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整形は心もアップデートしてくれる


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記事:八幡未来(ライティング・ゼミ6月コース)
 
 
私は、整形をしたことがある。
 
整形をして感じたことは、整形は心のアップデートである、ということだ。

 
正確にいうと、歯列矯正の延長で、美容整形とは少し異なる。
具体的にはクッキングパパのように受け口だった歯並びを、口腔外科の手術で「骨切り」をし、下あごの骨を短縮した。
 
美容整形と異なるのは、保険が適用される所である。美しくなる為ではなく、機能面での問題を解消するためにメスを入れる。
 
私自身が受け口と気づいたのは、小学校で受けた歯科検診の時だ。
毎年、歯科検診の結果表には「反対咬合」「歯科に相談してください」と書かれる。しかし当時の医師には、子供時代におこなっても、元に戻ってしまう恐れがあると伝えられ、私もあまり困っていないことから、そのままで過ごしていた。
 
高校生の思春期になると、いじられキャラとなり、自らのコンプレックスを笑いにして過ごすようになった。
しかし、実際の自分の容姿を好きになることはなかった。
それどころか、年々気にするようになり、母親に泣きついたこともあった。
 
娘が容姿のことで泣くほど悩んでいると知った母は、矯正のためにお金を出してくれる、と言ってくれた。
家から30分程の矯正歯科に連れてってもらい、検査をしてもらった。決して安くはなかったが、医師に「保険適用に認定されると返ってくるから」と説明され、母のお金で受けさせてもらった。
 
だが、面倒くさがりでズボラな性格の私に、歯列矯正はハードルが高かった。
月に一度、器具のメンテナンスに通院しなくてはいけない。毎日3回、丁寧な歯磨きをしなくてはいけない。
矯正をスタートする地点まで行動することができず、母への申し訳ない気持ちだけ心に残っていた。
 
それから数年たち、社会人になった。
友人たちの結婚式に呼ばれ、美しい姿を見る機会が増えた。自分もいつかその立場になるのが楽しみな反面、コンプレックスの強いこの顔では、自信がない……。いつか綺麗になって、自信を持って結婚式をあげたい、と強く感じるようになっていった。
 
今なら、できるかもしれない。
自分のお金で、自分の力で受け口を直したい。
 
地元から離れ、東京で一人暮らししていた私は、誰にも言うことなく、矯正歯科を受診した。
手術が必要なレベルの受け口であることは把握していたので、実例のあるところを調べ、家から1時間ほどかけて通院を始めた。
大学病院の口腔外科に紹介状を書いてもらい、診断書を書いてもらったら、保険が適用される。術前矯正を数年おこない、入院して手術、術後矯正で調整。3年以上かかる計画。説明を一通り聞き、想像していたよりもおおごとだ、と感じたが、今回はちゃんとやり遂げられる自信がある。
 
それから矯正がスタートした。それまで歯ブラシ1本のみだった歯磨きは、細い歯ブラシや糸ようじ、歯間ブラシのフル装備で、15分ほどかけて行うようになった。
 
術前矯正も落ち着き、口腔外科での手術へ移る。
入院をともなう手術は、想像していたよりも大変なことだった。
 
手術室に入って施術し、麻酔から覚めるまで丸一日。
食事は管を胃まで通し、流動食を流していくことから始まるし、数日寝ているだけで体力も筋力も落ちる。
鎮痛剤の入った点滴は、痛みを0にするわけではなく、和らげてくれる程度。頭と関節にずっと痛みを感じていた。
ダウンタイムでパンパンに膨れ上がった顔面は、一生このままじゃないのかと考えさせるほど、気持ちも落ち込ませる。
 
 
大変だった入院を終え、1ヶ月ほどで腫れも引いた。
美人になったとは言えないが、大きなコンプレックスが解消され、とっても気に入る顔になれたと思っている。
 
全てを終えわかったことは、整形は容姿ではなく、心の持ち方を変えてくれるということだ。
 
 
仲が良かった友人たちには整形することを伝えてあったが、特にSNSなどで大きく発信することはなかった。
だが、友人の結婚式などで顔を合わせる知り合いから何か言われることはなかった。
こんなに大きな変化なのに、数年ぶりに会う友人からは、私の顔はどうだっていいのだ。他人の評価は大したことじゃない、と思わせてくれた。
 
自分の中では、痛く大変な思いをした経験が、さらに自分を好きにさせてくれた。
保険適用とはいえ、安くはない金額もかけている。自分で稼ぎ、用意したお金だ。
顔の変化だけではなく、がんばった自分自身に自信がつき、笑顔や表情も変わったように感じる。
 
もし整形を悩んでいる人がいたら、是非やろう、と勧めたい。
整形は、見た目だけでなく、それまでの経験や周りの対応も含めて、自分をアップデートしてくれる。
 
 
 
 
***
 
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2023-08-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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