たった3秒で手紙をタイムマシンにする魔法。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:横山玖未子(ライティング・ゼミ6月コース)
わたしは、手紙が好きだ。
誕生日やちょっとしたお礼の品など、プレゼントを贈る際はいつもお気に入りのメッセージカードや便箋に、その人との思い出や感謝を綴っていた。
そしていつもだいたい、勢いで書く。
事前に下書きなんてしないし、構成を考えてから書くなんて、仕事の執筆だけで十分だ。ノリと勢い、ときどき出てくる誤字はご愛嬌。
書いている途中に「あれも書きたい、これも伝えよう……」と思いながら、徒然なるままに筆を進めていると、気づけば便箋3枚の長尺な手紙が完成することもしばしばあった。
読み返してみると、構成はぐちゃぐちゃだし、似たようなことを繰り返し言っている場合も多い。ただ感情の赴くままに書いているので、ふだんは言えない素直な気持ちや、まっすぐな思いは、きっと伝わっているはずだ。(と、信じたい……)
そんな手紙好きなわたしには、毎回必ずしている小さなこだわりがある。
なんとそのこだわりを施した手紙は、受け取った直後だけでなく、じわじわと時間をかけて、お楽しみが10倍20倍にも膨れ上がると自負している。
もったいぶった説明をした、そのこだわりとは、手紙の文末に「書いた日の西暦と日付を書き記す」ことだけ。
わたしは幼い頃から、手紙には書いた日付も入れるようにと、親に言われてきたので、当たり前にしてきたことだけど、大人になった今、周りを見てみると意外と日付を省略している人は多い気がする。
「書いた日の西暦と日付を書き記すこと」の良さは、すぐにはわからない。
きっと年代モノのワインのように、数年後、数十年後にじっくりと効いてくるのである。
わたしがその良さに気づいたのは、中学生のとき、親戚の大叔父の家に行ったことがきっかけだった。
大叔父夫妻には子供がおらず、わたしのことを孫のように可愛がってくれた。毎年誕生日やクリスマスにはプレゼントを贈ってくれていたので、そのたびに、お礼のお手紙を書きながら、学校での出来事や、嬉しかったことを伝えていたのだ。
そしてある日、大叔父の家に行くと、小学生時代から今に至るまで、私が送っていた手紙が綺麗に整理整頓されたファイルを見せてくれた。
「懐かしいなあ……!」と思いながら手に取った手紙の中で、ふと目に止まったのが、文末に記された「2002年11月16日」の文字。
わたしは1994年生まれなので、2002年のときは、小学2年生。
つまり7歳のときの手紙ということがわかる。
その次の手紙は、「2005年○月○日」「2009年○月○日」……。
西暦と日付があるだけで、一瞬で当時にタイムスリップした感覚になった。同時に、そのときの思い出もセットで思い出すのがなんともこそばゆく、心地よかった。
人生にはだいたい、覚えやすい節目の年があって、わたしは2001年の小学校入学、2013年の大学入学、2017年の新社会人あたりは記憶に強く残っている。
手紙の日付をその人生の節目の年度から足したり引いたりしてみると、あら不思議。なんてことのない1通の手紙が、一気にタイムマシンになってしまうのだ。
人は歳をとり、大人になるとプライベートだけでなく仕事や家族など、考えることは多くなる。そして忙しさに比例して、過去を振り返り、思い出にふける瞬間はどんどん少なくなっていくように感じている。
だからこそ、大掃除のときにひっくり返した棚の中で見つけた手紙や、可愛い箱に宝物のように保管していた友達からの手紙とか、昔のかばんに入れっぱなしになっていたメッセージカードとか……。
ふとした時に読み直す手紙に、日付をそっと記すことで、受け取った相手はきっと、手紙以上の思い出をその瞬間に思い返せるのではないかと思う。
このこだわりの良いところは、誰にでもできて、お金もかけずにたった1通の手紙を変身させられること。
大切なパートナーや家族、友人など、誰かに想いを伝えるときは、ぜひ手紙の文末に、一文日付をつけ足してみてほしい。
3秒でできる、手紙をタイムマシンにする魔法。
数年後、十数年後に効果があったかは、渡した相手にしかわからないけれど、少しでも思い出に浸り、ほっと心が温まる瞬間が生まれていれば、何よりうれしく思う。
ぜひ皆さん、おためしあれ。
***
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