メディアグランプリ

パリジャンの行動を観察して、光を追い求める虫のようだと思えてきた訳


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:片山勢津子(ライティング・ゼミ9月コース)

 
 

1年間だけですが、ある研究所の在外研究員として、パリのリュクサンブール公園の近くに住んでいたことがあります。
 
渡仏したのは7年前の4月1日。気持ちが良いので、毎日のように公園を通って出かけていました。日本に比べて少し早く季節が巡っているように感じました。というのは、カラッとした空気に、強い日差しがキラキラと差し込んでいたからです。
いつもと同じように、私は木陰を選んで歩いていました。でも、数日して気付いたのです。木陰を歩いているのは私だけで、他の人は皆、日向を選んで歩いているのです。
 
研究所の初会議の前日、新参者の私を気遣って、副所長がカルチェラタンの小さなカフェに連れて行ってくれました。簡単な打ち合わせのためでした。
カフェの前で、「中と外とどちらが良い?」と聞かれたので、排気ガスを避けたくて「中の方が良い」と即答して、店内に入りました。ところがです。「ここは音楽がうるさいなあ」と行って、彼は資料を持って、外のテラス席に移動しました。
 
パリのカフェといえば、テラスで格好よくくつろぐ姿が思い浮かぶのではないでしょうか。「やはり、パリジャンはテラス席の方が好きなのだ」と納得しました。でも、テラス席で打ち合わせをしてみると、直射日光がさしたり陰ったりして資料が見にくく、風で紙が飛びそうになります。それに、店内のBGMよりも外の騒音の方がよほどうるさいように、私には思えました。どうしてこうもテラスが好きなのか、不思議です。緯度が高い国なので、ビタミン不足にならないように、身体が太陽光を欲しているのでしょうか。
 
そんなことがあったので、フランス人と太陽との関係を探るべく、公園を通りながらの行動観察は、続きました。
日が高い時間になると、芝生でくつろぐ人が増えます。家族連れや友達など、多くの人が芝生に座って語り合います。そんな時も、日陰よりも日向に人が集まりまるようです。一方、通路に配置しているベンチ席の方は、太陽光とはあまり関係なく、景色の良い位置に人が集まります。
暑い日が続くようになると、人々は木陰に座るようになります。それでも日向もなかなかの人気で、ノースリーブの女性たちが、芝生に寝そべって日光浴する姿が見られます。
真夏の7月末頃からは、ヴァカンスシーズンなので人は減ります。公園に集まるのは観光客なので、ちょっと様子が変わります。絵になるところで写真を撮って、空いているベンチに座って休憩という感じで、観光客は長居はしません。
それが9月になると、パリはすっかり涼しくなり、ストールを首に巻いたパリジャンたちが戻り、日向ぼっこに集まります。
気温が下がるにつれて、だんだん上着が厚手になり、ベンチで本を読みながらくつろぐ姿が見られます。
寒い日が続くとベンチに座る人も減ります。ところが、摂氏5℃あるかどうかの日でも、太陽が雲間からちょっとでも顔を覗かせると、どこからともなく人が集まってくるのです。よく見ると皆、太陽の方を向いて、ベンチに腰掛けています。これには驚きました。まるで太陽光を求める「走光性」の虫のようです。
 
では、カフェやレストランのような、お店ではどうなのでしょう。パリにある約15,000以上の飲食店のうち、テラス席を持つのはおよそ6,000店舗だと言われています。
 
お店での定点観測をしていませんが、カフェやビストロでは、テラス席が人気です。フランス人とカフェに行くと、夜でもテラス席を選びます。私はお店の中も見てみたいのですが、素敵なインテリアよりも道を眺めるテラス席が好きというのは、不思議です。それで、トイレを利用する時に、店内を観察してみると、会議をしている姿をよく見かけました。つまり、集中したい時は内部で、くつろぐのは外というように、目的に応じて場所を変えているようです。
 
私がパリに住んでいた頃は、冬でもテラス席が人気でした。というのは、今は禁止されているストーブやヒーターがテラス席にあったからですが、地球温暖化に配慮して禁止されました。だから、今は寒いのでコートを着て、テラス席に座るようです。特にクリスマスシーズンなど、ネオンで飾られた通りに面して、コートを着たまま座る人の姿は、写真でも目にします。
 
今回、この文章に添付するために、パリの友達に写真を頼みました。すると、雨にもかかわらず、テラス席に人が沢山いるではありませんか。
 
パリジャンの行動を観察して、そして写真で検証して、私は確信しました。彼らは光を求める『走光性の虫』のような存在なのです。
 
それで、納得したことがあります。テラス席が好きなので、道行く人から結果的に見られます。日常的に、彼らは見られることに慣れ、結果的に格好よくカフェでくつろぐという、パリジャン特有の景色が誕生するというわけです。私の仮説は、いかがでしょうか。そんな目で、カフェの写真を見ると、確かに役者のようにポーズをとっているように見えませんか。
 
だから、あなたもパリジャンのように見られたいなら、外に出て、人から見られることを意識して行動してみることをお勧めします。それが、彼らの秘密です。時には、ベランダにテーブルと椅子を出して、くつろいでみてはいかがでしょうか。太陽光や雨を気にしてはダメです。眩しければサングラスをかけて、光を浴び、雨ならコートを着て、堂々と自分を見せつけてください。さあ、そうすればあなたもパリジャンの仲間入りです。
 
 
 
 
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2024-10-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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