有給休暇を当たり前に使うゆとり世代vs有給休暇を使わないことを自慢するおっさん連中
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:都宮将太(ライティング・ゼミ4月コース)
「〇〇さん、今ガラケー使ってます? アイフォン使ってますよね? 使っている機械は最新で、仕事のやり方だけ昔の方法って矛盾してませんか?」
これは、ある日の営業会議で新人営業マンが30歳以上年の離れた上司に言った言葉だ。
その場に私を含め7人いたが、全員が凍り付いた。
まるでYouTubeを見ているとき、Wi-Fiが切断され、動画が急に止まったように皆動けなかった。
会議の内容は、今後の営業のやり方についてだった。上司は今まで通りのやり方を提案し、それが採用されるものと思っていた。
しかし、そこに嚙みついたのが新人営業マンだった。
今までのやり方に不満を感じ、新しいやり方を取り入れようと提案したのだ。
約2秒間の沈黙を破ったのは噛みつかれた上司だった。
明らかに怒りの表情だったが、今の時代、むやみに怒れないのか、「まあ、色んな考えがあるけんね!」と、会議は見せかだけ和やかな雰囲気で終了した。
会議が終わり、新人営業マンが席を外すと、噛みつかれた上司が怒り出した。
「ちょっと来い!」
「はい」
呼ばれたのは噛みつかれた上司の部下。店内では№2だ。
二人で会議室に入り、内緒で話しをしたかったのだろうが、会話は丸聞こえだった。その場にいた者、皆が耳をすましていた。
『壁に耳あり』とはよく言ったもので、壁だけではなく、いたるところに耳がある感じだった。
「なんやあの態度!」
「申し訳ございません」
「俺も本部から言われとんぞ!」
どうやら、本部で既に決定した今後の営業方法。それを形だけの会議で皆に共有し、皆が賛成したと本部に報告する予定だったらしい。
その策略を覆したのが新人営業マンだった。
「大体、あいつは有給も取りすぎやろうが! 俺が若いころ葬式でも休めんかったぞ!」
俺は若いころは……。よく耳にする言葉だが、実際に口にしている者を見たのは初めてだ。しかも、会議とはまるで関係が無い。
上司の怒鳴り声に聞き耳を立てていた我々は沈黙し、笑いを堪える者もいた。
「しっかり言っとけ!」
最後は上司が怒鳴って、二人の話し合いは終わった。
その日の夕方、新人営業マンの意見で中断した会議が再開された。
再び、上司が今後の営業方法について意見を述べる。形だけ、「皆、どう思う?」と尋ねる。
上司も自分の意見が採用されるのが当然のように尋ねたが、ここで面白い事象が起きた。
いつも上司にペコペコしている上司の部下は、上司の意見へ右に倣えで賛成したが、新人営業マンを味方する声もあり、意見は見事に半分に割れた。
(ちなみに私は新人営業マンに味方した)
「確かに今までのやり方は効率が悪い。新しい方法を取り入れるのも面白いかもしれません」
新人営業マンに味方した中堅社員の言葉に、上司に怒りの感情が込み上げる。
中堅社員もその雰囲気は察したのか、それ以上の言葉は口にしなかった。
しかし、良い意味で空気を読めない者が一名いた。新人営業マンだ。
「本当にそうです! 営業職なので結果を重視する必要があると思うんですけど、今のやり方では、そのための時間を確保するのは難しいです」
上司の部下で№2の者は顔が青ざめている。上司の機嫌を伺っているのが分かる。
ここまでくると、私を含め、面白半分でその場を眺めている者いるのが分かる。
一番たちが悪いのは、新人営業マンの言っている意見が正論だということだ。間違っていれば否定できるのだが正論なため、反論ができないのだ。
「何か意見があるなら言ってみろ」
上司が新人に言う。
既に言ってるよ……。その場にいた者全員から、漫画のような吹き出しが見えた気がした。
「はい!」
そういうと、新人営業マンはスラスラと自分の意見を喋り始めた。これがまた正論だ。
「そんなのできるか! もう既に本部でも決まった意見たい!」
上司が頭ごなしに新人の意見を否定した。さすがにこれ以上、新人も意見を言うことは無かった。
ここで会議が終わった……。かと、誰もがそう思ったが、上司もスイッチが入ったようだ。
「だいだいお前は有給使いすぎたい。もう少し考えろ!」
横で№2が慌てて言葉を静止させようとする。今の時代、NGワードだ。
しかし、一度入った上司のスイッチは切れなかった。
「俺が若いころは、葬式でも休めんかったし、葬式に参加した証明を上司に提出したぞ!」
全く会議とは関係のない言葉を最後に、営業会議は終了した。
会議の結果、新人の意見は通らなかったが、勝者は明らかに新人営業マンだろう。
試合に負けて勝負に勝った。という言葉があるが、まさにそれだ!
新人営業マンは、会議という試合には負けたが、上司との勝負は完全勝利だ。
会議が終わり、帰宅時間になる寸前、その新人は有給休暇申請書を上司に提出した。お互い意地になっているのが分かる。これにはその場にいた者が皆、清々しい気分になっただろう。笑いを堪え、面白がって眺めている者もいた。
その日、私と新人は夜中まで飲み歩き、二人で勝利の祝杯をあげた。
ちなみにその上司は一年後、新入職員へのセクハラ発言で飛ばせることになるのだが、今はまだ、知るはずもない未来の話し……。
***
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