育児とは、革命である
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:岩田 真治(ライティング・ゼミ4月コース)
「自分たちに、子育てはできるだろうか……」と思い、私は妻と目を合わせた。
先週末、私たち夫婦は、私の兄とランチを食べた。兄とは、3年8ヶ月ぶりの再会だ。最後に会ったのは、姪っ子、つまり兄の娘が産まれた頃だった。兄と私は、同じ東京都内に住んでいる。しかし、コロナが流行してから、全く会っていなかった。
今回の再会は、妻が妊娠13週目であり、半年後に出産することを、報告するためでもあった。当然、兄は自分ごとのように喜んでくれた。そして、4年間の育児の体験を語ってくれた。その話を聞いて、私は子育てというものに、不安を覚えた。と同時に、自分に革命を起こさなくてはならない、と思い始めたのであった。
兄によると、乳児期は昼夜関係なく、3時間ごとにミルクをあげていた。深夜から明け方にかけてミルクを与えるのは、兄の役割であった。その間、義姉は別室で寝て、ひたすら体力回復に努めていた。
ミルクを与えることで、親の生活リズムが崩れることは、他の家庭でも耳にする話である。その次に、姪っ子の幼児期の話を聞いて、私は少し不安になった。
姪っ子は、自我が芽生える3歳くらいから、兄と義姉の言うことを聞かなくなった。朝起きて、着替えるのを嫌がり、パジャマ姿の姪っ子を、兄は保育園へ送って行った。また、別の日に、姪っ子を自転車に乗せて、義姉が保育園まで行ったものの、泣き止まなかったため、保育園には入らず、そのまま家へ連れて帰ってきた。
これくらいのワガママは、3歳児だったら当たり前なのかもしれない。たくさんの親が、このような修羅場をくぐり抜けてきたのであろう。しかし、次のエピソードを体験した親は、少ないはずだ。私は、その少ない親の一人になってしまう。
それは、体力面の衰えである。「子育ては、筋トレに繋がる!」という話を、よく聞く。子どもを抱っこする動作や、ベビーカーを折りたたんで、持ち運びする動作というのが、親自身のトレーニングになるという体験談だ。
しかし、それは20代、30代で親になった人たちの話である。45歳で親になった兄には、「子育ては筋トレである」の理論が全く当てはまらず、いくら抱っこしても、いくらベビーカーを持ち運んでも、筋肉は付かず、疲労感だけが残ったそうだ。
私は47歳で親になる。兄の話を聞いた私は「子育てで体力をつける余裕はない。だったら、子どもが産まれるまでの半年間に、肉体改造をしよう!」と考え方を切り替えた。そして、24時間オープンしているスポーツクラブへ週三回通うことを決め、不安を少し解消させた。
続いて、兄の仕事の話になった。兄は在宅ワークとはいえ、反抗期の3歳児を相手にしなければならない。保育園に送り届けるだけで、何分かかるのだろうか? 保育園へ向かう途中、姪っ子からどんな寄り道を要求されるのだろうか? 不確定な要素が多すぎて、何時から仕事を開始できるのか、兄自身にも予測できない。その解決策として、兄は、9時開始のWeb会議には欠席し、10時開始のものから参加することにしていた。
こんな自分勝手な行動を取っていて、兄は上司や同僚から嫌われないのだろうか? そんな心配は、無用だった。兄は、土曜と日曜の二日間で、翌週に必要な業務を全て終わらせていた。週末に仕事が進まない時は、平日朝5時に起きて、仕事を進めていた。個人に割り振られた仕事を早く終えるために、ワードやエクセルの事務処理能力を上げていた。更に、人工知能などの最新技術を駆使して、業務の自動化も試みていた。兄のこのような取り組みを、上司や同僚も認めていたのであろう。兄は、10時から業務を開始することを許されていた。
兄の業務改善の話を聞いて、私はまず「職場での自分のキャラを変えよう!」と考えた。私は、一人で仕事をするのが好きである。そのため、上司や同僚とは一定の距離を保っていた。しかし、育児の為に、その近寄り難い性格から、親しみやすい性格に変えることにした。そして、仕事より育児を優先しても、多少のことは許される社員になることに決めた。
さっそく、月曜から、上司への報・連・相をマメにした。また、不安や悩みを抱えている同僚の話をゆっくり聞いてあげた。この活動を半年間続ければ、育児休暇も取りやすくなるはずだ。更に育休から復帰した後も、子どもを言い訳にすれば、多少のワガママも受け入れてもらえるに違いない。
そして、私が一番改善しなければならないのは、事務処理能力である。営業職であることを言い訳にして、ワードやエクセルの習得を、ずっと疎かにしていた。上司や同僚と比べて、文書や資料を作成することに、時間がかかってしまう。しかも、出来映えが悪い。このOfficeソフトの処理能力については、マニュアル本・動画・生成AIなどの力を借りて、半年、1年かけて伸ばしていくことにした。
肉体改造、キャラ変、ビジネススキルアップ、この3つを同時に行うのは、改革や改善という言葉ですら、生温く思えてしまう。もはや、革命という言葉しか当てはまらない。半年後に産まれてくる我が子のために、私は自分自身に対して、革命を起こすのである。
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