただき、ありがとうございました。
断水のため、水道管の破裂など起こっていた場合はなかなか元の生活に戻れないと思っておりましたので、
想像以上に早く帰れて安心しております。
 
 
さて、長期化を見越して行動したため、断水して約1時間半後には実家に向けて出発しておりました。
21:47発の電車に乗りましたので、宿泊費立替等の案内前でした。
 
そのため、もし可能であれば、実家までの交通費をご負担いただけないかと思い、ご連絡した次第です。
 
下記3点の添付資料をご確認の上、ご検討いただけますと幸いです。
 
【資料】
◼︎乗車した交通ルートのスクリーンショット
◼︎出金伝票
◼︎実家の住所地が載っている運転免許証(表)
 
 
さいごに、コールセンターで対応してくださったマツダ様をはじめ、夜中にも関わらず丁寧にご対応いただき、ありがとうございました。
 
今後ともよろしくお願いいたします。
 
 
 
 
***
 
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2023-05-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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