雨の朝の絶望をエクレアで吹っ飛ばす
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記事:きむらあや(ライティング・ゼミ2月コース)
うっわ~、雨けっこう降ってる。絶望。
平日の雨の朝には、憂鬱を通り越して、絶望しかない。月曜ともなればなおさらだ。
雨が降らなければ水不足になって、ひいては地球全体が困るということは、理性では理解している。
しかし、日常を営む一個人としては、どうしても「うわあ」と思ってしまう。
毎朝、仕事の前に子どもを保育園に送っていかなければならない。
保育園用の着替えが入ったリュックに加えて、今日のように月曜日は、週末洗った昼寝用布団のシーツセットと上履きを持っていく必要がある。
さらに、雨が降ると、自分のレインポンチョとレインブーツと傘、子どものレインコートと長靴と傘を用意しなければならない。
多い多い! 装備が多いよ! ただでさえ何か忘れて家を出ることがしょっちゅうあるのに、もう軽くパニックである。
何とか家を出ても、雨の洗礼は終わらない。
一度、夫が雨の日に転んだことがあって、わが家では雨の日の自転車は避けているので、ベビーカーに乗せ、レインカバーをかけて登園する。もう4歳だけど、子どもの足でも徒歩圏内の保育園だけど、雨だから仕方ない。
ベビーカーを押して、徒歩10分弱の道のり。雨が強ければ、レインポンチョとレインブーツを身に着けていても足元はビショビショだ。泣きたい。
レインカバーの中で塗れずに快適に運ばれたわが子は、到着後ベビーカーから傘をさしてもらう。VIPか?
母によるVIP待遇にもかかわらず、傘をさして入口に行く一瞬の間に、「髪が濡れた」だの「顔に水がかかった」だのといってキゲンを損ねてぐずる。わがままセレブか?
やっとのことで登園し「おしたく」を終え、また雨の中自宅に戻ってベビーカーを置いて、そこからまた駅まで走って通勤する。
電車に乗り込むと、足元はビショビショ、すり減った神経。心身のHPはマイナス50%から一日が始まる感覚だ。これではまともに仕事ができない。
出社までになんとか、HPを100%とは言わないまでも、マイナスからプラスにはしないと。
雨の日は、今の私にとっては絶望のもとでしかないけれど、とらえ方を変えたら、雨の日も楽しめるようになるかもしれない、と思った。
ネガティブに考えられるものをポジティブに反転したり、考え方を広げたりする、いわゆる「リフレーミング」というやつだ。よし、考えてみよう。
……。
…………。
……どうしよう、ポジティブ要素がひとつも出てこない!
すでに雨で心身消耗している状態で考えても、全然頭が働かない。
世間のみなさんは、雨の日に対するネガティブな気持ちを持ったとき、どうリフレーミングしているんだろう。
電車に揺られながら、(旧)Twitter検索窓に「雨 リフレーミング」と入力してみる。
「雨の音を聞くと癒される」
「雨の日に傘をさして散歩すると、いつもと違って楽しい」
めっちゃわかる。仕事がなくて、ゆっくり起きた日とかだったら私もそう思う。
でも平日の朝の雨ですさんだ心身をポジティブに捉えなおすには至らない。
リフレーミング作戦、失敗。
ため息をつきつつ、そのまま(旧)Twitterを流し見していたら、「雨の日に保育園送迎したら◎◎ポイントとかつかないかな?」と、ついさっき投稿されたポストが目に入る。
それいい、めっちゃいいな。誰か私にご褒美ポイントくれ!
と叶うはずもない妄想している間に職場の最寄り駅についてしまった。
もうこうなったら、力づくで解決するしかない。
通り道のコンビニで、いつものカフェラテと、いつも「おいしそうだな」と思っても買わない、クリームとチョコたっぷりのエクレアを購入する。
出社したら、まだ人がまばらなフロアの端っこのデスクで、こっそり、素早く食べる。
(お~いし~い! 最高!!)
甘いものを食べると、セロトニンが分泌される。セロトニンはストレスを緩和するらしい。
力づくの解決法とは、朝から甘いものをガツンと摂取することでセロトニンをドーピングすることである。
プラセボ効果かもしれないが、不思議と気持ちがだいぶ落ち着くので、業務を開始する。
仕事を始めてしまえば、外の雨も、朝の絶望も、ぜんぶ忘れて集中できるから不思議だ。
帰るころには雨も落ち着いていて、朝よりは穏やかに迎えに行ける。
家に帰れば、もう雨に濡れる心配はない。
喉元過ぎれば熱さを忘れる。
こうやって、どうにかこうにか乗り切ることが、「日常」「人生」って感じだ。
朝はあんなに絶望していたのに、終わってしまえばポジティブではないかもしれないが、悪くはなかったな、とすら思えてくる。
ところで、たった今、来週の月曜日にも雨予報が出ているのを発見してしまった……。
次の雨の朝に備えて、食べたい甘いもののことでも考えながら、今日はゆっくり湯船に浸かろうと思う。
***
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